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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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6部分:峡谷の戦いその二


峡谷の戦いその二

(大切な事を私は忘れていたようだな)
 騎兵隊の方へ向き直るとオイフェは号令をかけた。
「全軍進め、セリス様と合流するぞ」
 彼等も歓声をあげ走り出した。それはまるでエインヘリャルの進みのごとく勇ましくかつ堂々たるものだった。
 ーティルナノグ城東ー
「ラナ、無事だったか」
 レスターが馬から飛び降り自分の肩程の高さの少女の肩を抱いた。
「ええ兄さん、私は無事よ」
「そうか、心配したぞ」
 隣ではディムナがマナを抱いている。話の内容はレスター達とほとんど同じである。
「ミデェール父様とエーディン母様は?」
「ご無事よ」
「そうか、良かった」
 城の方を見てレスターは安堵の笑みを浮かべた。
「まあ御前はラクチェと喧嘩して勝つ位だからいいが父様は手が悪いし母様は優しい方だしな。万が一の事があった
らと・・・」
「あら兄さん、さっきと言った事が違うじゃない」
 眉をピクリとさせた妹に兄は慌てて弁明した。
「おいおいむくれるなよ。そりゃラナだって心配さ。何と言っても妹だし・・・ん!?」
 妹の顔に何か見つけたようである。
「どうしたの、兄さん」
「御前・・・可愛くなってないか!?」
「えっ、嘘」
「いや、本当に。誰か好きな人でも出来たのか!?」
 ラナの顔が紅くなった。
「ちょちょっと、そんな訳・・・・・・」
「まあいいけどな。相手が余程変な奴でもない限り俺は反対しないよ」
「兄さん・・・・・・」
「まああの鬼娘ラクチェもやっと女の子に見えない事もなくなったしラナも成長したという事か・・・・・・うわっ!」
 レスターの足下に短剣が突き刺さった。レスターは短剣の飛んで来た方を見た・・・そこには鬼娘がいた。
「誰が鬼娘ですって!?」
「そ、それは・・・・・・あっ、シャナン様」
「えっ、まさかもうお帰りに・・・・・・あっ!」
 ラクチェが気付いた時レスターは既にその場から逃げ去っていた。
「待ちなさい、レスター!」
「誰が!」
 所々で再開を祝う声がする中オイフェはセリスの下にいた。
「セリス様、遂に始まりましたな」
 深刻な表情のオイフェにセリスは申し訳無さそうに頭を下げた。
「御免オイフェ、オイフェ達が戻って来るのを待てなかったんだ」
「セリス様、頭を下げるには及びません。それよりもこれからです」
「これから・・・・・・」
「はい、私もいささか弱気になっておりました。ですが今は前にいる敵を倒す事を考えなければなりません」
「うん」
 オイフェは懐から一枚の地図を取り出した。それはイザークの地図だった。地図を広げオイフェはイザーク北西部の部分を指差した。
「今我々は峡谷を挟んで敵と対峙しております。敵は緒戦で遅れを取りましたが明日は数を頼みに峡谷を突進んで来るでしょう」
「敵は一万五千、こちらは騎兵隊を入れても三千、つらい戦いになるね」
「いえ、この戦い勝てます」
「えっ!?」
 オイフェは峡谷の入口を指差した。
「セリス様はここで防衛線を敷いて下さい。ここならば敵は数を頼めません」
 次にオイフェは峡谷の北側を指差した。
「私は騎兵隊を率いて迂回し敵の側面を衝きます。敵は我々が帰って来た事を知りません。その我々が奇襲を仕掛ければ敵は大混乱に陥るでしょう」
「成程」
「そこでセリス様は攻勢に転じて下さい。そうすれば我が軍は必ずや勝利を収めます」
「そうか・・・じゃあそれで行こう」
「御意。では今日はもうお休み下さい。明日は戦ですぞ」
「解った・・・・・・オイフェ」
「はい」
 セリスは一礼して下がろうとするオイフェを呼び止めた。
「勝とう。そしてイザークの民を、いや帝国に苦しめられている民を救うんだ」
「は・・・はい!」
 オイフェは思わず敬礼した。左の拳を右肩につけるシアルフィ式の敬礼である。
「じゃあお休み。ゆっくり休もう」
 立ち去るセリスの後姿を見てオイフェはかっての主君と今の主君に思いをやった。
(シグルド様・・・・・・セリス様は今羽ばたきました。貴方様の様に)
 夕闇が落ちて来た。オイフェもその場を後にした。
 オイフェの予想通り翌日イザーク軍は全軍をもって峡谷を通った。それに対し解放軍は峡谷の出口で防衛線を張っていた。
 
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