| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

206部分:魔皇子その四


魔皇子その四

「ユリウス皇子・・・・・・!」
 イシュトーが少年の名を呼んだ。ユリウスはそれを聞いておかしそうに笑った。
 その左脇には銀髪の少女が立っていた。イシュトーが最も良く知る少女であった。
「イシュタル、やはりここだったか・・・・・・」
 妹は兄の言葉に顔を背けた。決して見ようとはしない。
「クッ・・・・・・」
 ユリウスは二人を見ながら邪悪な笑みを浮かべた。そして玉座からゆっくりと立ち上がった。
「二人共よくここまで来てくれた。生憎何も無く申し訳ないが我等二人誠心誠意もてなさせてもらう」
 そう言うと一歩ずつ二人に歩み寄る。
「バルドの騎士よ。百年前の恨み今ここで晴らさせてもらう」
 目を閉じた。再び見開かれた時あの竜の瞳となっていた。
「受けてみよ、我が暗黒の力」
 右手をスッと挙げる。全身を凍り付かんばかりの悪寒が走る。本能的に死の危険を直感したセリスは思わず右へ跳んだ。
 それまでセリスがいた場所に闇の柱が生じた。その黒い光にも似た闇からはトゥールハンマーやフォルセティよりも遥かに強大でかつ世界を覆わんばかりの邪悪な力が感じられた。
「流石だな、我が力をかわし得たのは汝がはじめてだ」
 長く伸びた紅い爪を舐めながら余裕すら感じさせる声で言った。
「セリス皇子・・・・・・」
 一人では危険だ、そう察したイシュトーは加勢しようと剣を抜いた。だが目の前で炸裂した雷球がそれを阻んだ。
「貴方の相手は私です、お兄様」
 声の主は決まっていた。イシュタルが撃ち終えた姿勢のままで上段の玉座の前に立っていた。
「やはり闘うというのか」
 それには答えずゆっくりと階段を降り兄の前に来た。そして言った。
「我が主君の為に」
 そう言うと雷を右手に宿らせた。バチバチと音がして周りを淡い緑で照らす。
「そうか・・・・・・」
 妹の眼と顔を見て兄も覚悟を決めた。剣に雷が宿る。
「ならば私も我が理想と友の為に・・・・・・。イシュタル、御前を倒す!」
 雷と雷が激しく撃ち合った。飛び散る雷が二人の周りを緑に照らす。
 セリスが剣撃をユリウスに撃ち込む。ユリウスの左肩に吸い込まれる様に入った。かに見えた。剣は何かしらの力で
弾き返された。
「なっ!?」
 ユリウスは笑った。人の笑いではなかった。食物連鎖において上位の生物が下位の生物に対する様な、いや強いて言うならば神、それも邪な性質のものが無力な人間を玩ぶ時の様な見る方にとっては嫌な笑みだった。
「無駄だ、バルドよ。その剣では私に傷を付ける事は適わぬ」
「くっ・・・・・・」
「私の力は知っているだろう。ならば大人しく我が力の前に屈するがいい」
「誰がっ!」
 二人の半身を緑の光が照らし出す。その隣ではイシュトーとイシュタルが激しい死闘を演じていた。
「ハァッ!」
 イシュトーが雷を剣に込めて斬り掛かる。イシュタルは左手の甲に雷の盾を作りそれで受け止める。そしてその盾をイシュトーに投げ付ける。イシュトーはそれを屈んでかわす。
 魔力においてはイシュタルが圧倒していた。だがイシュトーは剣をからめた接近戦に持ち込み互角の戦いを演じていた。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧