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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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17部分:二人の王子その二


二人の王子その二

ーイザーク・ヨハン軍陣地ー
「殿下、リボーから反乱軍を討てとの伝令が来ておりますが」
 L字陣の下の部分であるヨハン軍本陣でロナンが主に報告する。
「ううむ・・・・・・」
 ヨハンが呻く様な声を出した。
「如何致します?まだ動かないでおきますか?」
「うむ。もう二三日待とう。それで何も無かったら一応攻撃しよう」
「解かりました」
「ラクチェ・・・・・・」
 解放軍の方を見てヨハンは愛しい者の名を呟いた。その時解放軍の方から話し合いを求める白旗を掲げた一騎の使者が現われた。 
「誰だ!?」
 オーシンとハルヴァンが迎えに出た。やがて二人は酷く慌てた様子で陣に戻って来た。
「一体どうしたというのだ?」
 凄まじい勢いでヨハンの方へ駆け込んで来た二人を見て彼は不可解そうに尋ねた。
「反乱軍からのし、し、し、使者ですが・・・・・・」
 いつも冷静なハルヴァンさえもが完全に取り乱している。
「使者が!?」
 ヨハンは更に突っ込んだ。
「デルムッドと・・・・・・」
 オーシンも酸欠の川魚の様に口をパクパクさせている。
「デルムッドと・・・・・・?」
 完璧なタイミングでハルヴァンとオーシンの声が合った。
「ラクチェです!」
「ラクチェ!!」
 その名を聞くや否やヨハンは喜び勇んで白旗の方へ駆けて行った。その後をロナン、そして肩で息を切らしながらもオーシンとハルヴァンが必死に追いかけて行く。
「ラクチェーーーッ!」
 両手を思い切り広げてヨハンはラクチェへ突っ込んで来る。それを見てデルムッドは引いたが当のラクチェは整った眉間に皺を寄せ苦虫を噛み潰した顔で見ている。
「ああ、遂にこの時が・・・・・・」
 抱き締めようとしたその瞬間ラクチェはヨハンの顔を右手の平で思い切り押し止めた。
「えーーーーい、うっとうしい」
「ふふふ、つれないな。だがそんな所も私は好きだ」
 俯き目を閉じ右手でヨハンを制したまま左の人差し指を額に当て眉をひくひくさせた後ラクチェは口を開いた。
「絶対に来たくはなかったけれど。・・・・・・ヨハン」
「何だい?我が愛しき人よ」
 腰の剣に手を掛けそうになるが思い止まり言葉を続ける。
「セリス様からお誘いよ。解放軍に入って一緒に戦わないかって」
「え!?」
「どうすんの?あんたもお父さん裏切る訳になるし心苦しいだろうから無理強いはしないわよ」
「・・・・・・そんな事は決まっている」
 ヨハンはラクチェを見て微笑んだ。それを見てラクチェの全身に悪寒が走った。
(これはやっぱり・・・・・・)
 ヨハンが今から最も危惧している事を言うのだと直感した。
「皆」
 ヨハンは自分の軍の方を向いた。そしてラクチェが最も怖れていた言葉を発した。
「今より我が軍はセリス公子の軍と合流する。そして帝国の圧政に苦しむ民衆の為、正義の為に戦う!異存は無いな!」
 ヨハンの軍からオオーーーーッと賛同の雄叫びが沸き起こる。その雄叫びの中ラクチェはがっくりと肩を落とした。しかしヨハンはその両肩を強く抱き締めた。
「ラクチェ、私達はこれでいつも一緒だ。もう離さないぞ!」
 満面に笑みを浮かべるヨハンであった。

 ーソファラ・ヨハルヴァ軍陣地ー
 ラクチェとヨハンが陣で話していた全く同じ時ラドネイとヨハルヴァも会っていた。
「来てくれたんだな、嬉しいぜラドネイ」
 天幕の入口で立ちながら話をしているヨハルヴァの顔からは笑みがこぼれそうだ。
「ヨハルヴァ、セリス様から伝言よ」
 いかにも嬉しそうなヨハルヴァに対しラドネイは腕を組んでそっぽを向きつっけんどんに話す。
「解放軍に入らないかって。まあ強制はしないわよ。あたしは別に戦ってもいいんだし。それにあたしは・・・・・・んっ!?」
 ラドネイの口をヨハルヴァは自分の手で塞いだ。
「むぐっ!?(な、何すんのよ!)」
「その先を言う必要は無えぜ」
 ヨハルヴァは小さく首を横に振り言葉を続ける。
「んっ、んんーーーーっ!(離しなさいよ、ちょっと!)」
 必死に逃げようとするが叶わない。
「野郎共!」
 ラドネイを押さえながら自分の軍に大声で言う。
「俺達は今から解放軍だ!理屈はねえ!いいな!!」
「おおーーーーーーーーーっ!」
「むぐぅっ、んっ、んむーーーーっ!(ちょちょっとあんた達、あたしの言う事最後まで聞きなさいよ!)」
「ラドネイ、俺は御前の為に戦うぜ!」
「はむう、あうーーーーっ!(ふ、ふざけないでよ、何であたしがあんたなんかと!)」
「片時だって離れるもんか!」
「んーーーーっ!!(嫌あーーーーっ!!)」
 ヨハルヴァに抱き締められラドネイは何回も高く振り回されていた。
 
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