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STARDUST∮FLAMEHAZE

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第三部 ZODIAC CRUSADERS
CHAPTER#38
  星魔の絶戦 千変VS星の白金Ⅵ~Desolation Crisis “Beelzebub”~

【1】



 無頼の貴公子、空条 承太郎、紅世将軍 “千変” シュドナイ、その最終局面。
 苛烈壮絶の極み、一騎当千足る両雄の戦端は慮外の静寂によって斬られた。
 斬切の音もなく、筋肉の起こりもなく、およそ一切の予備動作を無くして
その剛槍(やり)は延びた。
 本刃ではなくその周囲に群がる副刃(そえば)数十本が意志を持ったかのように、
屈曲しそれぞれバラバラの軌道でスタープラチナと承太郎に襲い掛かる。
 ソレを持つ雷獣、真の姿を顕した “千変” シュドナイは
両腕をはち切れるような胸筋の前で組んだまま
片手で剛槍を握っているに過ぎない。
 半ばスタンド、或いは太古の流法にも酷似した能力だが、
しかしソレは紅世最強宝具の一つ、
『神鉄如意』 の一部にすら充たない。
“にも関わらず” 延びた副刃はさながら拷器の檻、
ただ延びたのではなく凄まじい速度で変形を繰り返しながら、
空気抵抗以下阻害となる法則を切り裂いて全方位から承太郎に迫る。
「オッッッッッッッラアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァ ―――――――――――――――――!!!!!!!!!!!!!!」
 瞬速の判断、スタンド、スタープラチナが真下への正拳で
アスファルトを砕き噴出する飛礫群、
巻き起こる粉塵は目標の捕捉を困難にし散開した破片は
副刃にブチ当たりその軌道を大きく逸ら、さなかった。
「……」
「……」
 爆風に紛れ10数メートル離れて対峙する貴公子と雷獣。
 バシュウゥゥッッ!!
 一方の躯とスタンド、全く同一箇所から無数の鮮血が繁吹(しぶ)きを噴いた。
 通常武器にも成る近距離パワー型スタンドの 「破岩弾」
しかし紅世最強宝具 『神鉄如意』 は “そんなもの” など
文字通り歯牙にもかけなかった。
 高速の低身回転移動(フロア・ムーヴ)キレ鋭く拷器の包囲網
最も手薄な部分を潜ったにも関わらず、
さして軌道が変わらず尚かつその速度故に、
カウンター気味に入った刃閃はより切れ味を増して承太郎の四肢を裂いた。
「チィ――ッ!」
 脅威に戦慄するよりも先に動く精神、
周囲360°を完璧に捉える雷獣の視界全域に
煌めく軌跡を残して承太郎は姿を消した。
 無論逃走 (どこぞの家系では最終奥義とも云うが) ではなく戦略的撤退。
 刹那の一合ではあるが得られた情報(データ)は少なくない
(刃の変形速度、その軌道、硬度、強度、付加能力の有無 etc)
これらを総合して勝機を紡ぎ出す 『洞察力』 が承太郎には有る。
 闘争の血は未だ滾りに滾っているが殺し合いはコロシアイ、
相手の能力も解らずに突っ込んでの犬死に(オワリ)は望む所ではない。
「……潜んだか。異能の気配を消し微かな余韻すらも残さずに。
だがどこに隠れようと無駄なコト。
“この姿” になったオレは別存在(ベツモノ)だからな」
 剛槍、 『神鉄如意』 を片手に携えたまま呟く雷獣、
その全身、至る所に被膜無き剥き出しの眼球が出現した。
 ソレはズルリと躯から次々に抜け出し、
紫色の虹彩を宿しながら宙を浮遊し
シンガポールの街並み全域を俯瞰で見据える。
 さながらジョンガリ・Aのスタンド能力、
しかし眼球自体で直接視るため精度は
こちらの方が上かも知れない。
 正に “千眼” の魔人、紅世 『将軍』 の名に恥じない禍々しさ。
(イルヤンカ、相も変わらずの剛勇さ、相手は塵も残らぬな)
(オルゴンは敗れたか、相手が悪過ぎたというのもあるが、惜しい男よ)
(愛染兄妹は意外にも随分押されている、コレが終わったら加勢にいってやるか)
(ほう、人間の小娘が生身でアノ “万条の仕手” と渡り合うとは、
なかなか侮れぬな、スタンドとやらも)
( “弔詞の詠み手” ……! この女が何故ここに……!?)
(フン、オレ相手に強気だったのはその微細な生物群の所為か。
最も、 “今の” オレには通用せんがな)
(この小娘は……燐子に苦戦するような脆弱な者がどうしてこの戦場に居る?
まぁ道ながらに喰らってやるか、おそらく四半秒かかるまい) 
 戦場の戦域、全ての戦況を雷獣は “同時に” 把握した。
 あらゆる光景をあらゆる角度から、
浮遊する “千眼” が具に捉えていた。
 元は探査目的ではなく、戦場の最も劇烈な部分を選別する為の能力であるが
手にした超宝具を活かすのにコレほど適したモノもなかった。
「標的」 はすぐに見つかる、そして
“その場に行く必要もない” 
「……」
 半時前の祖父と同じく、無頼の貴公子は身を潜ませた
建物の裏口で紫煙を燻らせていた。
 隠密行動をしている者とは想えぬ大胆さだが
あくまで目的は戦闘そのもの、退()くつもりも
助力を乞う気も一切ない(ジョセフが聞いたらどう想うかしらないが)
 あくまでたった一人で、完全にヒトの形容(カタチ)を捨て去った
雷獣に立ち向かう心算だ。
(……追ってこねぇな。しばらく動き回ってアノ剛槍(やり)
射程距離なり精密性なり確認しときたかったが、
流石にバレバレか。なら――)
 承太郎の思考はそこで途切れた。
 



 メ゛リ゛ィ……ッ!




 背を預けたコンクリートの壁から突如飛び出してきた無数の拷刃、
その形容は貫突に特化するため刺突剣(レイピア)状に変化し
壁面全域から古代の陥穽(ワナ)の如く承太郎の全身をスタンドごと
余す所なく串刺しにする。
 その光景を上空、死角の位置から見据える眼球。
 夥しい穿孔が残る凄惨な現場から余韻も無く消えていく刃群、
湿った通路に生々しい鮮血が裏口の二段階段まで飛び散っていた。
 すぐ傍に放置された、開きっぱなしのマンホールの蓋。
 地下に続く暗闇に周囲の “千眼” が殺到する。
(小賢しい……ただ潜むのではなく 「保険」 をかけていたか……
イヤ、 “抜け目無い” と言い換えよう……
一種のイメージでこの男を捉える事は出来ない……)
 錯綜した地下水路を多重認識しながら思考を巡らせる雷獣。
『スタンド使い』 に明確な 「使命」 など無ければ、
王の名と共に授けられる 「称号」 も存在しない。
 異能の主体はあくまで本人、 “人間そのもの” だ。
 故にその戦闘思考は日々の生活に密着しており、
コレが紅世の徒のような超常者には非常に読み辛い。
 当然と言えば当然の話、駅前の植え込みが変わった事や
個人レストランの手書きメニューが昨日と違う事など、
王はいちいち気に止めない。
 しかし日常のほんの些細な事にも関心を払い配慮を怠らない事が、
「地の利」 を活かすコトに繋がり戦闘の選択肢を広げるコトに繋がるのだ。
 ゴトゴトと開く十字路の蓋。
 周囲の千眼が反応するより速く飛び出す二つの影。
「やれやれ、何かと、 “水” に縁がある日だ、今日は」
 千の視線が存在を刺す路上の直中で、
背に裂傷を負った無頼の貴公子が学帽を抓んだ。
 先刻の機転、スタンドの聴覚(みみ)が捉えたコンクリートの貫突音、
本体の研ぎ澄まされた野生の勘、双方が瞬時に折り混ざって
意識より疾く身体を動かした。
 遮蔽物の多い場所で 「長物」 は役に立たないが
紅世の超宝具 『神鉄如意』 はこの定跡に当て嵌まらない。
 しかしどんな強力な武器であろうと、
対象を破壊しようとすれば必ず 「音」 はする。
 それは刹那の一刻、瞬きにも充たない時の随であるが
比類なきスピードと精密性を持つスタンド、
星 の 白 金(スター・プラチナ)』 ならばその秒速の世界にも対応出来る。
 時が加速しているのでもない限り、時間が逆行しているのでもない限り。
 派手な乱 撃(ラッシュ)に眩み意外と忘れがちだが、
スタンド、スタープラチナの真髄はパワーではなく 『スピード』
“速さは質量(チカラ)
 技を超えた純粋な強さ、ソレを更に特化させた能力なのだ。
 パワーの総量は圧倒的にシュドナイ、
しかしスピードの特性を活かして承太郎は
紅世の超宝具 『神鉄如意』 にいま立ち向かう!






 グ・ギ・ン゛ッッッッッッッ!!!!!!!





 息を整える暇もなく、雷獣の剛槍(ヤリ)はその顕力を剥き出しにした。
 承太郎の前方、だが視界に留まる事のないその全貌。
 元の大きさを完全無視して高層ビル、
上底部を僅かに残して貫いた巨大な針の凝 塊(カタマリ)
凄まじい曝威(ぼうい)を伴って承太郎に突進してきた。
 アラストールの超焔儀、顕現した紅世の王、
何れをも封滅しかねない“力” そのものの驚 駭(きょうがい)
 遣い手であるシュドナイと同じく自身を変貌させる、
“ただ” 変貌させるのが、紅世の超宝具 『神鉄如意』 の能力。
 だがその総力に 「限界」 はない、
剣神が揮う霊妙の覇刀が如く、魔王が揮う降魔の灼杖が如く。
 込めた存在力(チカラ)に総比例して、神々の諧謔に等しく
無限にその全貌を変貌()えていく!
 夥しい巨針が叢る悍ましき凝塊は、
最早武器の域を超え天変の理すらも覆った鋼鉄の波濤。
 しかもその “波濤” は東・西・北・南、スベテの方位から隈無く激浪し、
その悉くを粉微塵に砕き貫きながら中央へと集束していく。
 コレこそが正に、紅世の超宝具 『神鉄如意』 その一端。
 万 魔(ばんま)虐 滅(ぎゃくめつ)七 大 業 第 伍 烙(ななたいぎょうだいごらく)
神 鉄 如 意(しんてつにょい)暴 蝕 ノ 獄(ぼうしょくのごく)
遣い手- “千変” シュドナイ
破壊力-AAA スピード-A++ 射程距離-半径3000メートル
持続力-AAA 精密動作性-D 成長性-E 





 中級以下のフレイムヘイズ等、
喩え何人集まろうが烏合の衆にすらならない、
勦絶(そうぜつ)獄意(ごくい)がたった一人の人間に()けられた。
 遠隔でその暴蝕を統べる雷獣は、傲然と屹立し一点を千の視線で見据えるのみ。
 相手を(たお)す、という思考すら今のシュドナイにはない。
 元より紅世の徒やフレイムヘイズが結成した 「兵団」 を
貪り虐げるために発現した界域、「単体」 に放つような絶儀ではない。
 だから言った、決着は他愛もなく付くと。
 それでも告げた、 「全力で」 殺しに掛かると。
 御前がそう望んだから、(オレ)がそう望んだから。
 駆け引きや様子見(てごころ)を加えるのは、男の誇りに対する大いなる侮辱。
 さらば 『星の白金』 空条 承太郎。
 流星のように、眩く鮮烈な男よ。
「――勝った気ンなってんじゃあねぇぞッッ!!」
(――ッ!)
 視認出来ない大きく隔てた距離で、二人の男の精神が交錯した。  
 鋼鉄の波濤に呑み込まれていく街区の中心で、
逆水平に構えた指先をこちらへと向ける
無頼の貴公子の姿に千眼が軒並み誘引された。 
 絶望していない、身体は被虐に蝕まれても、
精神(こころ)は最後まで屈しないというコトか。 
 どれだけ惨たらしく滅ぼし尽くされたとしても、
己が敗北を認めなければ負けた事にはならない。
 その意気や良し、それでこそ 『神鉄如意』 の大業で葬り去るに相応しい。
 可能ならば幾星霜の時の彼方、再び(オレ)の前に現れるが良い。
 その時まで決して敗れず、存在し続ける事を、
「 “逃げ道” 塞いで袋のネズミにしたつもりかッ!?
違うねッ! 『道』 っていうのはッッ!!』
誰に与えられるのでも作られるのでもなくッ!





自分(テメエ)の力で切り開くモンだあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
ぁぁぁぁぁ―――――――――――――――ッッッッッッッッッ!!!!!!!!!』





 相対比を論じる事すら蒙昧な、暴蝕の波濤その極々一部に
スタンドパワー漲る星拳右昇撃が幻 像(ヴィジョン)全体幹の捻りを加えられて
爆裂した。
 極限の精神の咆吼、希望無き地獄に響き渡る箴言(しんげん)
 どれだけ絶望に打ちのめされても、未来無き暗黒の中だとしても、
それでも人間(ヒト)は、何度でも立ち上がるッ!
 無限に巡る時の中でさえ、大事なナニカを護り抜く!!
 ソレが精 神 原 動 力(スタンド・エネルギー)!! ソレが人間の存在根源ッッ!!
 異能や宝具など必要ない、 気高き心在る限り、 人間スベテが 『スタンド使い』 !!
 その 『真実』 を証明するが如く、
『運命』 に刻むが如く、輝いた超流法。
 絶界撃滅。神風の大螺旋。
 流星の 『超 流 法(スーパー・モード)
流 星 轟 旋 風(スター・サイクロン)ッッッッッ!!!!!】
超流法者名-空条 承太郎
破壊力-AA+++ スピード-AAA+ 射程距離-C(ただし上空に限り測定不能)
持続力-AA+++ 精密動作性-AAA+ 成長性-B





 ズ・ギ・ン゛ッッッッッッッ!!!!!!!




 地の獄に対する天の極。
 太陽さえも貫くように、流星の昇琉が暴蝕の波濤第一陣に撃ち込まれた刹那、
残る三陣もほぼ同時に停止した。
 それは地球が静止するのに同じく、空気の流れすらも止まり、
全ての存在が静寂する時。
 意識も、記憶も、精神すらも、時の理を喪失したが如く、
運命の交叉点、そのただ一極に集束する。
 然る後。





   メ、ギィ……ッ!




 静寂を破る剥離残響、音より速く 「結果」 は既に。




 メギメギメギメギメギメギメギメギメギッッッッ!!!!




 累乗的爆発増殖を伴って、暴蝕ノ獄全圏を翔け巡る。






メ゛ッッッッッッッギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
アアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ―――――――――
――――――――――ッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!




 結締の時。
 巻き起こる、白金の大旋風。
 大地を割り天空へと翔け昇る竜叢が如く、
多重乱渦状の余 波(マクロバースト)は頭上の雲海を突き破り
界面を越え成層圏にまで達する。
 紅世の超宝具、 『神鉄如意』 は極限の精神原動が生み出す
流星の 『超流法』 を以てしても “砕けなかった”
折れる処かその表面に罅すら入らなかった。
 元より “そういう” 存在具、童児の夢想にも等しき滅裂さ。
 だが、結果は砕けなかったというだけ、
“破壊出来なかったというだけ”
撃ち込まれた螺旋昇琉の 『衝撃は』
確実に音速を超えた速度で伝播し、莫大膨張を遂げた
『神鉄如意』 全域を隈無く翔け巡った。
 このコトに拠り夥しい暴蝕の巨針は一本の例外もなく外側に(まく)れあがり、
超常発生した白金大旋風に薙ぎ倒された。
 幾ら強いと言っても、幾ら巨大と云っても、 “武器は武器”
 その性質上全ては “繋がっており”
ソレは獄貌した 『神鉄如意』 といえど例外ではない。
 故に四方どの(けん)に流法を撃ち込んでも衝撃は伝わり、
また不滅と(いえど)も 「金属」 で在るが故にその伝導率は十全に促進される。
 あくまで流法(ワザ)を撃つ者のパワー、
何より 『スピードが』 ズバ抜けていればの話だが。
 しかし、真に驚嘆すべきは、スタンドのパワーではなく
それを統括する空条 承太郎の決断力。
 初見の不条理、その能力の全容、殺傷力、属性、射程域、
それらを瞬時に解析、総合して紡ぎ出す打開策、
意志とは無関係に噴出する恐怖と驚愕に抗いながら。
 いざという時、危難に際して 「は」 鋭い等と言う都合のイイ、
三文創作以下の魯鈍な思考能力では間に合わない。
(平時に愚劣な者が有事に優越というコトはなかろう)
 頭よりも先に躯が動く、意識よりも先に手が走る、
無思慮な愚者とは根本的に違う精神の流れ。
 後先等考えていたら何も出来ない、動けないという
『抜き差しならない状況』こそが、スタンドバトルの経常。
 故にいざ戦闘が始まったらスベテの状況の推移を
“考えるのではなく感じ” 走った直感に身を委ねる、
殉ずるのが勝利への 『道』 を開く絶対条件。
 思考するという事は、ともすれば 「逃げ道」 を模索する行為に繋がり、
それは真の 『道』 ではないというのは先刻の咆吼に在るが通り。 
 己を信じ、同時に捨てる、極限まで戦闘に集中していながら、
意志を無視して瞬間に殉ずる。
 この矛盾した二律背反、魂の刻印に従うとでも云うべき
超瞬間的反応速度こそが英傑の要であり精神の秘奥。
 そのスベテがスタンドに力を与え、どんな絶望的状況でも打開せしめる。
『人間』 と “紅世の宝具” の存在偏差。
 前者は 「成長」 する! 
勇気と信念さえ在れば、その 『速度』 に限界などない!!





 七つの大 獄(たいごく)第 一 圏 滅 界(だいいっけんめっかい)
『神鉄如意』 そのものは砕けなかったが、
裡に込められた存在力はスタンドパワーの
流法超衝撃により根刮ぎ消し飛んだ。
 その圏を支配する “蠅の王” が絶命したかの如く、
捲れあがった暴蝕の波濤は存在の意味を喪失()くした。
 その中心に佇む、ただ一人の人間。
 吹けば飛ぶような、余りにも脆く儚く惰弱な存在が
超宝具の大業を封殺せしめた事実、否、真実。
 千の魔眼が驚愕をも超えた恐懼(きょうく)に色を変える。
 その衝撃は、遠く離れた雷獣にも明確に届いた。
 手を伝わり全身を駆け巡った痺れ以上に、
紅世 『将軍』 の心奥を揮わせた。
「絶体絶命の窮地に於いてすら、在り得ない成長を遂げる……!
コレが……『人間』……ッ!」
 己が真名、 “千変” すら上回る 『変革』
 こんな存在、どんなフレイムヘイズにも居るわけがない。
 肉体の 「生長」 が止まった者は 『成長』 しない。
 もう一度人間に 「転生」 でもしない限り、
しかしソレはフレイムヘイズの原理上有り得ない。
 人間存在の脆弱さに絶望して、スベテの可能性を諦めて、
王の存在を受け入れるのがフレイムヘイズというモノだから。 
 引き出すのは自身の能力(チカラ)ではなく、紅世の徒の顕力(チカラ)だから。
 それ故の 「同胞殺し」 「討滅の道具」 の蔑称。
 しかしソレと相対する存在が、裡から界滅した地獄の直中で、
悠然と紫煙を燻らせる無頼の貴公子。
流れる煙が手向けのように残骸の上を舞う。
 やがて銜え煙草でこちらを視る、勇壮の英姿が千眼越しに消えた。
「――ッ!」
 もう次の瞬間には、その美形がシュドナイの眼前に現れていた。
 微かに焦げるフィルターの音、大獄を滅した焦燥も気負いもない、
まだまだコレからだとでも云うような覇気。
 先述の通り、どれだけ形容(カタチ)を変貌させても 『神鉄如意』 は繋がっている。
 故にその径路を辿れば、源泉を握る雷獣の元へと行き着く。
 驚愕も有るが、シュドナイは “千眼” に意識を割き過ぎた。
 故にその双眸に、承太郎の姿は幻象も同然だった。
「逃げたオレに、わざわざ 『遠隔能力』 で対応してくれたのか?
そりゃ気をつかわせたな」
 そう、 【暴蝕ノ獄】 は苛虐残虐さこそ極まるが、
あくまで広範囲能力で 「単体」 にはその威力を遣い切れない。
 故に必要以上の存在力を消費し仕留め切れなければ
その莫大さに拠って大きな隙が生じる。
 本人に傲りはないが超宝具の能力を過信したシュドナイは選択を誤った。
『最大獄儀で華々しく散らせてやる』 その余裕(あまさ)
『男の世界』 では不純物だった。
「 “安心しろ” もうどこへも行かねーよ。
最後まで一緒に居ようぜ、どっちかがくたばるまでッ! 」
 永遠の盟約のように、雷獣へと告げられる貴公子の言葉。
 その誓いが星拳(こぶし)と成って、虎の顔面に撃ち込まれる。
「オッッッッッッッッラアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
アアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ――――――――
――――――――――ッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!」
 捻じ切れるほどに爆ぜる、雷獣の頭部。
 空間に放出されるスタンドパワー。
 決して触れ合う事はないが、解り合う事は出来ないが、
二人の間には “奇妙な友情” が在った。
 今まで、誰にも抱く事の出来なかった想いだった。
 戦うが為に、殺し合うが故に、それで存在するしかないがこそ、
深く、強く。 


←TOBE CONTINUED…






『後書き』



はいどうもこんにちは。
『神鉄如意』がチート武器でそのままじゃ話が「破綻」するので
(折れない、曲がらない、幾らでも巨大化する(形が変わる)って、
莫迦なのか・・・・('A`))
「大系化」して能力も「(7つに)限定」しました。
強さのインフレと同じで、「幾らでも強くなる無敵の能力」は
読んでて面白くないし「先」も楽しみじゃなくなるからです。
例えば「スタンドは幾らでも変化するし、能力も増えるし強くなる」
という「設定」だったとしたらどうでしょう?
(別作品ですがクラピカの「鎖」が5つに「限定」されておらず
繋げる指輪もなく戦いの都度にただ漠然と鎖を出すだけだったら?)
誰も『スタンド』という設定に魅力を感じず先も全然楽しみではなくなり
厳しい週間連載の世界では打ち切りになってしまいます。
何故なら人間の「想像力」というモノは
「全くの(ゼロ)からは、何も想像出来ないように出来ているからです」
同様に「幾らでも変化するし巨大化するし絶対折れない」等という
まるで小学生が考えたような「曖昧な設定」もまた同様です。
人は「自分で自発的に想像するから」楽しいのであり、
「誰かに無理に強いられて想像する事」は全然楽しくないどころか
非常に苦痛で不快感を抱くように出来ているからです。
だから荒木先生は、「スタンド」という設定に「ルール(制約)」を設け
(無論、「波紋」「鉄球」にも)
決して「何でもアリ」ではない、「出来る事と出来ない事がある」と
「明確」に設定を構築しているのです。
だから
・スタンドは『スタンド使い』にしか見えない
・能力は一人一能力
・スタンドへのダメージは本体に返る(その逆も同様)
・本体から離れ過ぎるとパワーが弱くなる
ectetc、「想像するキッカケ」を幾つも与えてくれているので
ジョジョの『スタンド』という「設定」には
『想像する楽しみ』が生まれるワケです。
決してどっかの○○のように中途半端で曖昧な描写を垂れ流しにして
それで「設定魔」とか悦に浸っているのではありません。
“贄殿遮那”や“神鉄如意”なんなら「自在法」でもいいですが
上記の設定を「本当に」面白いと想う人はいますか?
それがツマラナイのは当たり前で
『想像する事』を「最初から」読者に全部「丸投げ」してしまっているからです。
中途半端かつ曖昧な情報で、
それで何か面白い想像(話)が出来るというなら
「自分で作品描くわ」という話でそこに
原作者としての「責任」も「拘り」も「倫理」も何もありません。
読者は作品を読んでそれを自由に解釈して楽しむだけであり、
「作者の足りない部分」をわざわざ想像して
補ってやる「義務」など何もないのです。
よく「行間を読め」という言葉がありますが
出されたのが「白紙」であれば何も読み取る事は出来ません。
だから「設定」というモノは出来るだけ
「解り易く」「明確に」「複雑にしすぎない(矛盾や破綻が生まれるのは論外)」
のが大事なんですが、コレに全部反してる「設定魔」とかいう〇○がいるから
困ったモノです・・・・('A`)(まぁ封絶が莫迦の発想だからナ・・・・)
はっきり言いますが「何でもアリ」という設定は
実質「何も考えてない」のと同じコトなのです。
だから「神鉄如意は幾らでも大きくなって形も変わるから、
後は読者の皆で勝手に想像して楽しんでね~」
と「具体的にどのように変化するのか?」
「大きくなると言ってもどれくらいどのように巨大化するのか?」
「それで一体どのようなメリットがあるのか?(またデメリットは?)」
『何が出来て、何が出来ないのか?』
という事を「明確」にする、本来『作者の仕事』であるモノを放棄して
「読者にやらせる」等というのは、
自分の仕事を他人にやらせてその利益だけは自分が貰う(横取りする)
という一番卑劣な行為の一つです
(「自覚」がないなら尚悪いです。
だからあんな〇○みたいな主人公を出しておいて
恥ずかしいとも何とも想わないんでしょうが)

まぁ誰とは言いませんが、余りにも作品の「練り込み」が足らないというのは
あるもので(プロでもつまらないモノはツマラナイ)
「野球」を題材にしたら野球の勉強をしなければいけませんし、
「料理」を題材にしたら最低限料理のコトを知っていなければいけません。
何になんで「戦い」が題材なのに現実の剣術や格闘技を勉強しない方が
いるのか非常に理解に苦しみます。
そもそも「槍」っていうのは剣の間合いの「外」から一方的に刺突を加える兵器で、
だからあっさり(ふところ) に飛び込まれたら槍を使っている意味がない、
よっぽどそいつの腕がヘボいか頭が悪いかその両方かでない限り
通常剣と槍では攻防が成り立たない(剣が相手に届かない)のです。
(銃持ってるのに撃たないで銃把(グリップ)で攻撃防いでるようなものです)
岸部 露伴先生が仰っているように作品に大事なのは「リアリティー」であり、
100%リアルにする必要はありませんが
題材に対する「知識」がゼロというのもまた問題です。
まぁ実際の格闘技の練習風景を知ってれば(K-1とかプライドでもいいですから)
あんなのが主人公になるわけないンですが・・・・('A`)
相手が人外だろうとそうでなかろうと、
「強くなるため努力する」という『精神』は同じなので。
まぁ『人がそう簡単に変われたり成長出来るなら誰も苦労はしません』
ということなのでしょうナ・・・・('A`)
(見事なまでに成長してないし)
ソレでは。ノシ



 
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