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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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205部分:魔皇子その三


魔皇子その三

「クソッ、またか」
 トルードは落ちて来るシャングリラをかわしその上から飛び掛かって来た野猿を切り捨てて言った。
「全く連中も性質が悪いな。こんだけ罠と番人がいるなんてどっかの王様の墓位だぜ」
 リフィスが熊の心臓と喉に短剣を投げ付け仕留めて言った。
「王家の墓か・・・・・・。だがここは財宝なぞ無いぞ」
「いや、とびきりのが一つあるぜ」
 リフィスはトルードに笑って言った。
「何だ、それは」
 トルードは思わず尋ねた。
「魔王の首さ。少しずつだが見えてきたぜ」
「成程な」
 トルードはその言葉に対して頷いた。
 リフィスの言葉通り解放軍は少しずつではあるが確実に城を占拠していった。部屋を一つ一つ慎重に攻略し襲い来る暗黒教団や野獣達を各個に倒し一歩一歩確実に進んでいった。
 上へ昇る階段への入口でブリアンは五匹の虎に囲まれていた。前に二頭、左右に一頭ずつ、そして後ろに一頭いる。いずれも優に人の二倍以上はある巨大な虎である。
「おいブリアンさん、幾ら何でも分が悪いぜ」
 目の前の二匹の黒豹と睨み合いながらすぐ隣の部屋の前でホメロスが言った。
「ホメロス殿、心配御無用。貴殿はその豹に専念して下され」
 右手のスワンチカが光った。その言葉にホメロスも流石に面食らったがすぐに目の前の豹に目を向けた。
(まあいざとなったら助けてやりゃあいいな。それで美味い酒でもねだろう)
 五匹の虎が一斉に襲い掛かって来た。ブリアンはまずスワンチカを投げた。右の虎の頭が吹き飛ばされる。
 右足を真横に鉈の様に振り下ろす。虎の頭が砕け散り血と脳漿の中に崩れ落ちる。
 返す刀で左拳を正拳突きで出す。急所である眉間に完全に入った。即死だった。
 後ろから来る虎を左に跳びかわした。そのまま身体を右に戻しその右手を虎の首に巻き付けた。ゴキッ、と首の骨が折れる鈍い音がした。
 同時に左拳を最後の虎の顎へ振り上げる。上に飛ばされた虎を戻って来たスワンチカが両断した。
「すげえ・・・・・・」
 豹達をエルウィンドの連射で一蹴したホメロスが振り向いた時に見たのは一瞬にしてその離れ技をやってのけたブリアンが最後にスワンチカを左手で掴む瞬間だった。五匹の虎はもう地に伏していた。
「酒貰い損ねたなあ・・・・・・」
 ブリアンはその言葉に振り向き言った。
「何か言われたか、ホメロス殿」
 攻城戦は二日が過ぎ三日目となった。解放軍は夜に迫り来る野獣や毒蛇に悩まされながらも遂に地上の全ての建物を制圧し地下の幾層にもなった宮殿の最深部まで辿り着いた。
「遂にここまで来たね」
「ああ。えらく長く感じたな」
 セリスとアレスは黒い鉄の扉を前にして思わず口に出した。
「この寒気すら感じる邪悪な気・・・・・・。間違い無くこの扉を抜けたらすぐのところにいるな」
 アレスが言った。
「イシュタルもな。この魔力は間違い無い」
 イシュトーが言った。他にはセティとコープルがいる。
「行こう、おそらくブルーム王やトラバント王よりも遥かに強力な相手だ。だが我々は負けるわけにはいかない。暗黒神を再びこのユグドラルに降臨させない為にも」
 一同頷いた。その決意は固い。
 扉を開けた。極彩色の部屋の左右にプレートメイルが数体ずつ並べられている。どれも奇妙な装飾が施され剣や槍を持っている。
 五人が部屋の真ん中に来ると鎧が一斉に動き出した。ガシャガシャと音を立て五人に襲い掛かる。
「ここは任せろ!」
 アレス、セティ、コープルが左右に跳んだ。鎧を押し留め防戦する。
「御免!」
 セリスとイシュトーは全速で前の扉へ駆けた。そして思いきりこじ開け中に飛び込んだ。
「ここは・・・・・・」
 そこは真っ暗闇であった。扉からの光が差す場所以外何も見えない。
 二人は前に出た。すると後ろの扉が突然閉まった。
「むっ!?」
 左右にボッ、ボッ、ボッ、と燭台に火が灯った。
「ようこそセリス皇子、いや兄上と呼んだほうがいいかな」
 漆黒に塗られた部屋の奥の黒い禍々しい形をした翡翠の玉座にその少年はいた。少年の声と同時に何かしら獣めいた声で話している。
 
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