ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜
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249部分:壊れぬものその一
壊れぬものその一
壊れぬもの
「ねえ、イシュタルさんとファバルさんあの時どうやってああなったのかな?」
カリンはフリージ東のある酒屋で二人を見ながら隣にいるフェルグスに対して言った。
「そうだよなあ、俺達が見たのは最後の場面だけで途中は見ていないからなあ」
「あの時飲み過ぎたからねえ」
「じゃあ今回は食うの中心でいくか」
「ええ」
見れば当のイシュタとファバル以外は食べてばかりで遊んだり騒いだりしながらも二人を注視している。
そうとは知らず二人は料理を食べ酒を飲みながら談笑している。
酒が進む。何時しか二人の目がトロンとしてきた。
「いよいよね」
一同動きを止めた。二人から目を離さない。
「ファバルさん・・・・・・」
イシュタルは濡れた瞳と甘い声でファバルにしなだれかかる。一同固唾を飲む。
「姫さん・・・・・・」
ファバルもイシュタルから瞳を離さない。その細い首筋を抱く。
「さあ、どうなる!?」
次の二人の動きを見守る。次の瞬間予想外の出来事が起こった。
「眠い・・・・・・」
「俺も・・・・・・」
そのまま二人はドゥッ、と倒れ込んだ。そして抱き合ったまま寝入ってしまった。
「これが真相か・・・・・・」
「倒れ込んだ弾みだったのね・・・・・・」
一同それを見て肩を落とした。二人から目を離すと牛馬の如く飲みはじめた。後はいつもの通りである。
次の日一同は二人に対しイシュタルはファバルにしなだれかかりファバルは彼女を抱き締めて離さなかったと言った。当然作り話である。だが二人をそれを完全に信じ込んでしまった。ここから一組のカップルが誕生するとはこの時誰もわからなかった。
ーヴェルトマー城ー
フリージを発った解放軍は東へ向けて進軍を開始した。
バーハラのユリウスは不可思議としか思えない沈黙を守っていた。程無く解放軍は帝都バーハラを完全に包囲しそのうえで唯一残されたヴェルトマー解放へ軍の一部を向けた。
軍はセリス自ら率いていた。兵力は十万、オイフェ、シャナン、レヴィン等解放軍の中でもとりわけ腕の立つ者達が彼と共にヴェルトマーへ向かった。ここでも敵の迎撃は無く解放軍はヴェルトマー城に無血入城した。
市民達の心境は複雑であったが総じてセリス達を歓迎していた。解放軍は市民達の出迎えの中大通りを行進し宮城に到着した。
宮城内は赤い彩りであり装飾等は六公爵家の一つ、そして帝室として栄華を誇ったヴェルトマー家の居城とは思えぬ程質素であった。華美な生活をあまり好まなかった祖ファラ以来の伝統であろうか主であるアルヴィスの部屋も皇帝、いや公爵のものとは思えぬ程の簡素な机と椅子、赤い木綿のカーテン、普通のガラス窓、かろうじて天幕があるベッド、そして壁にヴェルトマーの炎の紋章と数点の絵が飾られているだけであった。
その絵は彼の父ヴィクトル公と母シギュン、そして幼いアルヴィスの三人が並んだもの、異母弟アゼルと自身が礼装で微笑みながら立っているもの、自身の妻であり母でもあったディアドラが幼い我が子達をその胸の中に抱いて座っているもの、その三つであった。
「・・・・・・・・・」
セリス達は三点の絵を見てシアルフィ城でセリスとの一騎打ちの末倒れたアルヴィスに思いをやった。
どれも彼が失ってしまったものだ。だが例え失ってしまったものでも忘れられない何時までも愛しいものもある。決して戻らぬものでも。
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