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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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250部分:壊れぬものその二


壊れぬものその二

 アルヴィスはどういう思いでこの絵を見ていたのであろうか。全てを失いムスペルムヘイムへと落ちていった彼もまたトラバント王と同じく人にも世にも、そして自分自身に対しても嘘をつき続けざるを得なかった哀しい人物だったのだろうか。
「行こう」
 運命に翻弄され歴史に玩ばれた彼のことに思いを馳せるといたたまれなくなる。セリスはオイフェ達に部屋を出るよう促した。
「はい」
 いたたまれないのはオイフェ達も同じであった。セリスに従い部屋を後にした。
 他にも客室や武器庫等多くの部屋があった。どの部屋も質素であり豪奢な装飾等は殆ど無かった。この世を暗黒としてしまっても決して己が贅に溺れていなかったのがわかる。
 最後に城主の間に辿り着いた。だがどうしても扉が開かない。
「よし、じゃあ僕が」
 セリスが扉に手をかけた。するとどういうわけか扉が自然に開いた。
「え!?」
 セリスは何か吸い込まれるような感じで部屋に引き込まれた。扉はセリスが部屋に入ると同時に締まりどうしても開かなくなった。
「閉まってしまった。どういうことなんだ!?」
 扉に手を触れながら首を傾げた。やはり開きそうにない。
 後ろから気配がした。セリスはその唯ならぬ妖気に身構えた。
 そこには彼女がいた。セリスが捜し求めていた彼女がいた。
「ユリア・・・・・・」
 彼女は紅の玉座を背にして立っている。
 セリスは彼女を見ても構えを解かなかった。何故ならその妖気は彼女から発せられていたからだ。
 瞳を見た。何やら赤と黒が混ざり合った奇妙な色だ。そしてマリオネットの様に生気が無い。
 表情も無い。虚ろで肌は蝋の様に白い。
 ユリアは左手を上から糸で人形の手を動かすような動作で動かした。その手の平に光が集まっていく。
「!」
 セリスは咄嗟に右に飛び退いた。ユリアの手から放たれた光球が彼がそれまでいた場所で炸裂した。
「やはりよけおったか。バルドの直系だけはあるわ」
 玉座からしわがれた、それでいて獣めいた声がした。そして玉座に何やら人の影が現われてきた。
「まあそうでなくては楽しめぬ。我等百年の恨み今こそ晴らしてくれるわ」
 胸の悪くなるような色の法衣を着た醜悪な老人が姿を現わした。セリスは彼が何者であるかすぐに察した。
「暗黒教団のマンフロイ大司教。御前がユリアを・・・・・・」
「その通り。我が主ユリウス様にとってヘイムの血を受け継ぐこの娘は禍となる。わしが心ゆくなで楽しませてもらった後始末してくれるわ。この娘の母親と同じようにな」
「何っ、母上を!?」
 セリスはその言葉に顔色を変えた。
「おお、そうであったか。貴様もあの女の子であったな。よし、冥土の土産に教えてやろう」
 マンフロイは酷薄な笑みを浮かべて言った。
「あの女はこのわしがアグストリアよりあの愚か者と結ばせる為に連れて行ったのよ。全ては我が神をこの世に再び降臨させる為にな」
 言葉を続けた。
 
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