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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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157部分:梟雄と呼ばれた男その四


梟雄と呼ばれた男その四

「こんなもの!」
 リーフは右手に持つ槍を渾身の力を込めて一閃させた。一撃でトラバント王の出した衝撃波を全て打ち消した。
「ほお、伊達にノヴァの血を引くマスターナイトではないな。わしの衝撃波を一閃しただけで全て打ち消すとは」
 王は竜の背からもう一本槍を取り出した。それは今まで右手に持っていたものとは異なっていた。飛竜の槍と呼ばれる逸品である。
「行くぞっ!」
 今度はリーフの頭上目掛け急降下した。右から流星の如き突きを次々と繰り出す。
 リーフはその突きを槍で全て受け止めた。左から胴を両断せんと刃が迫る。リーフはそれを槍を咄嗟に左回転させ柄で刃の腹を撃ち弾き返した。
 今度はリーフが槍を突き出す。凄まじく闘気を発し槍が吠えながらトラバント王に襲い掛かる。王はそれを二本の槍で巧みに受け流す。
 三本の槍が火花を撒き散らし激しい金属音を飛ばしながらぶつかり合った。リーフはキッとトラバント王を見据えた。
「トラバント!今までの悪行の報いを受けよ!」
 槍を王の首筋に振るう。王はそれを左の槍で受けた。
「貴様如き小童にこの竜王トラバントを倒せると思うてかあっ!」
 グングニルを繰り出す。リーフはそれを身を捻ってかわした。
「何を戯言を!」
「これがその証よっ!」
 再び槍を繰り出す。リーフも攻撃をかけた。
 何時しか両軍はこの一騎打ちに見入っていた。双方共声も無く闘いを見守りジッと息を飲んでいる。
 解放軍の将達はどの者も前に出て粛然と死闘を見守っていた。とりわけフィンとナンナはまばたき一つしない。
 セリスもシャナンと共に闘いを見守っていた。傍らにはオイフェが控える。
 槍を繰り出し受け止めるトラバント王の後ろ姿が目に映る。それから顔を離す事無くセリスはシャナンに話し掛けた。
「シャナン」
「どうした」
 シャナンも二人から目を離さない。
「トラバント王は確かに奸計を用いて人を欺き傭兵として多くのものを奪いキュアン王子や叔母上だけでなく大勢の人達を傷付け殺してきた。皆が言う通り大陸の多くの者にとって憎むべき災厄だよ。・・・・・・けれど」
「けれど・・・・・・何だ?」
 トラバント王の背が映った。
「こうして見ると・・・・・・。トラバント王って哀しいね」
「・・・・・・・・・ああ」
 撃ち合いは数百合を越えようとしていた。トラバント王が勝負を決めようとグングニルを大きく振り被った。その時だった。
「今だっ!」
 リーフが渾身の力で槍を突き出した。
 槍はトラバント王の右脇に突き刺さった。それは血を滲ませながらめり込んでいく。
「ぐっ・・・・・・」
 王の口から鮮血が漏れた。それを見たリーフは勝利を確信した。だが甘かった。
「なめるなあっ!」
 トラバント王はそう言い放つと右手のグングニルを縦に一閃させた。リーフの左肩から血が流れ出る。
「つっ・・・・・・」
 思わず槍を手放した。王も左手の槍を投げ棄てると腹に突き刺さっている槍を掴んだ。
「ぬうううううううっ!」
 これには一同言葉を失った。傷を負った者とは思えぬ力で腹に深々と突き刺さっていた槍を引き抜いたのだ。赤黒い血がゴボゴボと溢れ出す。
「まだだ、まだ終わらぬ・・・・・・」
 グングニルを蔵に置き腰から剣を抜いた。その両眼に炎が宿ったように見えた。
 
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