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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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204部分:魔皇子その二


魔皇子その二

「あの子供達は私の糧となるのだ。それはわかるだろう?」
「・・・・・・はい」
「やはり晴れないな。・・・・・・そうだ、気晴らしに一つゲームをしよう」
「ゲーム?」
 ユリウスはそれを聞いて笑った。
「そうだ。もうすぐミレトス城に解放軍の者達がやって来る。あの歴戦の強者達がな」
「はい」
 喉がゴクリ、と鳴った。その中にはイシュタルがよく知る者もいる。彼等がどのような人物かも知っている。
「奴等の主立った将達のうち一人を裂きに倒した方が勝ちとする。賭けるのはこの青水晶だ。どうだ?」
 懐からその水晶を取り出した。驚く程大きく透き通っている。
「はい、戦いでしたら異存はありません。必ずやその水晶を私のものにしてみせましょう」
 顔からもやが消えた。ユリウスもそれを見て子供の様な笑みを浮かべた。
「ハハハ、そう上手くはいかないぞ」
 三日後解放軍はミレトス城を完全に取り囲んでいた。その包囲網は十重二十重であり猫の子一匹通れない状況であった。
 セリスは本陣でオイフェ、シャナン、レヴィン等と共にいた。城の上空から目を離さない。
「あの暗雲・・・・・・。間違い無くこの城にいるね」
 ドス黒い雲が厚く渦を巻いている。城からも何かしら不気味な気が感じられる。
「それだけではありません。他に感じられるこの激しい魔力・・・・・・。もう一人恐るべき強力な術者がいます」
 オイフェの額から脂汗が滲んでいる。
「おそらくイシュタル王女・・・・・・。厄介な相手だな」
 シャナンは呟く様に言った。
「アルスター、コノートでの恐ろしさは皆骨身に染みているだろう。だが我々もあの時の我々ではない。そして・・・・・・。捕らわれている子供達を助け出す為にも退くわけにはいかない。だろう?セリス」
「うん」
 セリスはシャナンの言葉に頷いた。そして言った。
「僕達は退かない。暗黒神をこの世に再び降臨させない為にも。行こう皆、ミレトスを陥としユリウス皇子の野望を食い止めるんだ!」
 この言葉が角笛となった。解放軍は一斉に攻めかかった。
 ミレトス城は市街が無い。高く厚い城壁に高い城と多くの矢倉や塔が囲まれている。言わば要塞である。
 本来は美しさで知られる城である。しかしユリウスや暗黒教団により醜く複雑怪奇な造りに変えられ『魔窟』とさえ呼ばれるようになった。
 極彩色に塗られた内部、不可思議な装飾、無数の蛇が絡まったかの如き廊下、多くの部屋・・・・・・。それは巨大な迷宮であった。
 また部屋の一つ一つに暗黒教団の者達は罠を仕掛けていた。部屋に入ると矢が飛び出し槍が突き出斧が襲い掛かる。深く巨大な落とし穴の中は剣が連なっていた。解放軍の進撃は遅々として進まなかった。
 そこは暗黒教団の者達がゲリラ的に奇襲を仕掛けて来る。扉の陰から、シャングリラの上から、テーブルの下から、獣の様に潜み襲い掛かる暗黒教団の司祭や剣士達は攻城戦に慣れている筈の解放軍の歴戦の勇者達を大いに苦しめた。
 それだけではなかった。ユリウスは解放軍が攻めて来るにあたり城の地下に飼っていた多くの獣達を解き放っていたのだ。
 獅子が、虎が、豹が、熊が、狼が、大蛇が、鰐が、そして当初より城中を徘徊していた毒蛇や毒蜥蜴、狂犬、蠍、毒蜘蛛等が罠や暗黒教団と共に解放軍を待ち伏せて襲い掛かって来る。部屋を一つ、廊下を数歩確保するだけでも決死の戦いとなった。
 
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