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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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155部分:梟雄と呼ばれた男その二


梟雄と呼ばれた男その二

「まあ良い。それよりもミーズだ。今度はわしが行く。カパドキアのハンニバルにも伝えよ」
「はっ」
「トラキアの守りを頼む。そして・・・・・・」
 王は玉座の横に立てて置かれていた槍を手に取り玉座から降りアリオーンに歩み寄った。
「戦いの後これを御前に託そう」
「そ、それはグングニル!父上、まさか・・・・・・」
 アリオーンは驚愕した。だが王は静かなままである。
「これがどういう事か御前ならばわかるだろう。後の事は頼んだぞ」
「で、ですが父上・・・・・・」
 部屋を出ようとする父を必死に呼び止めようとする。しかしそれが適わぬことは彼自身がよくわかっていた。
「もう良い。わしは疲れたのだ。御前ならばシアルフィの者達も恨んではおらぬ。・・・・・・あのセリスとかいう小童、良い瞳をしておる。必ずやユグドラルを実り豊かな世にするだろう」
 トラバント王はそう言うと右手にグングニルを取り踵を返し部屋を後にしようとした。がふと足を止めた。
「一つだけ言い忘れていた。わしのようにはなるな。・・・・・・そして民を悲しませる事だけはするな」
「は・・・・・・はい」
 アリオーンはその言葉に敬礼で返した。王はそれを見ると満足そうな笑みを浮かべ部屋を後にした。扉を自らの手で開けた。ふとゲイボルグが目に入った。
「この槍も本来の場所に帰してやれ」
「えっ、まさか父上・・・・・・」
 もう一度、今度は目でアリオーンとグングニル、そしてアルテナを見た。自分の右の手に槍はあった。
(長らく世話になったな。だがこれで最後だ。これからはアリオーンの為に戦ってくれ)
 槍は何も語らない。だが槍に埋め込まれていた宝玉が静かな、それでいて物哀しい響きの光を発した。
「さらばだ」
 王はそう言うと扉を閉めた。後には悄然となったアリオーンと床に倒れたアルテナ、そしてノヴァの槍が残された。
「行くぞ!」
 王の号令一下竜騎士達が空へ舞い上がる。王は天へ上がると王宮の方を見た。
(民を、そしてアルテナを頼んだぞ)
 王は王宮から目を離し竜を駆った。そして二度と後ろを振り返らなかった。
「セリス様、遂に来ました!」
 レスターが伝令に来た。セリスは卓上に置かれたミーズ地図の前にいた。
「カパドキアからも来ます!敵将はハンニバルと思われます!」
 ディムナが天幕に入って来た。
「どうする、オイフェ?」
 セリスは傍らに控えるオイフェに問うた。オイフェは主君に一礼すると話しはじめた。
「これはミーズ城攻略の為の二正面作戦です。トラキアは兵力において劣る為我等を城と分断させ戦うつもりのようです。おそらく一方に我等が気を取られている間にもう一方でミーズ城を攻略するつもりなのでしょう」
 そう言うとカパドキア、レンスターに置かれていた駒をミーズ近辺に置き換えた。
「トラキアの国力から察しますにカパドキア方面から来るハンニバル将軍率いる軍は約八万、兵種は歩兵中心、そしてトラキア方面の竜騎士団は約五万、敵将はアリオーン王子、若しくはアルテナ王女と思われます」
 話を進める。
「我等は兵力において優位に立っておりますがトラキアは地の利があるうえに強兵、そして敵将も名を知られた者達です。油断はなりません」
 そう言うと自軍の駒を手に取った。
「そこでまず一方を一気に倒し返す刀でもう一方を倒すか各個撃破でいくべきと考えます。愚考致しますに機動力の高い竜騎士団から先に叩くべきと存じます」
 セリスはオイフェの話を黙って聞いていたが話が終わると大きく頷いた。
「よし、それでいこう」
「はっ!」
 諸将が敬礼した。そしてレヴィンと一万の兵をミーズ城防衛に向かわせその上でミーズ南に布陣した。
「竜騎士団、来ます!」
 天空に黒い嵐が巻き起こる。その陣を見た時解放軍の諸将は驚愕した。
「な、何だあの陣は!?」
 普段は冷静なブライトンまでもが声をあげた。
 
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