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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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71部分:悪の巣その四


悪の巣その四

 必死に裏門へ急ぐ。だがそこにも死の制裁が待っていた。
「ここは通さぬ」
 トルードが鋼の剣を振るう。一振りする度に敵の兵士達の首や腕が飛ぶ。シヴァやロドルバンにも勝るとも劣らぬ腕である。
「駄目だ、通れねえ」
 後ろを振り向く。だがそこには既に解放軍の兵士達がいた。
 夜が更けようとしている。要塞内は既に殆どが制圧されランツクネヒト達もほぼ全て討ち取られていた。
 レイドリックは城の屋上にいた。解放軍の侵入を聞いた彼はいち早くその身を隠し秘密の抜け道を使って逃走していたのだ。
「糞っ、忌々しい奴等だ」
 空は次第に明るくなりはじめている。薄明かりの中戦乙女の像がそびえ立っている。
 六枚の翼を持ち全身を武装した姿である。右手には槍を持ちそれを高く掲げている。この要塞に降臨した姿をそのまま銅像に再現したのだという。レンスターでも有名な芸術品でもある。
 この戦乙女には戦いで死んだ戦士達をヴァルハラへ運ぶ他にもう一つ仕事がある。それは人の罪の裁量を計る事である。裁きの神が人の功罪を計る時彼女はそれの手助けをする。それが彼女のもう一つの仕事であった。
 それが為彼女は聖天使と呼ばれる。正義の下に悪を断ずる者として。
 そして今悪を裁かれようとしている者が目の前にいる。レイドリックだ。
「だが見ておれ。いずれ貴様等に復讐を加えてやる。このわし自らの手でな」
 後ろを振り向く。追っ手はいなかった。
「見ておれ、今に見ておれ」
「残念だな。我々が見るのは貴様の最後だ」
 不意に声がした。戦乙女の像の方からだ。
 像を見る。そこには数人の男女がたっていた。
「貴様等・・・・・・」
 解放軍の将達だった。レヴィンを中心にイリオス、パーン、トルード達がいる。シャナムやティナも一緒だ。
「遂に今までの悪事が裁かれる時が来た。レイドリック、大人しく地獄に落ちるがいい」
 レヴィンが冷たく言い放った。その言葉には彼へのあからさまな嫌悪感が滲み出ていた。
「戯言を。地獄へ落ちるのは貴様等の方だ」
 腰の剣を抜いた。豪奢な装飾が施された大振りの剣だ。
「やはりな。最後まで醜い奴だ」
 レヴィンの緑の眼の光は嫌悪感を更に強めた。
「だが貴様を裁くのは我々ではない。この男だ」
 一人の騎士が前から出てきた。茶色の髪と瞳を持つ大柄な男で逞しい顔と身体付きをしている。褐色の上着とこげ茶のズボンの上から緑の鎧を着けている。その手には鋼の大きな斧がある。
「俺の名はダルシン。これだけ言えばわかるな」
 その騎士はレイドリックに向かってそう言った。茶の瞳は激しい憎悪で燃え盛っている。
「貴様は・・・・・・」
 レイドリックが冤罪を被せ土地と財産、そして命を奪ったマンスターの騎士がいた。その息子の名がダルシンであった。
「貴様に陥れられた我が父、そしてレンスターの民の怒り今受けるがいい」
 そう言って左手の斧をゆっくりと構えた。
「お、おのれ・・・・・・」
 レイドリックは一言呻くと剣を構えた。そしてダルシンへ向けて突き進んで行く。
「馬鹿め、隙だらけだ」
 ダルシンは左手の斧を放り投げた。斧は激しく回転しながらレイドリックへ向けて一直線に飛んでいく。
「ぐはあっ・・・・・・」
 斧がレイドリックの額を直撃した。彼の額に深々と突き刺さった。たまらず彼は両膝を着いた。
「止めだ」
 ダルシンが歩み寄りその斧を引き抜いた。そして横に一閃させる。レイドリックの首は落ち床に転がった。
「そのまま地獄で炎の巨人達に永劫に焼かれ続けるがいい」
 ダルシンがレイドリックの首を踏み付けて言った。ダンドラム要塞の攻略はこれで幕を降ろした。
 ダンドラム要塞は解放軍の手に落ちた。兵力はほぼ互角であったが解放軍の智略により彼等の圧倒的な勝利に終わった。悪名高きレイドリックはその配下であるランツクネヒト共々討ち取られその首はターラに送られ晒し首となった。捕らえられたランツクネヒトも降伏は許されず一人残らず首を刎ねられた。こうしてダンドラム要塞を根城とし悪行の限りを尽くしていた者達は全て成敗されたのである。
 意気上がる解放軍は北東に進軍をはじめた。そこには王都アルスターへの道があった。
 
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