ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜
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50部分:雷帝その三
雷帝その三
「済まない。ところで最後に卿等に頼みたい事がある」
「はい」
「私に何かあった時はリンダを頼む」
「殿下、その様な・・・・・・」
「ライザ、そんな顔をするな。私は幼い頃からリンダを知っているし叔母上や叔父上にも可愛がって頂いたのだ。その恩もリンダへの愛情も変わる事は無い。あの娘にもしもの事があってはならないのだ。頼むぞ」
「解かりました」
諸将は席を立ち敬礼した。翌日イシュトーは六万の兵を率いてメルゲン峡谷へ向けて進軍を始めた。同時にイリオス率いる二万の軍がターラへ向けて出発した。
メルゲン峡谷の入口で解放軍十万とフリージ軍六万は遭遇した。解放軍がフリージ軍の姿を認めた時彼等は既に戦陣を整えていた。
フリージ軍は歩兵中心の編成だり主にサンダーマージ、弓兵等を前面に配している。イシュトーは戦局全体を見渡せるよう少し高い位置に本陣を置き解放軍を見据えている。
セリスは筒型の望遠鏡でフリージの陣を見た。全く隙が無い。
「流石だね。これは容易に攻められそうにないよ」
横に控えるオイフェに言った。
「はい、ですがここで我々が立ち往生してしまいますと・・・・・・」
「レンスターのリーフ皇子やターラが危ないね」
「はい。一刻も早くあの陣を破らねばなりません」
「何か策はあるの?」
「はい」
その問いにオイフェは頷いた。
「その策は一体どんなものなの?」
「それは・・・・・・」
数刻後解放軍は動いた。騎兵を中心にしてゆっくりと前進してきた。
「攻撃用意!」
前線で指揮を執るライザの右手が掲げられると魔道師が手を構え弓が引き絞られる。それに対し解放軍は進むのを止めた。
「威嚇でしょうか?」
本陣で参謀の一人がイシュトーに問うた。それに対しイシュトーは首を軽く左右に振った。
「違うな。シアルフィ軍は有力な飛兵部隊も持っているという。おそらくそれが来るだろう」
イシュトーの予想通り空からペガサスやドラゴンが現われた。かなりの高度を維持したままフリージ軍へ進んで来る。
「弓隊、対空射撃用意」
イシュトーは冷静に命令を下した。弓兵達は上へ向けて矢をつがえた。
飛兵達はフリージ軍の上空に達するとイシュトーの予想通り一度更に高く上昇し降下の用意を見せた。
「やはりな」
イシュトーがほくそ笑む。魔道部隊に前方の解放軍主力部隊への牽制を命じ歩兵部隊に魔道部隊と弓部隊への援護を命ずるとともに弓部隊に迎撃を命じた。
矢が引き絞られる。ペガサスやドラゴンが急降下する。矢が指から放たれた。その時だった。
解放軍の飛兵部隊から無数の火球が下へ向けて放たれた。同時にっペガサスもドラゴンも一斉に急上昇した。
火球は矢を燃やしながらフリージの将兵達を直撃した。直撃を受けた将兵達は熱と苦しみにのたうち回る。
解放軍の前面に魔道部隊が現われた。既に構えを取っている。
「撃て!」
レヴィンが手を下すと一斉に風の刃が襲い掛かる。フリージ側からも雷球が撃たれた。だが雷は風に相性が悪かった。雷は風に切り裂かれ、無数の剣がフリージ軍を撃った。
メルゲン峡谷は乾燥した荒野であった。その為火の回りが速く炎は瞬く間に燃え広がった。そこへ風が来た。炎は燎原の如く広まっていった。
「やったわね、アーサー」
フィーは炎の海と化した峡谷を見下ろしながら後ろに乗るアーサーに声を掛けた。
「ああ、まさか本当に上手くいくなんてな。やっぱりオイフェさんは凄いな」
アーサーは下を見下ろしながら満足気に応えた。下では炎と風に倒されたフリージ兵達が転がっている。ペガサスが再び上昇をはじめた。
「もう一回行くわよ」
フィーはにこりと笑いながら後ろのアーサーを見た。
「いいぜ」
アーサーもそれに応えた。
再び炎と風の斉射が行われた。炎は更に広がりフリージ軍の陣に隙が出来た。それを見逃すオイフェではなかった。
「今だ、全軍突撃せよ!」
凄まじいまでの衝撃がフリージ軍を襲った。一瞬両軍の動きが止まったかに見えた。二つの半月がぶつかり合った形のまま双方共止まった。しかしそれは一瞬だった。フリージ軍の半月は解放軍の半月に突き破られた。
「いかん!」
本陣で戦局を見ていたイシュトーはすぐさま馬に乗った。
「殿下、どちらへ?」
「前線へ行く、後の事は頼んだぞ!」
一人の将校の問いかけに素早く答えるとイシュトーはすぐさま坂を駆け降り前線へ向かった。
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