ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜
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15部分:天馬と魔道師と盗賊とその六
天馬と魔道師と盗賊とその六
「どうやら本気で俺に逆らうつもりらしいな」
中央の男が剣を担ぎ眉をやや歪めて怒気を少し含めて言う。
「じゃあ仕方無え、死んでもらうぜ」
男が山賊達へ突っ込むと左右の二人もそれに続いた。
三人はそれぞれ形は違うが見事な剣技である。中央の男は素早い動きで大きめの剣を器用に振り相手の死角に潜り込み急所を突く。ややトリッキーな剣術である。左の少女はまだ未熟さが残りながらも一本気な剣であり一人また一人と確実に倒していく。
特に凄いのが右の男である。水が流れる様に無駄の無い動きで敵の攻撃をかわし流星の如き速さで剣を一閃させる。十人程いた山賊達はたちまち一人残らず斬り伏せられた。
「へっ、大人しく俺に従っていりゃあ死なずに済んだのにな。ん?」
中央の男が上にいたフィー達に気付いた。
「おーーいそこの姉ちゃん達降りて来な」
四騎は広場に降り天馬から降りた。
「さてと、御前さん達は何者だい」
やや軽い口調で中央の男が問うた。
「すいません、覗き見るようなつもりじゃなかったんです」
フェミナが申し訳無さそうに言う。それに対し男は肩をすくめた。
「おいおい、別に殺そうとか金巻上げようとかいうつもりじゃないんだ。見た所あんた達はペガサスナイトに魔道師、後そこの白い服の兄ちゃんはプリーストってとこか。こんな田舎に何しに来たのか聞きたいのよ」
「えーーーと・・・・・・」
「えーーーと?」
アズベルが下を俯きながら言いかけようとする。男がそれにつられる。
「僕達セリス様の解放軍に入る為にここへ来たんです」
「解放軍?ティルナノグの?」
「はい」
「へえ・・・・・・」
男が何か意地悪そうな笑いを浮かべた。
「奇遇だねえ、俺達と同じだ」
「えっ!?」
八人が目を丸くした。
「まずは名乗ろうか。俺はリフイス。元はイザーク軍にいたが嫌気がさして辞めてたまたま出会ったこのシヴァと一緒にイザーク軍相手に盗賊をやっていた」
右の男を親指で指しながらリフィスは話を続ける。
「で何年かやってるうちに子分も増えて俺はそいつ等のボスになった。今村を襲った連中がその一部だ。こいつ等俺達が留守にしている間に村を襲ったんで斬ってやったんだ。見たところあんた等にもやられたらしいな」
血糊の着いた槍や剣を一瞥して更に話を進めた。
「この前俺とシヴァは船でレンスターに渡ってフリージ相手にレジスタンスをやっているエーヴェルって人に会いに行った。この人の事は知っているかな」
「ええ、。『フィアナの女神』って」
ミーシャが答えた。
「なら話が早い。俺もシヴァもあの人にはフリージ軍相手に仕事する時結構世話になっててな。仕事ついでに礼を言いに行ったんだ。そこにこの人がいた」
後ろにいた女性を指差した。
「サフィっていうターラのプリーストさんだ。何でもその街を治めてるリノアンって人がフリージの支配から抜け出したいらしくてその人の頼みで街を救けてくれる勢力を探しているらしい。それでエーヴェルさんが言うにはティルナノグのセリス公子が良いらしくてそこへ行く事になった」
井戸の水を飲みリフィスは続ける。
「けど女の人一人じゃ危ないだろ。それに俺はこの人のけなげさに打たれた。たすけてやろうと思ったのよ。一緒に解放軍に行こうと決心したのさ。なあシヴァ」
「うむ」
シヴァは無表情で頷く。
「そして俺は波が荒くなる前にレンスターを発ってイザークへ行こうとしたらエーヴェルさんに呼び止められた。娘も連れて行ってくれってな。それがこの娘マリータだ」
左の少女を指差した。
「何でも子供の頃奴隷商人に売られそうになっていたのをエーヴェルさんが助けて養子にしたらしい。解放軍に一緒に連れて行って欲しいってな。俺は断った。世話になっているエーヴェルさんの娘さんにもしもの事があっちゃいけねえからな。けどエーヴェルさんのたっての頼みでマリータを連れて行く事にした。それで大急ぎでイザークへ帰ってたら今倒れてるこいつ等が村に襲い掛かるとおだったんでやっつけたらそこにあんた達が来たってわけだ」
「へえ、そうだったの」
「そういう事だ」
フィーは言葉を返した。
「であんた達はどうする?俺達は残った子分達を集めてそれから行くが」
「私達はすぐに行くつもりですが」
ミーシャが応えた。
「そうか、解放軍は今ガネーシャにいるからな。そっちへ向かえよ」
「有り難うございます」
アズベルが礼を言った。
「じゃあ元気でな。解放軍でまた会おう」
ガネーシャの方へ飛んで行く一行にリフィス達は手を振った。一行もそれに返した。
村が山に隠れ見えなくなった頃フェミナがフィーに話し掛けた。
「ねえ、あのリフィスって人の話だけど・・・・・・」
「何?」
「絶対嘘は入ってるわよ」
「サフィさん見る眼違ってたじゃない。多分あの人の事好きなのよ」
鋭い。
「あの人の側にずっといたくて解放軍に入るんだと思うな」
「ふうん、けどいんじゃない?」
フィーは素っ気無く言った。
「根は悪い人じゃないみたいだしね。それに戦力になるんだったら問題無いわよ」
「うーーん、それもそうね」
「行きましょう」
「ええ」
一行は翼の速度を速めた。その下には緑の山々と碧い湖や河が広がっていた。
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