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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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154部分:梟雄と呼ばれた男その一


梟雄と呼ばれた男その一

                   梟雄と呼ばれた男
ートラキア城ー
 天に届かんばかりの山々を抜けトラキア城に降り立ったアルテナは出迎える兵士達への返礼もそこそこに王宮の王の間へ駆けていった。
 王の間の扉の前に来た。扉の側に槍を置き扉を開けた。そこには父と兄がいた。
「またもや槍を交えず帰って来るとはどういうつもりだ!」
 王はアルテナが部屋に入るなり雷の如き怒声を浴びせかけた。だがアルテナはそれに怯むことなく敬礼し王に問うた。
「父上、お聞きしたい事がございます」
 その様子にトラバント王もアリオーンもただならぬものを感じたがそれを表に出さず受けた。
「弁明ではないようだな。良かろう、申してきよ」
「はっ」
 アルテナは言葉を続けた。
「ミーズで私はシアルフィ軍のある若い騎士と出会いました」
「ほう」
「その騎士はリーフと名乗りました。かってイード砂漠で父上が討たれたレンスターのキュアン王子とエスリン王女の子です」
 二人はアルテナが言う言葉を一言一言に至るまで聞いていた。彼女が自分に聞きたい事が何なのか、王ははっきりとわかっていた。だからこそ耳を離せなかった。
「彼の者は私に言いました。自分の姉は生きていると。・・・・・・その姉こそ私であると」
 アルテナはこれ以上話を続けてはいけない、そう感じていたが言葉を止める事は出来なかった。
「その証こそ父上が私に元服の時下さった槍、その槍こそ十二神器の一つレンスター王家に伝わる地槍ゲイボルグであると」
 部屋を重苦しくそれでいて張り詰めた空気が支配した。今まで続いてきた世界が壊れる、三人は感じていた。アルテナは遂に最後の話をした。時が壊れようとしていた。
「リーフ王子は私に言いました。父上はゲイボルグの力を己が野心に利用するために私を娘として育てたと。・・・・・・私の本当の父と母はレンスターのキュアン王子とエスリン王女であると。・・・・・・そして、そして二人をイードにおいてその手で殺したのは父上であると!」
 時が壊れた。
「嘘でございますね!?私は・・・・・・私は父上の娘ですよね!?}
 時を止めるのは時の女神達以外誰にも出来ない。その事をこの時この場でも最もよく知っていたのはトラバント王であった。何故ならば自らが作り出した偽りの時だったのだから。
「ふん、遂にこの時がきたか」
 王が言葉を発した。それはアルテナが望んでいた言葉ではなかった。アルテナの顔が割れた鏡のようになった。アリオーンが仮面のように動かなくなった顔を父のほうへ向けた。
「その通りだ。貴様の父と母をイードで騙し討ちにしたのはわしだ。そしてレイドリック等を使いレンスターを滅ぼしたのもわしだ。貴様は砂漠の毒蛇共の餌にするつもりであったがゲイボルグの力故今までわしの娘として育て都合の良い道具として利用してやったのだ」
 アルテナの顔が蒼白になり全身が震える。アリオーンの顔も蒼白になりアルテナを見ている。
「だがそれがどうしたというのだ?戦争なのだぞ。力こそ、強い者こそが正義なのだ。それに血は繋がっていなくともアルテナ、御前はわしの・・・・・・」
 だがそれ以上言えなかった。アルテナが腰から剣を抜き跳び掛かって来た。
「父上、・・・・・・いやトラバント!父上と母上の仇・・・・・・!」
 目から涙を流し顔を紅潮させて王へ襲い掛かろうとする。王はそれに対し何故か身動ぎ一つしようとしない。
「待てアルテナ、父上に剣を向ける事は私が許さん、どうしてもというのなら私が相手になる!」
 アリオーンがアルテナの前に立ち塞がった。アルテナの動きが止まった。
「あ、兄上・・・・・・」
「どうした、来ないのか?」
 アルテナが怯んだ。アリオーンはジリジリと近寄り剣を抜いた。
「ま、待って。私は兄上とは・・・・・・」
「問答無用、行くぞっ!」
「ああっ!」
 アルテナは一撃で床に伏した。血は流れていないが急所を打たれたらしく瞳孔が開いたままで倒れている。
「・・・・・・アリオーン、何も殺さずとも良かったのではないか」
 剣を鞘に収めるアリオーンに対しトラバント王は咎めるように言った。
「・・・・・・父上に剣を向ける者はたとえ誰であろうとも成敗する。それだけです」
 チラリと床に倒れているアルテナを一瞥して言った。
「・・・・・・そうか」
 王は何やら言いたげであったがあえて言わなかった。
 
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