| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

81部分:合流その三


合流その三

「その役目我等にお任せを」
 オルエンとフレッドだった。二人共見事な馬術である。
「戦いの際の先鋒はこの上ない名誉、是非お任せ下さい」
 オルエンがセリスに言う。だがセリスはいささか戸惑っている。
「いいけれど・・・。オルエン、あおそこにいるフリージ軍には君のお兄さんもいるという噂も・・・・・・」
 困惑するセリスに対してオルエンはニコリ、と笑って言った。
「その様な事は関係ありません。私は解放軍の者、兄はフリージの者、それだけです」
「・・・本当にいいんだね?」
「はい。もとより覚悟の上です。私は民の為公子の下で戦おうと決めたのですから。例えそれが兄と剣を交える事になろうとも」
「オルエン・・・・・・」
 フレッドも言った。
「私もオルエン殿と同じ考えです。私も民の為戦うのです」
「二人共・・・・・・」
 セリスは意を決した。
「よし、先陣は君達二人に任せる。セルフィナ、グレイド、それでいいね」
「はい」
 二人はそれを了承した。
「全軍このまま全速力でレンスター城へ向かう。リーフ王子達を救いレンスターを解放するんだ!」
 この時レンスターを包囲するフリージ軍は昼食を摂っていた。兵士達は鍋に火を点け次々と食材を出してくる。
 大きな河魚が鱗を剥がれブツ切りにされ鍋に入れられる。荒く刻まれた人参やズッキーニがそれに続く。
 ホカホカに煮られた馬鈴薯の皮が剥かれその上にたっぷりとバターが塗られる。黒パンにソーセージとゆで卵がのせられる。
 量も多く食材も豊富である。豊かなレンスターだけあって陣中とはいえ良い物を食べている。
 兵士達が談笑しながら鍋の中から魚や野菜を取り出し椀に入れフォークで食べる。西瓜や無花果を食べている兵士もいる。あちこちで煙が上がり舌づつみが聞こえてくる。
 フリージの将兵達は皆勝利を確信していた。この後の総攻撃でレンスター城を確実に陥落させられる、そう思っていた。その時だった。
 東南の方から竜巻が起こったかに見えた。砂煙が高く巻き上がっていた。
「何だ!?」
 こちらに向かって来る一団があった。皆馬に乗り手に剣や槍を持ち武装している。旗を持っていた。それはシアルフィの旗であった。
「何ィ!?」
 先頭には青い軍服の女騎士と紅のマントの騎士がいた。女騎士が手の平を掲げた。その上で淡い緑の雷球がバチバチと音を立てながら次第に大きくなっていく。
「トローーン!」
 雷光が凄まじい速さでフリージ軍に襲い掛かる。不意に立ち上がった兵士が二人程吹き飛ばされる。
 またトローンが放たれる。慌てて馬に乗ろうとした騎士がその愛馬もろとも弾き飛ばされる。
 フレッドが腰から剣を抜いた。解放軍に普及しようとしている銀の剣でも大剣でもない。フリージ軍でも名うての剣士しか扱いこなせないと言われているマスターソードである。
 剣を振り下ろす。風を切る音がした。敵兵が鎧ごと両断される。横一文字に斬る。胴を両断される。
 手斧が襲い掛かる。剣でそれを叩き落とした。返す刀で手斧を投げたその兵士の胸を貫く。
 不意を衝かれたフリージ軍は恐慌状態に陥った。慌てて鍋代わりにしていた兜を被り火傷を負う者、火に突っ込む者、煮えたぎるシチューに足を入れる者、急いで魚を飲み込み喉に骨が刺さる者、一種の喜劇の様な有様であった。セリスの指揮の下解放軍五千の騎兵は一糸乱れぬ動きでフリージ軍を縦横無尽に切り裂いていく。それに対しフリージ軍は組織立った反撃が出来ず各個に撃破されていった。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧