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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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49部分:雷帝その二


雷帝その二

「主力部隊は私が直率する。リンダ」
「はい」
 茶の髪に緑の瞳の小柄な可愛らしい少女が答えた。薄い黄緑のスリットが入った膝までの服にタイツの様な白ズボンを身に着けている。先代のフリージ家当主レプトール公の二女であるエスニャとエバンス伯の子でありイシュトーとは従妹にあたる。まだ少女でありながらフリージ家の者に相応しい魔力の持ち主である。
「御前にはメルゲン城の護りを頼む」
 従兄の言葉にリンダは憤然とした。
「従兄様、何故私を前線に送って頂けないのです、私ももう子供ではありません、魔法だって・・・・・・」
 顔を見上げ抗議する従妹にイシュトーは優しく微笑んだ。
「確かに御前の魔力は私もよく知っている。しかし御前に万が一の事があったらどうする?亡くなられた叔父上、叔母上や御前の兄であるアミッドに私はどう申し開きをすれば良いのだ?」
「それは・・・・・・」
「解かっただろう。御前はもっと強くなれる。前線に立つのはそれからでいい」
「解かりました・・・・・・」
「よし、解かってくれたか。今日はもう遅い、早く休みなさい」
「はい」
 リンダはイシュトーに敬礼し部屋を後にした。その後ろ姿をイシュトーは優しい目で見ていたが)彼女が部屋を去ると一転して深刻な暗い顔で場の一同に対した。
「本当はリンダも本人の希望通り戦場へ送りたいのだ。彼女の力も頼りになるし今は少しでも有能な将が必要だ。しかしな・・・・・・」
「御母上ですね」
 アマルダが言葉を発した。
「そうだ。どうやらエバンスを狙ってリンダを亡き者にせんと陰で画策しているらしい。アミッドが姿を消したのも何か関係があるのだろう」 
「しかしヒルダ様は今ユリウス様のお招きでクロノスにおられます。まさかこのメルゲンまで・・・・・・」
 フレッドがまさか、という風に言った。
「いや、母上の恐ろしさは私が最も良く知っている。おそらくこのメルゲン城にも刺客が潜んでいるはずだ」
「刺客・・・・・・」
 オルエンが息を飲んだ。
「私は彼女の御両親にはよくしてもらった。それにやはり彼女が可愛い。むざむざ母上の餌食にはしたくない」
「イシュトー様・・・」
 ライザが深刻な顔の主を見やる。
「戦場だと暗殺だとは思われまい。戦死したと簡単に言えるからな」
「・・・・・・・・・」
 一同言葉を失った。その通りだった。戦場においては人の命なぞ塵芥に等しいのだから。
「私が出陣している間も母上からの刺客が彼女を狙っているだろう。アマルダ」
「はい」
「私が留守の間リンダの警護を頼む」
「解かりました」
 席を立ち敬礼する。
「ところでミレトスはどうなっている?」
 それに対しイリオスが報告する。
「全く解かりません。ユリウス皇子が帝国軍正規軍五万連れて進駐されヒルダ様をクロノス城主に任命されてからは全く・・・・・・。ペルルークの城の門は固く閉ざされそこからは誰の通行も許されません。果たしてミレトスでユリウス皇子は何を為されておられるのか・・・・・・・・・」
「ミレトスか・・・。『ミレトスの嘆き』の・・・・・・」
「殿下、まさかユリウス皇子は・・・・・・」
 オルエンが顔を蒼ざめさせた。
「滅多な事は口にするな。それにユリウス殿下は魔法戦士ファラの血を引く方、その様な事は為さらぬ。それに暗黒教団は先の聖戦で滅亡しているのだぞ」
「はっ、申し訳ありません」
「解かってくれればいい。しかし近頃の帝国の政策は・・・・・・。あれでは古のロプト帝国と変わらぬではないか。ヴェルトマー家も地に落ちたか・・・・・・」
「殿下・・・・・・」
 フレッドがたしなめた。
 
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