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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第九十六話 吸血鬼のお茶会その六

「あくまでね」
「そうなのね」
「まあ出ても出なくてもね」
「行くのね」
「そうしよう、まあ見られたら運がいいってことで」
 僕は笑ってこう話した。
「そういうことでね」
「割り切ってるわね」
「この学園はそうした話が多いけれど」
 それでもなのだ、実際のところは。
「この話もね」
「吸血鬼の話も」
「それもなのね」
「見られたらね」
 本当にそれならだ。
「運がいいよ、かえって」
「見ようとしったらかえって見られなくて」
「見られたら運がいい」
「そういうものなのね」
「何でも郷と化けものは見たことがないとか」
 僕は半ば自然にこの言葉を出した。
「そうも言うらしいしね」
「郷って故郷?」
「郷里とか?」
「それなら普通じゃないの?」
「普通に見られるわ」
「いや、郷っていうのは刀でね」
 僕はそのこともだ、二人に話した。
「郷助清っていう刀で滅多になくて」
「数が少ない」
「そうした刀なのね」
「それでそう言われているんだ」
 見たことがないとだ。
「それと妖怪はね」
「見たことがない」
「そこまでなの」
「妖怪も見た人がいない」
「そうなのね」
「そうだよ、この学園はそうした話ばかりでもね」
 それでもだ。
「見ようと思って見た人は滅多にね」
「いないの」
「そういうものなの」
「いると思うけれどね」
 僕にしてもだ。
「実際にこの目で確かに見たことはないよ」
「確かに?」
「うん、確かにはね」
 こう詩織さんに答えた。
「ないんだ」
「というとあるの」
「まあ不確かだけれど」 
 それでもだ。
「らしき人には会ったよ」
「妖怪に」
「中学校の時に校門で見たよ」
 中等部のそこにだ。
「帰りが遅くなって夜になろうとする時にね」
「妖怪さんがいたの」
「コート着て帽子被った黒のロングヘアで」
 僕はその妖怪らしき人のことをさらに話した。
「目は切れ長で誰か待ってる感じだったよ」
「それ普通の人?」
「夏でコートだったよ」
 七月だった、確か。
「その時だから」
「夏でコートはないね」
「そうだよね、どう考えても」
「その人って」
「口裂け女ね」
 友奈さんが言って来た。
「その妖怪ね」
「実はうちの学校口裂け女の話もあって」
「それでなの」
「口裂け女もね」
 その妖怪もだ。
「出るっていうから」
「義和はその妖怪じゃないかって思ってるの」
「うん」
 その通りとだ、僕も友奈さんに答えた。 
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