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魔法少女リリカルなのは『絶対零度の魔導師』

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アージェント 〜時の凍りし世界〜
第一章 《凍てつく白銀の大地》
  白銀の魔導師

 
前書き
主人公が原作主人公たちをボコボコにします。苦手な方もいるかも。 

 
「ハボクック。」

〈《Frost Edge》〉

暁人の持つ杖の先に氷の刃が形成される。

「《コールドシューター》。」

「《アクセルシューター》!」

銀とピンクの魔力弾が同数ずつ、対峙する双方の周囲に展開される。

「「シュート!!」」

互いの中間点で魔力弾が炸裂、閃光が弾ける。その隙間を縫い、金色の雷光が疾る。

ギリィィン!!

漆黒の戦斧と白銀の槍が衝突する。

「……想定より速いな。」

予想より速いフェイトの動きにも暁人は動じない。何故なら

「まあ、どれだけ速かろうが意味はないけどな。」

彼は既に『速さを封じている』のだから。

「ッ!?」

フェイトは気付く。自身の愛機、バルディッシュの刃が氷の刃に食い込み、そのまま凍らされている。

「フェイトちゃん!?」

「『白き空、白き雪、白き風、白き霜、白き氷、全てを無垢なる真白に染めよ』《ホワイトアウト》」

〈《White Out》〉

一瞬にして視界が白に変わる。全てを白く染め上げる光の奔流がフェイトと、そして後ろにいたなのはをも巻き込む。

「っ、《プロテクション》!」

視界が晴れる。フェイトは最初、自身に()()()()()()()()()()に困惑した。しかし、次いで自身が致命的なダメージを負った事を悟った。

暁人が放ったのは広域魔法《白の世界(ホワイトアウト)》。広域魔法としては規格外に魔力消費量が少なく、また、発動までの時間も短い。それはこの魔法の効果に由来する。

このホワイトアウトは直接的な攻撃力を一切持たない。一般人が何の対策も無く直撃を受けても全くの無傷で済む。しかし、同時にこの魔法はある意味絶対的な攻撃力を持つ。

「この魔法、バリアジャケットじゃ防げないぞ。何せ、バリアジャケットの上から凍らせるんだからな。」

この魔法は、相手の体に、氷の層を付着させる。この氷の層は相手の動きを阻害し、相手の重量を増加させる。

そう、スピードタイプのフェイトにとって、まさに致命的な一撃となる。

さらに言えばこの魔法、効果範囲が狭く、密閉されている程効果が上昇する。アースラの廊下というこの状況下では、まさに最大の効果を発揮していた。

(ジャケットを換装すれば……)

「換装すれば抜けられる。正解だが悪手だ。」

「!?」

暁人はあくまで冷静に、平坦に、事実のみを告げる。

「バリアジャケットの換装に必要な時間はおよそ0,42秒。それだけあればこの距離なら三回は刺せる。いくら非殺傷設定だからってジャケット無しで貰えば持たないぞ。加えて言えば換装に成功してもお前のジャケットのフォームは二種類、もう一つは防御力は無に等しいソニックフォーム。速度があってもこの場所じゃ十全には活かせないから俺の追撃は躱わせない。最後に、お前を援護できる唯一の味方は、今お前を盾にしてるから撃てない。………結論、お前は詰みだ。」

フェイトの顔に驚愕が貼り付く。思考を的確に予測する暁人の推理力に、自分の情報がばれている事実に、何より、たった一合打ち合っただけでこの状況を作り出してみせた暁人の戦術能力に。

「と、いう訳だ。凍ってろ。」

〈《Ice Cage》・《Freezing Chain》〉

氷の鎖ががんじがらめにフェイトを拘束し、氷の檻がその上からフェイトを閉ざす。

「……さて、次だ。」

「フェイトちゃん……」

「心配しなくても、氷はいずれ溶ける。」

多重バインドは属性変換も絡めてあり、少なくともあと十分は外せないだろう。暁人はフェイトの存在を完全に意識から追い出し、なのはに向かい合う。

「お前はどうする?退くか否か、二秒で決めろ。」

「……ううん、渡せないよ。退くのはそっちの方。」

一触即発、そんな空気が漂っていた。










「……艦内カメラ映像回復!映します!」

アースラの艦橋、戦闘の影響でカメラがダウンし、また通信もジャミングされていた為に状況が一切分かっていなかった。今、カメラを漸く復旧させ、暁人が通った後が、モニターに映されていた。

「これは……」

「手練れやって聞いてたけど……予想以上やね。」

モニターに映る銀色の光の粒。それがアースラの廊下を埋め尽くさん勢いで広がる。その向こうにうっすら見える廊下は、まるで侵入されたとは思えない程に静かだ。

だが、その床には武装隊の隊員が倒されており、確かに戦闘があったことを伝えている。

「侵入者はどこだ?」

クロノの問いにモニターが切り替わり、なのはと暁人が向かい合うその場所を映し出す。

「なのはだけか?フェイトはどうした!?」

「あ、画面の隅におるで!」

カメラの範囲ギリギリに氷漬けにされたフェイトが映っている。

「まさか……まだ向かって五分程しか経ってないぞ!」

「……こうなったら私が、」

「……いや、ダメだ。はやてが艦内で戦ったら本当にアースラが墜ちる。」

「じゃあ、どうするんや!」

「……なのはでも勝てない時は、僕が出る。」

クロノが呟くと同時に、画面の中で再び戦闘が始まった。










「《アイシクルハープーン》。」

氷で創られた無数の銛が弾丸の如き速さで放たれる。数十にもおよぶ銛はしかし、展開された魔力の壁を突破することが出来ない。

「《ディバイン…」

なのはの持つレイジングハートに魔力が集中、さらにはカートリッジが一発排出される。

「…バスター》!!」

高い密度を秘めた直射砲撃が暁人に迫る。しかし……

「嘘!?」

なのはの十八番であるディバインバスター。しかし、その砲撃は半ばも行かずに減衰し、消え失せてしまう。

間合いを詰める暁人、杖と杖とが激突し、辺りに魔力の余波が弾ける。間合いを離さず二撃目、三撃目と追撃を加える暁人。

「ハアァァァ!!」

全速の突き込み。しかし、またしてもシールドを展開するなのはの防御を崩せない。さらに、

「ホールディングシールド……!」

近接攻撃を噛み込む性質のあるその盾が、槍の穂先を捕らえて離さない。

「逃がさない!」

さらに魔方陣が展開され、魔力の鎖が飛び出す。しかし、

パキィィン

暁人は穂先を瞬時に『砕き』、その場を離脱。バインドを全て回避する。さらに、

「っ、いつの間に!?」

床面が凍り、なのはの足を捕らえている。魔力を通して氷を破壊するが、その為に暁人への対処が遅れる。

「《ブリザードガスト》。」

〈《Blizzard Gast》〉

暁人が『明らかに溜めの短い』砲撃魔法を放つ。

「くっ、《ラウンドシールド》!」

威力はそこまで高くなかったのか(チャージ時間には全く見合わないが)、なのはが咄嗟に展開したシールドで防ぐことは出来た。

「今度はこっちが……!?」

「悪いが、お前のターンは来ない。」

反撃を行おうとレイジングハートを構え直した瞬間、なのはは“それ”に気付いて愕然とする。

いつの間にか、自身の周囲に無数に展開された拳大の氷塊達。普段なら高い空間認識力を持つなのはが、こんな包囲に気付かない筈はない。しかし、空間を埋め尽くす銀色の光の粒達がなのはの認識力と魔力探知を狂わせた。

「《ヘイルストーム》……沈め。」

〈《Hail Storm》Full burst.〉

一斉射。100発を優に越える雹の弾丸がなのはを襲う。

「………しぶといな。」

どうにかプロテクションを展開し、さらにはカートリッジを使用して凌ぎ切ったなのは。お返しとばかりに高速速射砲のショートバスターを数発放つが、いずれも届く前に減衰してしまう。

Sir, the target reaction is detected. Location identification is complete.(サー、対象の反応を検出。位置特定完了しました。)

「……分かった。」

対象、即ち《スノウスフィア》の位置の特定。暁人には既にここに留まる理由は無かった。

「……聞いていたな?悪いが失礼する。」

「っ………逃がさ、ない……!」

なおも暁人に杖を向けるなのは。再び魔力弾が展開され、一斉に暁人に向かうが、届くものは一つとして存在しない。

「……ハボクック、因みにどっちだ?」

It's almost front.(ほぼ正面です。)Display position information in view.(視界に位置情報を表示します。)

位置関係としては暁人とスノウスフィアのほぼ一直線上になのはがいる。つまり……

「面倒だな……纏めて吹き飛ばすか。」

こういう選択肢が取れる。

同時になのはが気付く。戦闘の規模に比べ空間中に漂う魔力が極めて薄い事に。正確には薄い訳ではない。『全て暁人の魔力として、空間中に銀色の光として漂っている。』

暁人はアースラ艦内に侵入した際、一つの魔法を発動させている。

《ダイアモンドダスト》

この魔法は決して自信家ではない暁人自身が『最強の汎用魔法』であると自負する多目的魔法だ。

原理は単純、魔力を極微小のスフィアに変えて空間中にばら蒔く。この極小スフィアには探知、妨害、凍結の三機能が備わっており、スフィアが触れたものを暁人に伝え、散布されてる空間における暁人以外のあらゆる魔力現象を阻害し、触れたものを極僅かではあるが凍結させる。

つまり、散布した空間を問答無用で暁人のホームグラウンドへと変える、反則的な魔法なのだ。

当然室内であれば効率は上がり、さらに空間中の魔力を随時集束してスフィアに変換するため魔力消費を抑えると同時に相手に空間魔力を使わせない。

最後に

「『イタクァ・ルリム・シャイコース、悠久なる銀嶺、白き怒濤の奥にて眠れ』………《アヴァランチブレイカー》!」

〈《Avalanche Breaker》〉

ハボクックからカートリッジが弾け飛ぶ。一つ、二つ、三つ。さらに、空間中に漂っていた極小スフィア達が一斉にハボクックの先端に集束する。

ダイアモンドダストが備える最後の機能、散布したスフィアをいつでも呼び戻し、魔力として利用出来る。

つまり、異常に短いチャージ時間であらゆる魔法が放てる。

砲撃魔法で最大のチャージ時間を誇る集束砲(ブレイカー)を僅か5秒弱で発射できる事こそが、まさにその最たる例だろう。

万象を押し潰し、静謐で寂寥たる死へと導く白き崩壊の名を冠する砲撃が、動くことも防ぐこともままならないなのはを呑み込んだ。 
 

 
後書き
詠唱が一番苦労しました……。

アヴァランチブレイカーのアヴァランチとは雪崩の事です。詠唱の冒頭イタクァ・ルリム・シャイコースはクトゥルフ神話の邪神、『イタクァ』と『ルリム・シャイコース』からとりました。

その他の魔法

《Frost Edge》→フロストエッジ→霜の刃
《Ice Cage》→アイスケージ→氷の檻
《Freezing Chain》→フリージングチェイン→凍る鎖
《アイシクルハープーン》→氷柱の銛
《ブリザードガスト》→吹雪の突風
《ヘイルストーム》→雹の嵐
 
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