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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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72部分:血の絆その一


血の絆その一

                        血の絆
 解放軍がターラを解放したとの報はすぐにアルスターのブルーム王の下に入った。そしてアルスターへ向けて進軍して来ているとの報もまた入っていた。
「そうか、遂にここへ来るか」
 銀の髪に黒い眼を持つ男が報告を受けていた。黒い丈の長い法衣に似た上着に同じ色のズボンを身に着けている。その顔は血色が薄く険のある顔立ちをしている。大柄だが決して筋肉質というわけではない。彼の名をブルームという。フリージ家の当主にしてレンスター王である。
 前当主ブルームの長子として生まれた。若い頃より冷酷な性格で知られ父の副官として働いていた。先の戦乱の折にはアグストリアの総督として反グランベル派に対して容赦無い弾圧を加えた。トラキアがレンスターに侵入するとレンスター征伐軍総司令官に任命されトラキア軍を撤退させた。そしてそのままレンスターに入り王となった。その政治は極めて厳格かつ非情であり『恐怖王』と呼ばれている。氷の様な心の持ち主と言われる事が多い。
「はい、その数十三万を超えメルゲンからこのアルスターへ向けて進軍しております」
 一人の騎士がフリージ式の敬礼をして答えた。
「十三万か。思ったより多いな」
 王は報告を聞き一言そう呟いた。
「将軍達はどうしておる」
 騎士に問うた。
「はっ、既に城内に入られています」
「そうか」
 報告を聞き暫し考え込んだ。だがすぐに顔を上げた。
「将軍達に伝えよ。皆すぐに会議室に来るようにとな。軍議を開くぞ」
「はっ」
 騎士は敬礼した。
「そしてティニーも呼ぶがいい」
「わかりました」
 騎士は敬礼して退室した。
「あの娘もようやくわしの役に立つ日が来たな。フフフフフ」
 窓の向こうを見ながら笑った。そこには見事な街並みと城壁、そして緑の平野が広がっている。
 王は会議室に入った。そこには既に将軍達が集まっていた。
 王が部屋に入ると将軍達が一斉に席を立ち敬礼する。王はそれを手で制した。
「堅苦しい挨拶は抜きだ。早速軍議を始めるぞ」
 王は席に着いた。それを受けて将軍達も席に座す。
「知っていると思うがシアルフィ軍がこのアルスターへ向けて進軍して来ている。その数十三万」
 王は淡々として口調で言った。
「今奴等はアルスター平原を進軍して来ている。それに対する卿等の意見を聞きたい」
 それに対して一人の将軍が席を立った。
「ケンプフか。申してみよ」
「はい」
 白い髪に細く黒い陰険な光をたたえた眼の男である。黒く丈の長い軍服に白のズボン、赤いマントとブーツを身に着けている。彼こそ悪名高きケンプフその人である。
 代々フリージ家に仕える伯爵家の嫡男として生まれた。幼い頃から狡賢く人を欺くのが得意であった。また嫉妬深い性格であり士官学校で彼より優秀な成績を修めた者を陥れ左遷させた事もある。
 フリージ家がレンスターに入ると王妃ヒルダに取り入り彼女の腹心として暗躍した。そしてフリージに反する者の他に自分の出世の邪魔になりそうな者を次々と消していった。同時に民に重税を課し搾り取るだけ搾り取りそれを己が懐に入れた。レイドリック、グスタフと並ぶフリージの悪の象徴と言える人物である。
「ここは迎え撃つべきかと存じます。相手は所詮寄せ集めの烏合の衆、我等の敵ではありません」
 巧みに王の関心を買う言葉である。主君が解放軍との戦いを欲しているのを見透かした上で言っているのである。
「そうか。ではこの城に集結している全軍十六万を以って奴等を倒すとするか」
「御意。アルヴィス皇帝陛下も喜ばれる事でしょう」
「うむ。セリス公子、シャナン王子の首級を挙げれば功は思いのままだ。それではカンプフ、その征伐の軍の先陣はそなたが務めるがいい」
「御意」
 その言葉を聞きケンプフは内心ほくそ笑んだ。
「そしてヴァンパ、フェトラ、エリウ」
 三人の名を呼んだ。それを受けて三人の女魔道師達が立ち上がる。
 三人とも同じ灰色の髪と赤い瞳を持っている。その事から彼女達が姉妹である事がわかる。だが服装が違う。
 ヴァンパは赤、フェトラは青、エリウは緑の軍服とズボンを身に纏っていある。その色がそれぞれの扱う魔法の属性を表わしている。ヴァンパはファイアーマージ、フェトラはウィンドマージ、エリウはサンダーマージである。三人共フリージ軍にその名を知られた者達である。
「そなた達は第二陣として中軍を率いるがいい」
「御意」
 三人は恭しく敬礼した。
 
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