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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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156部分:梟雄と呼ばれた男その三


梟雄と呼ばれた男その三

 その陣は異様であった。中心に本陣が置かれ、そこから無数の触手の様に細長い陣が曲線状に生え左回転でゆっくりと前進して来る。その姿はさながら台風である。
「オイフェ、あの陣は何と呼ばれているんだい?」
「竜巻陣です」
 オイフェは主君の問いに対し敵陣を驚愕の目で見ながら答えた。
「竜巻陣!?」
「はい。かって竜騎士ダインがリューベックの戦いの時に用いたと言われる伝説の陣であります。本陣を中心に次々と新手を繰り出し敵の戦力を次々と削り取っていく必殺の陣です。ダインはこの陣により圧倒的な戦力を誇るリューベックの暗黒教団を破りました。ですがあまりにも布陣と統率が困難である為それ以降は使う者もなく廃れてしまったのですが」
「それだけの陣を敷き、尚且つ統率出来るのは・・・・・・」
「間違いありません。トラバント王自ら来ております」
 竜巻は不気味な唸り声をあげながら解放軍のほうへ接近する。弓兵隊が前に出た。
「触手の先端を狙え!」
 アサエロが命令を下すと解放軍の弓兵隊は迫り来る竜巻の先端を向けて一斉に矢を放った。
 無数の屋が竜騎士達に襲い掛かる。解放軍の弓兵達は勝利を確信した。その時だった。
 触手の先頭にいた騎士が手にしていた槍を縦横無尽に振り回し矢を全て叩き落としてしまったのだ。
 解放軍の騎士達はその騎士を見て息を呑んだ。彼こそ大陸全土にその悪名を馳せたトラバント王その人だったのだ。
「なっ、王自ら先陣に・・・・・・!」
「ならばっ・・・・・・魔法よっ!」
 ミランダが手を振り下ろし部下達に一斉に魔法を放たたせた。
 無数の鎌ィ足がトラバント王に襲い掛かる。だが王はそれに対し身動ぎ一つしない。
「甘いわぁっ!」
 王が眼をカッと見開いた。右手に持つ槍を左に大きく振り被った。
「はあああああああっ!」
 凄まじい気合と共に槍を一閃させた。すると衝撃波が生じ鎌ィ足を全て掻き消した。
「シアルフィの小童共、わしがトラバントだ!わしの槍の前に倒れたい者は我が前に出て来るがいい!」
 矢と魔法の二段攻撃を撃ち消され慄然とする解放軍に対しトラキア軍では喚声が沸き起こった。皆口々に王を讃える。
「あれがトラバント王・・・・・・」
「流石に恐るべき強さですな」
 セリスとオイフェも思わず絶句した。その中フィンが出て来た。
「トラバント!今こそ我が主君の無念晴らしてくれる!」
 槍の穂先をトラバント王へ突き付ける。王は上からフィンを見下ろしせせら笑っている。
「ほう、貴様か。シアルフィ軍でまだ生き恥を曝しているとは聞いていたが。まあ良い。それも今日で終わりだ」
「言うな!今日こそ貴様に天の裁きを受けさせてやる!」
 両者が動こうとしたその時であった。フィンの後ろから声がした。
「フィン待ってくれ!ここは僕に任せてくれ!」
 声の主はリーフだった。ゆっくりとフィンの方へ馬を進める。
「リーフ様・・・・・・」
「・・・・・・頼む、この男だけはどうしても僕の手で倒したいんだ」
 ジッと強い眼差しでフィンを見る。彼は主の強い決意を悟り頷いた。
「・・・・・・わかりました。ここはリーフ様にお任せします」
「・・・・・・有り難う」
 フィンが後ろへ退いた。後にはリーフとトラバント王が残された。
 フゥッと一陣の風が吹き抜けた。両者は互いに睨み合ったまま対峙していた。
「トラバント、やっと巡り会えた・・・・・・。私はこの日が来る事をどれだけ待ち望んだことか・・・・・・」
 リーフは半ば歓喜とも聞こえる言葉を漏らした。
「フン、誰かと思えばキュアンの小倅か」
 対するトラバント王は至って沈着かつ不遜である。
「ブルームも間抜けな奴よ。さっさと殺してしまえばよいものを」
 傲然と胸を張りリーフを見下ろしながら言葉を発する。神をも恐れぬ、とまで言われたトラバント王ならではである。しかしその言葉の響きは何処か空虚で乾いていた。
「貴様に騙し討ちにされた我が父と母、貴様の奸計により殺された多くの者、そしてレンスター王家の無念、今ここで晴らしてやる!」
「ぬかせ、ヒヨッ子があっ!」
 トラバント王はそう言うと槍をたて続けに振り回した。先程の衝撃波が凄まじい唸り声を挙げリーフに対し波状的に襲い掛かる。
 
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