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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第九十八話 蛍光その三

「あそこは」
「よくない日本一ね」
「そうなんだよね、ただね」
「ただ?」
「あれでかなりましになったかな」
「そうなの」
「うん、まだね」
 そうらしい、どうも。
「あそこはね」
「いい街だけれどね」
「いい街でも全てがいい訳じゃないからね」
「悪い場所もあるってことね」
「どの街でもそうだからね」
「じゃあこの神戸も」
「うん、例えば冬は寒いし」
 山からの風のせいでだ、これはどうしようもない。
「マナーも大阪程じゃないけれど」
「悪いのね」
「そうした面はあるよ、完璧っていうのはね」 
 本当にだ。
「ないね」
「街でもね」 
 ラブポーンさんがここでこう言った。
「人でも何でもね」
「うん、完璧っていうのはね」
「この世にはないものね」
「神様じゃないからね、人間は」
 それに尽きた、結局のところは。
「その人間が作ったものはね」
「何でも完璧じゃない」
「そうだよ、大阪も神戸もね」
「私達んしいても」
「だからこそいいかも知れないけれど」
 完璧でないからこそだ。
「それでもね」
「完璧でない」
「そのこと自体がね」
「義和はそう考えてるのね」
「完璧だとそれで終わり」
 この言葉を言ったのは。
「親父が言っててね」
「義和もそう考えてるのね」
「実はそうなんだ」
「だからなのね」
「そうも思うよ」
「成程ね」
「完璧じゃないことがね」
 こうしたことをラブポーンさんに言っているとだ、赤信号が変わった。青になってその瞬間にだった。畑中さんはバスを発進させた。 
 それからは赤信号で停まることなく学園に入って植物園の駐車場に着いた、いつもはがらんとしている場所だけれど。
 今は違った、車が結構あった。僕はその車達を見ながらバスを然るべき場所に停止させた畑中さんに言った。
「車結構多いですね」
「鑑賞会に来られてますね」
「そうですよね」
「はい、殆どの方が」
「当直の方もおられますよね」
「そうだと思います」
 動物園や植物園等には当番でいるのだ。これは学園の殆どの施設でそうだ。
「ですが殆どの方はです」
「やっぱり、ですよね」
「はい、鑑賞会に来られてます」
「鑑賞会の間はずっとですね」
「今日もこれからです」
「どんどん来ますね」
「歩いても来られます」
 鑑賞会、それにだ。
「毎年毎日結構な方が来られますので」
「そうですか」
「はい、いいことです」
「観に来る人が多いことは」
「それだけ蛍の美しさを愛している方がおられるということなので」
 だからだというのだ。 
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