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魔法少女リリカルなのは『絶対零度の魔導師』

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アージェント 〜時の凍りし世界〜
  プロローグ

 
前書き
初めましての方も、アンタ誰だよって方も、どうも、伊10です。今回はリリなの!なんですが……そこは伊10クオリティ、まず間違いなく王道二次創作にはならない。スタートはAsからstsの空白期間、空港火災が起こる直前の冬です。いきなりのオリジナルストーリーですが構わないという方だけお進みください。 

 
第9管理世界 《アージェント》

「ギャァァァ!!?」

「ひっ……や、やめろ!来るな……来るなぁぁ!?」

「聞いてないぞ……こんな……こんな!」

「落ち着け!一旦退いて態勢を立て直……グハァ!!?」

見渡す限りの大雪原。その真ん中で、30人程の人々が“ナニカ”に襲撃されていた。一方的に蹂躙されている人々は別に只人ではない。時空管理局で魔法戦技を学んだ武装隊。戦闘のプロフェッショナル達だ。

その集団が今、全く為す術もなく倒されていく。一人、また一人と数は減っていく。

「何だよ……何なんだよチクショウ!!」

とうとう残るは一人だけ。他の者とは違い、厳重に封印を施されたケースを左腕に魔法で縛り付けている。

残った一人はデバイスを構え、応戦を試みる。が、魔力弾を放つより遥かに速く、男に氷の槍が撃ち込まれた。

「ガッ……!?」

まともな防御も出来ず、一撃で倒される男。その男に、音もなく近付く影があった。

「……『それ』か。」

ポツリと呟く。近付いたのは一人の少年。まだ14~5歳だろうか。だが、その目に宿る鋭い光は、その年齢を感じさせない。

「一度だけ言う……『それ』を渡せ。」

「ぐ……誰が……お前なんかに………」

『それ』が何なのか知っている男は当然拒絶する。しかし……

「……なら、いい。腕ごと貰っていく。」

そういって少年は、自身の杖型デバイスを振りかぶる。その先端部分には氷の刃が生まれ、まるで槍のようにも見える。

そして、その槍を躊躇いもなく男の左の二の腕に振り降ろす。その刃が男と左腕を分断する直前だった。

「待て!待ってくれ!!」

ピタリ、と少年の動きが止まる。穂先は、バリアジャケットを紙の如く切断し、薄皮一枚切り裂いたところで停止していた。

「渡す、渡すからやめてくれ!!」

そう叫んで男は、拘束を外し、ケースを手離す。それを少年は引ったくる様に奪うと、外装を切り裂き、中身を確認する。

「間違いないな……これが……これが《スノウスフィア》か。」

中身は雪の結晶の様な形をした、透明なクリスタルだ。

「……まだ、一つ目だ。……急いで集めなきゃ、な。」

男を昏倒させたあと、そう言って少年は何処かへ消えた。










一ヶ月後

「護衛任務?私達で?」

次元航行艦アースラの一室。そこでは三人の少女が、一人の青年と向き合い話をしていた。

「ああ。護衛対象はロストロギア《スノウスフィア》。これの発掘現場からの移送だ。」

「ちょっと待ってお兄ちゃん。それって武装隊か遺失物管理部の仕事じゃないの?」

疑問を挟んだのはフェイト・T・ハラオウン。金髪に赤い瞳をもつ美少女で現在14歳。説明をする青年、クロノ・ハラオウンの義妹でもある。

「普通ならそうだ。ただ、今回は物が物だ。」

「ああ、思い出したわ。スノウスフィアってアレやろ?ほら、最近強奪されてるっていう……捜査局でも話題になっとるよ。私担当やないから良くは知らんけど。」

この少女は八神はやて。最近頭角を現しつつある敏腕捜査官であり、指揮官キャリアも持っている。かつては闇の書と呼ばれた封印指定ロストロギアの盟主であったりもした。

「そう、このスノウスフィアだが……過去三回、移送中に襲撃に遭い、強奪されている。特に三回目は艦まで運び込んだものの、艦ごと沈められ、盗み出されている。」

その言葉に三人の少女はそれぞれ驚きを露にする。次元航行艦は例外なく巨大であり、また、対魔力装甲を備えている。それを沈める事は容易ではない。

「犯人は何人ぐらいの連中なんや?」

「……いや、単独犯だ。」

これには流石の三人も言葉を失う。単独犯、つまりは個人で艦を沈める程の火力があるということだ。

「えっと……その、犯人はどんな人なの?」

尋ねたのは高町なのは。航空隊随一の魔導師に贈られる称号、エースオブエースの継承者であり、一部からは白い悪魔と呼ばれていたりもする。……決してV字アンテナのついた連邦軍の新兵器だったりはしない。

「分かってる事はミッド式の魔導師で戦法(スタイル)はオールラウンダー。強力な氷雪系の魔法の使い手で推定ランクはSオーバー。後は君たちと同じくらいの男だそうだ。肝心のどこの誰か、何が目的なのかは全く分かってない。」

Sオーバー。この場で言えばはやてと同ランクだが、はやては広域型、一対一だと分が悪いだろう。

「それとこれが一番不思議なんだが……こちらを殺すつもりがない。魔法は全て非殺傷設定で放たれている。危険なロストロギアを追っているにも関わらず、だ。」

「それは……妙やな。」

死者が出ていない事は喜ぶべきことである。しかし、どうしても違和感が際立つ。

「そういえば……そもそもスノウスフィアってどんなロストロギアなの?」

「そやな、それが分かれば目的も絞り込めるんとちゃう?」

用途が限られるのなら目的も限定される筈だ。目的が分かれば見えてくるものもある。

「そう言うだろうと思ってユーノに調べて貰った。それに拠ると………」



ロストロギア:スノウスフィア

第9管理世界《アージェント》にかつて存在した古代文明が開発した兵器。見た目は雪の結晶状のクリスタル。《アージェント》の古代文明はこの兵器の暴走が原因で崩壊している。効果は気候操作。一つだけで世界一つを丸々氷漬けに出来る程の威力を持つ。《アージェント》が常冬なのもそれが原因。ナンバーⅠからナンバーⅩⅡまでの十二個が存在、今までに十個が発掘され、残り二つも所在は判明している。



「……と、まあこんな所だな。」

説明を受け、三人の魔法少女はそれぞれに思考を巡らせる。

(なんだろう……単純に世界を滅ぼしたいなら一個で十分だよね?)

(複数必要って事は……単純に使うつもりはない?)

(殺す気がないっちゅうことはつまり破壊が目的じゃない……って、思いたいけどなぁ……)

結論はでない。確かなのは、次は奪われるわけにはいかない。それだけだった。










《アージェント》にあるとある集落。伝統的な木造建築が立ち並ぶこの山間の村の片隅、ある家の戸を一人の少女がくぐっていた。

「暁人、いる?」

「エヴァか。何の用だ?」

応対するのは少年。暁人と呼ばれたその少年の返事はぶっきらぼうなものだった。

「冷たい反応ね。せっかくこんなに可愛い幼馴染みが来てあげたんだからさ、もうちょっと何かないの?」

膨れっ面で文句を言う少女――――エヴァ・ローズマリーは確かに美少女ではある。(自分で言うのはどうかと思うが)しかし、少年――――白峰暁人(しらみねあきと)にはそんな事は一切関係なかった。

「三度目は言わない。何の用だ?」

「……相変わらずツレないわね。」

そうは言うものの、薄々予想はしていたエヴァ。期待値が低かったために、そこまで落胆もしていない。

「ハイこれ。」

ポケットから自身のカード型デバイスを取り出し、ある文章データをホログラム表示する。

()()()()()()()()()()。必要でしょ?」

「……助かる。」

短く礼を言った暁人は、ペンダント状の待機形態をとる自分のデバイスを軽く叩き、データの転送を受ける。警備計画書を読むにつれ、だんだんと顔が険しくなっていく。

「……管理局のトップエースが三人か。奴等、余程俺が目障りなんだな。」

「そんな事言ってる場合?ランクで見れば三人とも暁人とそう変わらないのよ?」

「やってみないと分からないが……算段はあるし、確率もそう低くはないだろう。」

「ホントに?……まあ、暁人が言うからにはそうなんでしょうね。」

ここまでの会話で分かるだろう。彼、白峰暁人こそ、現在進行形でこのアージェントを騒がせている連続ロストロギア強奪犯、その張本人である。エヴァは管理局情報部に所属しており、そこから《スノウスフィア》の移送情報を流していた。

「これを奪えば残りは七つ……先は長いな。」

「……ねぇ、本当に十二個全部必要なの?」

「ああ……スノウスフィアは十二個全部揃って相互に安定させあう。……本来なら暴走なんてしない仕組みなんだよ。」

だから、と暁人は続ける。

「アイツを……氷雪(ひゆき)を助けるには、十二個全部が必要なんだ。」

確かめるように話す暁人。その黒い瞳には、何人たりとも覆すことの出来ない、絶対零度の意思が宿っていた。

その時、

「お…兄ちゃん、お客さん……?」

「氷雪ちゃん?起きてていいの?」

「あ……エヴァ…さん。はい、今日は調子がいいので。」

奥の部屋から姿を現したのは銀色の長髪の少女。決して融けない氷山を思わせる暁人とは違い、今にも消えそうな一片の雪を想起させる。

「氷雪、治った訳じゃ無いんだから大人しくしてろ?」

「平気だよ……無理は、しない…から……。」

少女――――白峰氷雪は弱々しいが、それでも笑みを作り、はっきりと言い切った。暁人はそれ以上は何も言わなかったが、その表情から不安は消えていない。

(ここだけ見ていれば、病弱な妹と心配性の兄にしか思えないのにね………)

彼ら兄妹を取り巻く状況のうち、どれか一つでも欠けていれば『こう』はならなかっただろう、と、エヴァは思う。その事が幸運だったのか不幸だったのかは全て終わらなければ分からない。ただ……

「お兄ちゃん……。」

「何だ?」

「………いなくなったり…しないよね?」

「………当たり前だ。」

…………ただ、彼らを別つ事だけは、神様にだって不可能だろう。 
 

 
後書き
主人公である白峰暁人君は基本原作勢と一対一で戦闘を優位に進められるぐらいには強いです。このアージェント編のラストでチート化する予定ですがそれ抜きでも十分主人公クラスの実力を備えています。 
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