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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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153部分:明かされた真実その二


明かされた真実その二

 ハンニバル、ディスラー、スカパフチーレの三人がそれぞれの持ち場に戻るとアルテナが竜騎士団を率いミーズへ向けて進軍を開始した。
 喚声の中一騎、また一騎と城を飛び立ち上空で編成を組む。空は竜騎士達で覆われ陽も見えない程であった。
 最後にアルテナが飛び立つ。城内から一際大きな喚声が湧き上がる。
 アルテナは飛びながら王宮のほうを見た。テラスに父王と兄がいた。
 二人に敬礼した。王と兄も敬礼で返した。
 アルテナはそれを見届けると上空で待機する自軍へ向かった。そして竜騎士団はアルテナの号令の下解放軍がいるミーズへと飛んでいった。
「・・・・・・・・・」
 トラバント王は竜騎士団と己が娘をいつものように無言のまま表情を変えず見ていた。そして山の頂の彼方に消えたのを見届けるとようやく口を開いた。
「風に髪をたなびかせるのが様になってきおったわ。やはり血は争えんな。最早親に瓜二つよ」
 アリオーンはそんな父に対して何も言う事が出来なかった。だが父に宮殿に入るよう勧め二人でテラスを後にした。
ーミーズー
「セリス様、来ました!」
 カリオンが天幕に飛び込んできた。
「数は!?」
「約五万。一路このミーズに進んできています!」
「よし、行こう!」
「はっ!」
 セリスの号令一下諸将が一斉に天幕を飛び出しそれぞれの持ち場に着いた。すぐに南の空に黒い暗雲が立ち込め進んで来る。
「弓兵隊、前へ!」
 セリスが命じると弓兵隊がザッと前へ出る。弓を手に竜騎士達を待ち受ける。
 間も無く竜騎士団が死人出来るまでに接近してきた。五騎一組で中心に指揮官を置いた楔形の陣を一単位とした独特の戦陣である。その先頭に彼女はいた。
「リーフ様、あそこです!先頭のあの方がアルテナ様です!」
 フィンがアルテナを手で指し示した。右手に大きな槍を持ち軍服に身を包んだ茶の髪を風になびかせた女騎士がいる。リーフは思わず息を飲んだ。
「姉上・・・・・・!」
 馬を飛ばした。後にフィンが続く。
「よし、行くぞ!」
 アルテナが先陣をきる。竜騎士達が彼女に続き一斉に降下をはじめる。その前に白馬に乗った銀の鎧の若い騎士が現われた。
「お待ち下さい、姉上!」
 振りかざした槍の動きを止め飛竜の手綱を引く。後続の竜騎士達も動きを制止した。
「誰だ、そなたは。何故私を姉と呼ぶ?」
 いぶかしげに下にいるリーフを見る。その騎士は自分から目を逸らそうとしない。
「私の名はリーフ。レンスター王子キュアンとシアルフィ公女エスリンの子です」
「そうか、卿がシアルフィ軍においても名を馳せるレンスターの若き君主か。常々その名は聞いている」
 そう言うと槍を掲げた。
「御父上と御母上、そして卿の姉君の事も御聞きしている。だがそれも戦場での事、致し方なかろう」
 リーフへ槍を突き出そうとする。しかしリーフは身じろぎもせず言葉を続ける。
「私の姉は殺されてはいませんでした。そして今私の目の前におられます」
「まだそのような世迷い言を」
「いえ、世迷い言ではありません。何故なら貴女が手にするその槍・・・・・・それこそ我がレンスター家に伝わる十二神器の一つ地槍ゲイボルグなのです!」
「なっ・・・・・・!」
 アルテナの美しい顔が今にも粉々に割れんばかりに強張った。アルテナだけでなく解放軍、トラキア軍双方に衝撃が走った。
「トラバントは私たちの父上と母上を殺しその槍の力を己が野望に利用する為に貴女を娘として育てたのです。そのゲイボルグこそが何よりの証です!」
「くっ、そのような戯言・・・・・・」
 槍を握った手が白くなり震えている。噛み締められた歯が軋む。
「目を御覧下さい、レンスター王家の怨恨、今こそ晴らす時なのです!」
「くっ、何故だ、何故そなたの言う事を否定出来ないのだ・・・・・・!」
 ふとリーフの傍らにいる青い髪の騎士に気付いた。その瞬間心の何処かで閉じられていた鍵が解き放たれ扉が開いた。不意に懐かしい気持ちになった。
(・・・・・・ン、・・・・・・ィン)
 白い部屋に両親、そして若い騎士と共に幼い自分がいる。おかしい、母は自分を産んですぐにこの世を去った筈だ。そして若い騎士は兄ではない。
「・・・・・・一先トラキア城に帰り父上にお話する。話はそれからだ」
 彼女はそう言うと竜の首を返し上空へ舞い上がった。
「攻撃中止、全軍トラキアまで撤退する!」
「姉上・・・・・・!」
 アルテナはリーフが制止するのも聞かず竜騎士団と共に南へ消えていった。後には消沈するリーフと彼を気遣うフィンとナンナ、そして解放軍の一同が残された。
 アルテナは流星の如き速さで父の許へ向かっていた。その顔は恐怖と不安、焦り、狼狽で彩られ彼女の心を完全に塗り潰していた。この時彼女は予感していたかのしれない。自分を待つ残酷な運命を。
 
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