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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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51部分:雷帝その四


雷帝その四

「戦局はどうなっている?」
 イシュトーは馬を預け指揮官の一人に声を掛けた。司令官の突然の来訪に彼はいささか驚いたがすぐに落ち着き敬礼をし答えた。
「はっ、ただ今第一陣が突破され第二陣及び主力部隊も攻勢にさらされております」
「諸将は?」
「ライザ将軍とは連絡が取れませぬ。オルエン将軍は負傷しフレッド将軍も軽傷を負っています。
「そうか・・・。旗色は我が軍に不利なようだな」
「残念ながら・・・・・・」
 炎と風の中迫り来る解放軍を見てイシュトーの瞳が決した。
「全軍メルゲン城へ撤退する。これお以上の戦闘は無闇に被害を出すだけだ」
「解かりました。では後詰の指揮は私が・・・・・・」
 言いかけた指揮官の口を手で塞ぐとイシュトーは不敵に笑った。
「一人適任者がいるではないか」
 指揮官はそれが誰かすぐに解かった。眼でそれを拒絶する。それを見てイシュトーは首を横に振った。
「ライザは行方不明、オルエンとフレッドが負傷していては誰が指揮を執る?私しかおるまい」
 指揮官は視線を下へ落とした。こうなったら絶対に引かない主君の性格を良く知っていたからだ。
「全軍メルゲン城まで退却せよ!殿軍は私が務める!」
 イシュトーの号令一下フリージ軍は撤退を開始した。負傷した兵士、軽装の兵士から退却し、それを重装歩兵や魔道師が援護する。イシュトーの的確な指揮の下撤退は整然と行なわれフリージ軍は次々と戦線を離脱していく。解放軍は果敢に攻め立てるが魔道師達の斉射と重装歩兵達に阻まれ思うように進めない。
 撤退するフリージ軍の最後の部隊にイシュトーがいた。彼目指し二人の剣士が斬り込んで来た。ラクチェとスカサハである。
 スカサハはイシュトーの右斜め前に、ラクチェは左斜め前に剣を構え位置した。ジリジリと間合いを詰めてくる。
「見たところ名のある剣士達と見た。良ければ名を教えてくれ」
「イザーク王女アイラとソフィア候の子ホリンの子、スカサハ!」
「同じくラクチェ!」
 イシュトーの言葉に二人は即答した。
「そうか、卿等が解放軍の双子の剣士か。相手にとって不足は無い。我が名はイシュトー、フリージ王ブルームと王妃ヒルダの子、かかって参られよ」
「行くぞ」
「行くわよ」
 二人は同時に突進した。イシュトーは構えも取らず悠然と見ている。
「流星剣!」
 スカサハが銀の大剣を大きく振り被った。真一文字に振り下ろされる。イシュトーは横にかわした。二撃目が斜めに振り下ろされ三撃目は横に薙ぎ払い四撃目は袈裟斬りだった。どれも速さと威力を併せ持った強烈な一撃であった。
 しかしどれも紙一重でかわされた。五撃目を入れようとする。その時イシュトーの右手に緑の稲妻が宿った。
「トローン!」
 剣を突こうとしたスカサハへイシュトーは拳を突き出した。右手が雷球に包まれ緑の電光が光線となりスカサハを襲う。スカサハは咄嗟に高く跳躍し反転してかわす。
「月光剣!」
 ラクチェが勇者の剣を思い切り横に一閃させた。イシュト−は後ろに跳んだ。左手に赤い炎が燃え上がる。
「ボルガノン!」
 ラクチェの足下に炎を撃つ。危機を察したラクチェは横に跳んだ。彼女が今までいた場所で大爆発が起こる。
「まさか二人掛かりで倒せないなんて・・・・・・」
「何て奴なの・・・・・・」
 必殺の一撃を難無くかわされ逆に高位魔法を浴びせられた二人は呟く。額に汗が流れている。
「流石は解放軍きっての剣の使い手達だけのことはある。見事だ。だが私の相手をするにはまだ役不足だな」
 イシュトーは腕に雷と炎をたゆらせながら言った。
「最後まで闘いたいが生憎私は撤退しなければならない。それで失礼させてもらおう」
「悪いがもう一勝負願いたい」
「誰だ!?」
 声の主が歩いて来た。黒い神に濃紫の瞳を持つ男だった。シャナンである。
「シャナン様・・・・・・」
「如何に御前達でもまだこの男の相手は無理だ。私が行こう」
「解かりました」
 二人は退いた。シャナンとイシュトーは互いに向かい合った。 
「イザークのシャナン王子・・・・・・。お会い出来て光栄です」
 雷と炎を収めイシュトーは頭を垂れた。
 
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