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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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82部分:合流その四


合流その四

 解放軍がフリージ軍に突撃する直前レンスター城ではリーフをはじめとしてレンスター軍の諸将が大広間において軍議を開いていた。
 どの者の顔も重苦しい。まずリーフが口を開いた。
「状況はどうだい?」
 それに対しカリオンが首を振りながら言った。
「思わしくありません。兵の三割近くが死傷し残りの者達も皆疲弊しきっております」
「武器や食糧は?」
「もってあと数日かと・・・・・・」
 ケインが沈痛な表情で述べた。
「セリス公子からの援軍は?」
「全く。メルゲン、ターラを解放したとの情報が入りましたが・・・・・・。アルスターからのフリージ軍主力部隊と戦闘に入ったと思われます」
 ロベルトが報告した。
「損害は増える一方、武器も食糧も残り僅か、そして援軍の望みも無し、か」
「・・・・・・・・・」
 一同は沈黙した。
「その上敵軍は午後より総攻撃を開始するようです。そうなれば最早持ち堪えられないかと・・・・・・」
 フィンが言った。場は増々重苦しいものになる。
「打って出ますか」
 アルバがポツリ、といった感じで言った。
「そして一直線にグスタフの首を狙う。もうこれしかないでしょう」
 一同の顔が更に重くなりそれに加え険しさも入ってきた。
「・・・・・・確かに。今レンスターで篭城しても全滅するだけだ。それならば・・・・・・」
 リーフが意を決した。顔を上げた。
「フィン、全ての将兵に伝えてくれ。すぐに総攻撃に移ると」
「解かりました。先陣は私が・・・・・・」
 フィンは死を覚悟した。拳が固く締められ白くなる。
 その時だった。一人の兵士が慌しく部屋に入ってきた。
「どうした?」
 兵士は手の平の先をこめかみに付けるレンスター式の敬礼を取るとあたふたした声で外の方を指差して言った。
「ああああの、そそそ、外を御覧下さい!」
「?」
 兵士の喜びの入り混じった慌てふためき様にいぶかしんだ一同だったが悪い知らせではなさそうだと感じた。リーフはフィンに言った。
「どうしよう?」
「とりあえず城壁に出ましょう」
 フィンの言葉通り兵士に連れられ一同は城壁の上に出た。兵士の指が下を示す。そこには待ち望んでいた者達がいた。
 シアルフィの羽田を掲げた騎兵の一団がレンスター城を包囲するフリージ軍を切り裂いていた。その中にはリーフ達が良く知る者達もいた。
「セルフィナ・・・・・・」
 群青の髪の美しい女騎士が矢を放つ。フリージ兵が永遠に落馬した。
「グレイド・・・・・・」
 フィンと同じ位の歳の騎士が槍を右に左に繰り出し敵背の胸を次々に貫いていく。
 その中心に青い髪の若者がいた。その若者の事をリーフはいつも聞き、いつも考えていた。
「セリス公子・・・・・・・・・」
 セリスは口髭を生やした黒い軍服の騎士に守られながら自ら剣を振るい指揮を執っている。リーフはその姿を見て顔に明るさを取り戻していった。フィンはこれ程明るい表情の若い主君を今まで見た事が無かった。
「来てくれたんだ、僕達の為に・・・・・・。僕達を助けに来てくれたんだ!」
「はい・・・・・・」
 ナンナが頷く。その顔が眩いまでに明るい。
 リーフが一同の方へ振り向いた。皆満面に力強い笑みを浮かべている。
「全軍出撃だ。そして・・・・・・解放軍と共にフリージ軍を倒すんだ!」
「おお〜〜〜〜っ!」
 一同雄叫びを轟かす。リーフが階段を駆け下りる。皆それに続く。
 フィンは眼下の解放軍を見た。そこにはかって見慣れた青地に白い剣の旗が翻っている。
(遂に来ようとしている。長年待ち臨み続けていた時が・・・・・・・・・)
 表情は無表情なものに戻っている。だがその青い瞳は輝きを増している。
(私のしてきた事は無駄ではなかったのだ。決して・・・・・・)
 槍を握り締める。今は亡き主君キュアンより授けられた勇者の槍という逸品だ。
(私は戦う。そして・・・・・・!)
 フィンも階段を降りていった。そしてリーフ達に追いついた。
 それまで固く閉じられていたレンスターの城門が開かれた。そして喚声と共にそれまで立て篭もり守るだけだった
レンスター軍が武器を高く掲げフリージ軍へ突き進んでいく。
 カリオンの剣が、ケインとアルバの槍が、ロベルトの弓が縦横無尽に動き回りフリージ軍の将兵達を薙ぎ倒していく。その動きは二月に渡る篭城戦で疲弊しきった者達の動きとは思えなかった。
 
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