| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第九十八話 蛍光その四

「いいことです」
「蛍のですか」
「はい」
 そうだというのだ。
「まことに。では」
「バスも停車しましたし」
「皆さん、行きましょう」 
 僕にも他の皆にも声をかけてくれた。
「これから」
「蛍を観に」
「是非」
 畑中さんがリードしてだった、そのうえで。
 僕達はバスから降りて植物園に向かった、植物園だけじゃなくて夜の学園の施設はお昼とは全く違っていた。
 それでだ、モンセラさんがこんなことを言った。
「全然違う世界ね」
「お昼とは、だよね」
「ええ、本当にね」
 同じ場所だけれどだ、時間が違うと。
「全く違う様に思えるわ」
「そうなんだよね、時間が違うと」
「そこにあるものもね」
「違うみたいだよね」
「若し一人だと」
 暗がりの中でモンセラさんの眉が顰めさせられたのが見えた、それだけ僕の目が夜に慣れたということか。
「来たくないわね」
「怖いから」
「若しここで蛍が出たら」
 一人で今この場所にいる時にだ。
「人魂に思えるわ」
「生贄とかスペイン人に殺された」
「そうした人達のね」
「そうなるんだ」
「メキシコだったらそう思ったわ」
 モンセラさんのお国ではというのだ。
「本当にね」
「そうなんだね」
「ええ、その時はね」
「それで日本だと」
「人魂だけれど」
 このことは変わらないが、というのだ。
「ここだと平家の亡霊?」
「何でそこで平家なの?」
「だってここで戦があったでしょ」
 それでというのだ。
「源氏と平家の」
「ああ、一ノ谷の」
「そうでしょ」
「あれ福原だよ」
 僕はモンセラさんにすぐに話した。
「戦いがあったのは」
「ここじゃないの」
「うん、また違うよ」
 記録ではこの八条町の辺りでは戦闘は起こっていない、源氏と平家は確かに今で言う神戸で激しい戦いを行ったけれどだ。
「別の場所だよ」
「そうなのね」
「平家はね」
 僕は残念に思いながら言った。
「あの戦で大体終わったんだよね」
「壇ノ浦まで戦ってたでしょ」
「うん、けれどあの戦で趨勢が決まったんだ」
「ああ、そうだったの」
「何かね、僕は平家の方が好きなんだ」
 あくまで僕個人の好みである。
「平清盛がね」
「あの人悪い人でしょ」
「私もそう思うけれど」
 モンセラさんだけでなくニキータさんも言ってきた。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧