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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百五話 夜になってその六

「だからお空に雲がなかったの」
「雲がないお空」
「ちょっとないでござるな」
「そうだよね、ちょっとね」
「想像出来ないでござる」
 今僕達が見ている空には雲もある、その雲達が次第に夜の闇の中に消えていっている。星達だけ輝工としていて月も白い姿を見せてきている。
「空には雲があるもの」
「そうした認識でござるからな」
「けれどチェチーリアさんにとっては」
「そうでないでござるか」
「他の場所に来た時に」 
 暮らしていたその場所からだ。
「お空に雲があって驚いたから」
「もうそれで」
「驚いたでござるか」
「本当に」
 雲を見て、というのだ。
「白いふわふわとしたものがあって」
「じゃあ雨もでござるな」
 マルヤムさんがここで言った。
「なかったでござるな」
「下の場所に降っていたわ」
 雨もというのだ。
「少ししたの。そこにお池があって」
「そこでお水を手に入れていたでござるか」
「そうだったわ、住んでいた場所に丁度雲があって」
「本当に高原都市ですね」
 僕はインカ帝国を思い出した、まさにその国を。
「そしてペルー自体が」
「そうした国なの」
「そうですね」
「それで日本に普通に雲があることが」
 まさにというのだ。
「面白いわ」
「そうですか」
「だからね」
 チェチーリアさんは微笑んでさらに言った。
「こうして見ているだけで楽しめるわ」
「そうなんですね」
「雲がいつも上にあることが」
「横か下にあるんじゃなくて」
「そこにあることが」 
 こう話すのだった。
「不思議でね」
「面白いですか」
「そして楽しめるわ、特にね」
「特に?」
「夜の中に消えていくことが」
 その雲達がだ。
「面白いわ」
「そうでござるか」
 マルヤムさんはここまで聞いて考える顔になって言った。
「白い雲が」
「赤くなってね」
「夜のお空にでござるか」
「消えていくことが」
「そうでござるか」
「そして見えなくなることが、けれど」
「見えなくなるでござるが存在しているでござる」 
 このことは変わっていないというのだ。 
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