| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

70部分:悪の巣その三


悪の巣その三

 夜になった。要塞内の兵士達は賭け事に興ずるか安酒をがぶ飲みして潰れていた。その中賭け事をせず酒も飲まず闇に紛れ何やら動き回る者達がいた。
「よし、手筈は万全だな」
 廊下の下で数人の男達が何やら話し合っている。その中にイリオスもいた。
「俺は正門へ向かおう。ティナはアンロックの杖でシャナムを出してくれ。奴にはもう剣を渡してある」
「は〜〜い」
「撹乱は俺が行こう。そういう事なら任してくれ」
 パーンが申し出た。周りの者達は皆頷く。
「裏門はトルードが行ってくれ。思う存分暴れてくれ」
「うむ」
「よし、やろう。レイドリックの忌々しい笑い声を凍りつかせてやるんだ」
 イリオス達は別れそれぞれ別々の方向へ消えていった。
 夜空は曇り星も月も無い夜だった。城壁の上の見張りの兵士達も酒に酔い潰れていた。そこへ一人歩み寄って来る者がいる。
「ん?交替の時間か」
「いや、違う」
 その者はいった。
「じゃあ何なんだよ」
「貴様等が地獄へ行く時間だ」
「何ィ!?」
 立ち上がろうとする。だがそれより前に兵士の喉に剣が突き刺さった。
 その剣を横に薙ぎ払う。兵士は首から血を出し壁にもたれかかる様にして倒れた。男はそれを城壁の下へ蹴り落とした。
「そろそろかな」
 男はパーンだった。城壁の下を見る。そこでは解放軍の将兵達が闇夜に紛れ進んでいた。
 正門は既にイリオスが制圧していた。門番の兵士達は皆始末され床に転がっている。
「来たか」
 イリオスは門の向こうを見た。解放軍がいた。彼もその中へ入った。
 解放軍は要塞内へと雪崩れ込んだ。それを受けた要塞内のランツクネヒト達は次々と討ち取られていく。
「こいつ等はレンスターの癌だ、一人残らず討ち取れ!」
 レヴィンの声が響く。それを受け解放軍の将兵達の刃が煌く。
 その頃シャナンが捕われていた部屋に二つの影があった。
「ふう、きつく縛りやがって」
 ティナに縄を解かれたシャナン、いやシャナムが縛られていた手をほぐしながら呟く。
「まあそう言わない。これから好きなだけ暴れられるんだし」
 その横で縄を手に持つティナが宥める。
「まあな。じゃあ行くか。ティナ、俺から離れるなよ」
「あいよ」
 二人は部屋を出た。早速二人の敵兵がいた。
「なっ!?」
 シャナムの姿を見た兵士達はハッと顔を凍らせる。
「貴様何時の間に・・・・・・」
「ついさっきな。おっと、これ以上は言わないぜ」
 シャナムは剣を煌かせた。兵士達は床に倒れた。
「まあざっとこんなもんだ」
「上手いのは化けるだけじゃなかったのね」
「それは余計だよ」
 ティナの言葉に嫌そうに顔をしかめるシャナムだった。
「エルサンダー!」
 イリオスが雷を放った。雷球の直撃を受けた兵士が吹き飛ぶ。
「くっ、裏切りやがったか」
 彼の周りを数人の兵士が取り囲んでいる。その中の一人が呪詛の言葉を漏らした。
「裏切り?貴様等には言われたくはないな」
 イリオスは剣を抜きながら言う。銀の剣だ。
「何?」
「俺はレンスターの為に戦う。貴様等の様に私利私欲の為に悪行の限りを尽くす下賎な輩と一緒にするな」
 構えを取った。レンスターのとある有名な流派の構えだ。
「行くぞ」
 前へ進む。まず前にいた兵士達を斬り捨てる。流れる様な動きだ。
 後ろを向く。兵士達が槍を手に襲い掛かって来る。
「馬鹿め、隙だらけだ!」
 雷球を連続で放った。兵士達は胸や腹にそれを受け床に叩きつけられた。
「所詮は賊か。これでは士官学校の訓練の方がまだましだ」
 そう言うと兵士達の屍を越え前へ進む。そして前から来る賊を斬り捨てた。
 兵士達は混乱していた。地の利を得ている筈の彼等であったが奇襲に戸惑い次々と倒されていく。
「シャナン王子がいるぞ!」
「馬鹿な、牢獄に閉じ込めている筈だ!」
 剣を振るうシャナムの姿を認め兵士達は怯える。慌てて踵を返し階段を登り逃走する。
 一番前の兵士が最上段へ足を掛ける。その時だった。
 前からナイフが飛んできた。ナイフはその兵士の額に突き刺さった。 
 兵士はゆっくりと後ろに倒れる。そしてその速度を次第に速め階段を転げ落ちていく。
「うわっ」
 後続の兵士達は慌ててそれをよける。そしてナイフが飛んできた前方を見る。
「ちぇっ、そのまま巻き込んでくれりゃあいいものを」
 パーンが出てきた。その手には剣が鋼の剣がある。
「こうなったら仕方ねえ。一人ずつ倒していくか」
 そう言いながら悠然と剣を振り上げた。
 要塞内はランツクネヒトの死骸だけが増えていった。今まで主君レイドリックと共に悪行の限りを尽くしていた彼等はろくに訓練もしておらず鍛え抜かれた解放軍の敵ではなかったのだ。そして解放軍は彼等の悪を許しはしなかった。最早それは戦争ではなく征伐であった。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧