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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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16部分:二人の王子その一


二人の王子その一

 フィー、アーサー、リフィス達が山賊達を成敗しそれぞれ解放軍へ足を進めていた頃解放軍はガネーシャ南でイザークのヨハン、ソファラのヨハルヴァの軍双方と対峙していた。軍は解放軍一万五千、両王子の軍二万と戦力的には解放軍不利であったがどういう訳か両王子は兵を全く進めようとはせず双方睨み合いの形となっていた。
「何か妙な事になってるね」
 天幕の中に置かれた作戦会議用の机を前にセリスは言った。机には地図が広げられ解放軍とヨハン、ヨハルヴァの軍それぞれを表わす駒が置かれていた。
「もうこの状態になって三日になるというのにヨハン王子もヨハルヴァ王子も守りを固めるだけで全く動かない。一体どういう事なんだ」
 訝しげに地図を見るセリスを見てスカサハとロドルバンが思わず吹き出した。
「セリス様、ひょっとして御存知ないんですか?」
「えっ、何を?」
 スカサハの言葉にセリスはきょとんとした。ロドルバンが真相を打ち明けた。
「ヨハンはラクチェに、ヨハルヴァはラドネイにそれぞれベタ惚れなんですよ。ですからあいつ等軍を動かさないんですよ」
「えっ、そうなの!?」
「ち、違います違います」
「そうですよ、何で私があんなガサツな奴を・・・・・・」
 ラクチェとラドネイが顔を真っ赤にして必死に真実を覆い隠そうとする。それをスカサハが剥ぎ取った。
「あいつ等そんな訳で俺達と戦いたくないんですよ。むしろラクチェやラドネイの側にいられるから解放軍に入りたがっている位でしょうね」
「そうか・・・。あの二人はダナン王の暴政にも終始反対していたし悪い人間じゃない。それに腕も立つ。是非解放軍に入れたいな。どうしようか」
「使者を送れば宜しいかと」
 オイフェが献策した。
「よし、そうしよう。その使者は・・・・・・」
「適役が二人いるじゃないですか」
 レスターとディムナが悪戯っぽく片目をつむって適役の二人を親指で指差した。指された二人の顔にまた火が点いた。
「よし、じゃあ行ってくれ二人共。デルムッド、トリスタン、馬で送ってくれ」
「了解致しました」
 了解していないのが二人いた。
「ちょちょっとセリス様それだけは・・・・・・」
「そうです、私はどっちかというとオイフェさんやホメロスさんみたいな人がよろしいかと・・・・・・」
 二人がわたわたと慌てふためいて顔を真っ赤にして懸命に断ろうとする。他の者はそれを見てクスクスと笑っているが当の本人達は必死である。他に笑っていないのは骨の髄まで騎士道精神が入った『堅物の中の堅物』オイフェとその愛弟子でそういう事には疎いセリスだけである。そのセリスが二人に知らず知らずに引導を渡した。
「頼む。これには解放軍全体の生死が関わっているんだ。二人共是非行ってくれ」
「・・・・・・解かりました」
 青菜に塩を振りかけたようにラクチェとラドネイはうなだれデルムッドとトリスタンに連れられて天幕を出た。まだ周りが笑い転げているのを全く理解出来ていないセリスであった。きょとんとし、何故皆こんなに笑っているのか、とオイフェに目で問うたがオイフェも解かりません、と首を横に振り腕を組み首を傾げるばかりであった。
 
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