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魔法少女リリカルなのは『絶対零度の魔導師』

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アージェント 〜時の凍りし世界〜
第一章 《凍てつく白銀の大地》
  不穏な会敵

見渡す限り一面の銀世界。その只中にポツンと存在する高台の岩場。そこに、二人の人影があった。

「ミミ、どうだ?」

「ん〜〜〜あ、出てくるっぽいよ?」

片方は現在、第9管理世界《アージェント》にて暗躍とは到底言い難い大騒動を引き起こしている連続ロストロギア強奪犯、白峰暁人。軍服風のバリアジャケットを展開し、その右腕には明らかに量産型とは違う存在感を放つ杖型デバイスが握られている。

もう片方は銀髪と白い肌を持つ赤い瞳の少女。モコモコの服も含めて全身真っ白なその少女の頭には、二本の長い耳ーーーー所謂ウサミミが生えている。

彼女は暁人の使い魔であるミミ。白いウサギがベースになっており、高い聴覚等はそのまま備えている。人格は若干、いや、かなり子供っぽいが氷雪の遊び相手にもなっており、また優秀であるために、暁人も様々な場面で重宝している存在である。

「御主人様はどーするの?いつもみたいに突っ込む?」

「………いや、今回それをやったら一堪りも無いからな。」

管理局にその名の轟くエース達が三人もいるのだ。いくら暁人に地の利があろうが、まともにぶつかっては勝ち目は薄い。……それでも無いとはならないのは偏に暁人の実力の高さ故である。

「あ、出てきたよ?」

望遠魔法を通してスノウスフィアが封印されている遺跡へと通じる洞窟に目を向ける。そこからは今まさに発掘されたばかりのスノウスフィアを護衛する、管理局の一団が出てくる所だった。










30分前 第9管理世界《アージェント》 【銀雪の神殿】内

「これが皆さんに護衛して頂くロストロギア、《スノウスフィア》です。」

柔和そうな印象を受ける学者風の痩せた男が、発掘されたばかりのスノウスフィアを管理局の三人に紹介していた。

「うわぁ……綺麗だね?」

「うん……雪の結晶みたい。」

「これが兵器やなんて……信じられんなぁ……。」

ケースに収まったスノウスフィアは銀の燐光を終始放出しており、幻想的な美しさを周囲に振り撒いていた。

「余り触れないようにお願いしますね?封印はしてありますが皆さんの魔力量ではもしも、という事もありますから。」

「あ、す、すみません。」

「そ、そうだね。気を付けなきゃ。」

男のセリフにかつて封印した筈のロストロギア《ジュエルシード》を戦闘中に暴発させた二人が若干の冷や汗をかく。

「なあなあドウェルさん。このスノウスフィアってどんな代物なん?」

「おや?概要は説明したと思ったのですが……」

はやての質問にドウェルと呼ばれた男は首を傾げる。

「効果じゃなくて成り立ちとか、そっちの方や。」

「ああ、成る程……。」

納得したように頷くドウェル。一呼吸置いて、スノウスフィアの成り立ちについてゆっくり語り始めた。

「今から1000年以上も昔の事です。このアージェントには《白皇》と呼ばれる一人の王が君臨していました。文献によれば、その頃既にアージェントでは次元航行理論が確立されており、かの古代ベルカの《聖王》や《覇王》とも交流があったと言われています。」

「そら……えらい凄い人やな。」

「ええ。その《白皇》がこのアージェントの危機に際して作り上げたのがスノウスフィアだと言われています。」

「危機?」

「ええ……当時のアージェントは発展しすぎた技術のせいで温暖化が進み、年平均気温は30℃を越えていたとされています。それを抑え、惑星規模で大気を冷却するためにスノウスフィアは作られました。白皇が自身のリンカーコアから作り出した物で、白皇以外には制御は出来ません。」

「惑星規模って……星ごと冷やしたってこと!?」

「その通りです、高町さん。そして、白皇の死後、スノウスフィアは十二個が相互にリンクし、互いを抑制しあう事で暴走を防ぎつつ、アージェントの気温を保ってきました。」

「……それがどうして、兵器になってしまったんですか?」

「一つで惑星の気候を左右できるスノウスフィアに、当時の権力者が目を付けたのです。奇しくも当時、強大だった白皇がいなくなり、アージェントの政治は揺れていました。それを一つに纏める為には、絶対の抑止力が必要だったのです。」

「分からない話やないけど……難しいところやなあ……」

「そして、スノウスフィアは兵器として使われる様になりました。しかし、分散したスノウスフィアは暴走した場合に止める術はなく……アージェントを氷河期に変え、スノウスフィアは十二個全てが眠りについたのです。」

「成る程なぁ……ドウェルさん、この話は割と有名なん?」

「まあ、アージェントの子供なら皆知っているでしょう。童話にもなっていますから。」

「そうですか……犯人は何でスノウスフィアの狙うのか、ますます分からなくなったわ……。」

「え?どうして?」

頭を抱えるはやてになのはが尋ねる。

「犯人はスノウスフィアが制御できへんって知ってるんやろ?そんなもん何でわざわざ欲しがるのか……。」

三人は気付いていない。暁人の目的がスノウスフィアの『使用』ではないことに。だから分からないのだ。










「ねぇ御主人様。いつ仕掛けるの?早くしないと艦に運び込まれるよ?」

「……いや、運び込まれてから、だ。」

主人の言葉にミミは自身の発達した聴覚を疑った。

「……わざわざ相手の陣地で戦うの?まともに戦っても勝てないって言ったの御主人様だよ?」

「今回はその『相手の陣地』を利用させてもらう。」

「…………どゆこと?」

ミミには理解できなかったが暁人にはしっかりとした作戦があった。管理局のエース達が彼の想像通りの性格であるならば、絶対に引っ掛かるであろう策が。

「……そろそろだな。後はいつも通りに。……分かってるとは思うが俺が万が一捕まるような事があれば……」

「……うん。その時には、氷雪ちゃんとスノウスフィアと一緒に逃げるよ。……何者からも守ってみせる。」

決意の籠った瞳で主人に答えるミミ。

「……まあ、あくまで備えだ。だが、頼んだ。」

そう言って暁人は雪の中一人、飛んだ。










「《ハボクック》!」

Aye sir.(了解。)《Snowstorm》〉

暁人のデバイス、ハボクックが吹雪の名を冠する砲撃魔法を放つ。狙い違わずLS級次元航行艦アースラの左舷艦尾に直撃、艦を揺らす。

「どうだ?」

No problem.(問題ありません。)Confirm formation of breakthrough.(突破口の形成を確認。)

「よし……侵入(はい)るぞ。索敵とナビゲートを。」

Aye sir.(了解。)

外装に開けた穴から内部に侵入。しかし、

「……これは。」

You have no luck.(運がありませんね。)

「貴様……何者だ!」

暁人が穴を開けたそこは、よりにもよって武装隊の詰め所だった。

20人近い魔導師達が一斉にデバイスを構え、戦闘態勢をとる。

「強奪犯か……こんなところに飛び込んでくるとは……正気か?」

「まさか、運が無いだけだ。」

尤も、と暁人は心の中で続ける。

(運がないのはどっちだか、な?)

「……ハボクック。」

〈《Diamond dust》〉










「なのは!私が前衛をやるからサポートして!」

「うん!……本当に来たね。」

なのはがポツリと呟く。それはフェイトも鈍感だった。来るとは聞いていた。予測も対策もしていた。それでも、まさか艦にまで攻撃はしてこないだろう。そんな思いがどこかにあったのだ。

「……考えるのは後にしよう。今は犯人を捕まえなきゃ。」

「フェイトちゃん……うん、そうだね。」

視線を交わす二人。この二人の間ではそれで十分であった。

The targeted magical reaction is approaching.(対象の魔力反応接近中。)20 seconds after touching.(接触まで後20秒。)

「ありがとう、レイジングハート。」

長年の相棒に礼を言いつつ、魔力弾を展開して侵入者に備えるなのは。数秒後、曲がり角の向こうから何かが飛びだす。

反射的に魔力弾を放ちそうになるが抑える。飛び出してきたのは、武装隊の誰かだった。

「ぐ……ヤロウ……本当に同じ人間か!?」

「あ、あの……大丈夫ですか?」

「っ!?……ああ、嬢ちゃん達か。大丈夫とは言えないな。」

どうにか立ち上がった男の姿は既にボロボロで、戦闘が継続できる状態ではなかった。

「……下がってください、後は私達が。」

「……そうは行くか、と言いたいんだがな。このザマじゃあ足手まといだな。気を付けろよ。奴、妙な防御魔法を使う。」

「……妙、ですか?」

「ああ、射砲撃が届かないんだ。仕組みは知らないけどな。」

気を付けてくれ。もう一度そう言った後、男は退がっていった。

男を見送り、再び侵入者に備えた二人は、あることに気付く。

「これは………!」

「キレイだけど……何だろう?」

アースラの近未来的な廊下を、銀色に煌めく何か小さな物が舞っている。一つ二つではない。無数に、それこそ廊下を埋め尽くすレベルで、だ。

「………あんたらか。管理局のトップエースってのは。」

鋭く、冷たい声。感情の起伏も、それどころか敵意すら感じ取れない程に無機質な視線。ひらひらと舞う銀色の中にその少年ーーーー白峰暁人は立っていた。

(高町なのはとフェイト・T・ハラオウン。八神はやては出さないか。まあ広域型って話だからな。)

冷徹に現況を分析する暁人。それとは対照的に、なのはとフェイトは目の前に現れた暁人の異質さに戸惑っていた。

(……何を考えてるんだろう?)

(……全く何も読めない。)

二人は管理局員として、前線で戦ってきた。

当然犯罪者と接触し、様々なコンタクトをとってきた。

敵意や殺意を向けられた事がある。好色な目で見られた事もある。理解できない狂気を見た事もある。だけど、

彼、暁人からは何も感じられない。何も分からない。彼が何を感じて、何を考えているのが。

「えっと……君が犯人で、いいんだよね?」

「それ以外の何に見える。」

平坦な声で切り捨てた暁人。正直に言えば直ぐにでも戦闘を始めたいのだが、彼はカウンタータイプである為に自分からは余り仕掛けたくはなかった。

「何でこんな事してるの?」

「……教えたら見逃してくれるか?」

暁人は知っている。彼女達の正義と自分の正義は決して相容れない事を。彼は妹を救う為なら世界すら敵に回せる。彼女達が管理局員である限り、その考えを認める事など出来ないのだ。

「せめて理由だけでも教えて?何かあるなら力に……」

「くどい。……ゴチャゴチャ言わずに、来いよ。」
 
 

 
後書き
何か中途半端だなぁ……

ミミの服装はモンハンのウルクスス装備(女性)をイメージしてください。 
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