ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜
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7部分:峡谷の戦いその三
峡谷の戦いその三
「エルサンダー!」
ホメロスの腕から大きな雷球が放たれイザーク兵の胸を直撃した。兵士は吹き飛ばされ地に伏した。
ラルフの片刃の大剣が唸る。一人を袈裟斬りしたと思うとすぐに別の一人を縦に両断した。
兵士の斧がホメロスを一閃した。だがそこに彼の姿はなかった。兵士が気付いた時詩人は彼のすぐ後ろにいた。至近でエルファイアーが放たれる。兵士は火達磨になり絶命した。
「見事な腕前だな」
「へっ、あんたもな」
二人は互いに声を掛けた。その周りには既に多くのイザーク兵が倒れていた。
「しかし数が多いねえ。もつかな」
「もたせるんだ」
「御名答」
二人はまた現われた敵兵に向かい合った。この二人ばかりでなく解放軍は一人一人の強さにおいてイザーク軍を圧倒しておりイザーク軍は峡谷を抜けられないでいた。
「まさかこれ程とはな・・・」
峡谷への入口付近で指揮を執るハロルド将軍は歯噛みした。
「それに戦術もいい。容易ならざる相手だな」
「シグルド公子の子だけはあります。敵ながら見事です」
幕僚の一人が思わず賞賛の言葉を漏らした。
「確かにな。だがこの兵力差は覆せぬ。攻撃の手を緩めるな、集中攻撃をかけよ!」
その時後方から砂塵が巻き起こった。
「リボーからの援軍か?」
「いえ、その様な話は聞いておりませんが。ヨハン王子かヨハルヴァ王子の軍ではないでしょうか」
砂塵は瞬く間に近付いて来る。その旗を見た時イザーク軍の将兵達の顔が驚愕と恐怖で凍りついた。
「シ、シアルフィ軍!」
「そんな馬鹿な、奴等はシレジアに行っている筈だぞ!」
オイフェを先頭に解放軍はイザーク軍へ突き進んで来る。思いもよらぬ敵襲にイザーク軍は混乱状態に陥った。
「オイフェ様、作戦は成功した様です、敵軍は混乱しておりますぞ!」
「よし、デルムッド、レスターは右、トリスタン、ディムナは左、フェルグスとジャンヌは私と共に中央だ、一気に敵を叩くぞ!」
「はっ!!」
オイフェの号令一下解放軍の将兵達が動いた。驚きのあまり動きすら止まったイザーク軍へ向けて斬り込んだ。
「死にたくない者は私の前にでるな!」
オイフェが手に持つ銀の剣が一閃される度にイザーク兵達が地に伏していく。馬上から繰り出される剣撃は白い輝きを次第に深紅のものとし血煙で戦場を染めていった。
フェルグスは鋼の大剣を振り回した。一振りで二三人の兵士が両断される。楯も鎧も通じず熱いナイフでバターを切る様に断ち切られていく。
ジャンヌは素早く剣撃を繰り出しながら杖で味方の傷を癒していく。
彼等の右でデルムッドが銀の剣で以って敵兵を斬り伏せる。素早く相手の急所を衝く的確な剣技である。
レスターはそれを援護して勇者の弓を放つ。狙いを外す事無く一人また一人と射ち倒されていく。
下から突き上げられた槍を切り払いトリスタンは鋼の剣を振り下ろした。兜ごと斬られた兵が己が鎧と地面を朱に染めながら倒れていく。
ディムナの弓がそのトリスタンをフォローしていく。鋼の矢に頭を、胸を射抜かれイザーク兵達が倒れる。
「ひるむな!数では負けてはいない!」
総崩れになった軍をハロルド将軍は必死に立て直そうとする。だが倒れていくのはイザーク軍の将兵ばかりであり解放軍の勢いは止まるところを知らない。
「将軍、峡谷の反乱軍も攻勢に転じました。我が軍は押されております!」
「次々に反乱軍に投降する者が出て来ております!」
報告はイザーク軍の不利を知らせるものばかりである。
「くっ・・・・・・」
戦局はイザーク軍にとって破滅的な状況であった。ハロルド将軍はガネーシャまでの撤退を考えた。その時だった。
「そこにいるのは敵将と見た!解放軍のレスター参る!」
言うが早いかレスターの弓が放たれる。矢はハロルドの心の臓を寸分違わず貫いた。
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