とある3人のデート・ア・ライブ
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第十章 仮想世界
第8-5話 一方通行と狂三と美九
前書き
どうも、お久しぶりです。ラーフィです。
一ヶ月ぶりの更新ですね。やはり恋愛経験ゼロの作者にデートモノの話を一気に何本も創るなんて無理だったんだ(白目)
そんな作者が作ったデートモノのお話をご覧ください。
いつからだろうか。
外に歩くようになったのは。
友達がいるわけでもなく。
話す相手がいるわけでもなく。
何処かに出掛けるためでもなく。
歩くのが好きなわけでもなく。
それでも、外に出てしまうのは。
どうしてだろうか。
自分は何かを求めて外に出ているのだろうか。
あるいは。
誰かに会いたいと、心のどこかで思ってしまっているからだろうか。
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ーーー
ーー
ー
狂三「あらあら、こんなところで会うとは偶然って怖いですわね」
一方「……」
なんて事を考えている自分がいたらキモいな、と考えていたら突然横から声を掛けられた。
家にいても暇だったので外に散歩に出たのだが、いつものごとく特に用事があるわけでもないのでコンビニに立ち寄ったのだ。
缶コーヒーを手に取ったところで、どういうわけかコンビニにいた狂三に声を掛けられた。
一方「……」
一方通行そのまま缶コーヒーを手にとってレジに向かい、
一方「……」
お金を払ってコンビニを後にした。
狂三「…………ちょっと、待ってくださいまし!」
狂三をあたかも最初からいなかったかのように。
ーーーー
ーーー
ーー
ー
狂三「酷いですわ。レディーを無視した挙句放って行くなんて」
一方「知るか」
狂三「素っ気ない態度ですわね。そんなことではいつまで経ってもモテませんわよ?」
一方「そンなもンには興味ねェな」
狂三「…………本当に男性なのか疑ってしまいますわ」
そう。一方通行は異性……というよりは人に対して殆ど興味を持たない。
それは生まれつきなのか、今までの人生が彼をそうさせたのかは分からないが事実、隣に狂三という美少女が歩いているにも関わらず全く興味を示さない。
その上肌は白く綺麗でムダ毛も殆ど無し。髪はシャンプーしか使ってないのにサラサラ。女の子が欲しいモノを全て兼ね備えたボディだ。故に本当は女の子ではないのか?と一部では声が上がっている。
しかし彼には喉仏があるしちゃんと声変わりもしている。生物学上も男と断定されているのだが……それでも本当に男なのか疑ってしまう時がある。
普通の健全な男子なら美少女を前に何かしら思うことがあるはずだ。その何かまでは言わないが。
一方「そもそもテメェはここで何してんだ?また暴れるつもりなら今すぐ叩きつぶすぞ」
狂三「そんなことありませんわよ。本当にただの気まぐれですわ。貴方と同じで」
一方「…………チッ」
狂三「ふふ、これだからあーくんをからかうのは辞められませんのよ」
一方「あァ?」
狂三「そんな目をしないでくださいまし。普通の女の子なら失神してしまいますわよ?」
一方「…………あっそ」
本当にくだらない、と一方通行は頭をかきながら思った。
狂三とは本当に色々あった。
敵になって戦ったり、仲間になって精霊保護の手助けをしてもらったり。
勿論疑問もあった。自分自身は士道に封印されるのを拒むくせに他の精霊のことになるとやけに協力的になる。
今もそうだ。狂三はまだ力を封印されてない精霊。こうやって隣通しで歩いていることさえ普通ならありえないのだ。
だがラタトスクは今現時点においては狂三を積極的に保護しようとはしない。
理由は……大方借りを作ってしまったからだろう。恩を仇で返すことになってしまうからだ。
狂三自身も今は精霊の力を振る舞うことなく平穏にしている。
どうせこれにも理由があるんだろうが……
一方「………くっだらねェ」
その一言で全て切り捨てた。
よくよく考えれば狂三が何を考えているかなんて考えたところで意味はないのだ。
情報も少ない上に人に興味がない自分が誰かの目的を知ろうなんてことがそもそもおかしいのだ。
そうだ。自分は人に興味がないのだ。
自分は…………。
一方「…………」
本当にそうなのだろうか。
昔は確かにそうだった。誰が死のうが誰が傷つこうが知ったことではないし、それが自分のせいだとしても悔やむこともなければ何か思い込むもしなかった。
だが今はどうだ?
狂三に対して面倒だと思っているのは自分でも理解している。
狂三に対して変なやつだと決めつけてるのも理解している。
そこまで考えて。
自分は狂三のことを少なからず理解していることになっている。
さて問題。
本当に自分は人に興味がないのだろうか?
この時一方通行は、
自分自身の問いに対して、
二つ返事で答えることが出来なかった。
ーーーー
ーーー
ーー
ー
美九「あーくん必ず私のステージに来てくださいね!!」
一方「………ハァ?」
突然の美九の言葉に、一方通行は変な声を上げてしまった。
美九の手にはチケットが握られており、何が何でもというような顔をしている。
だがーー
一方「何で俺なンだ?五河士道でも誘えばいいだろ」
美九「日付をよく見てくださいよ〜、平日じゃないですかぁ」
と言われたのでチケットを受け取って日付を確認した。
……確かに平日だ。だが。
一方「誘うのは俺じゃなくてもいいだろォが」
美九「だって〜だーりんや他の皆さんは学校ですし、アイドル仲間もいるんですけどみんなレコーディングや撮影で来れなくて……流石に小さい四糸乃ちゃんをあそこに連れていくわけにはいかないですし……つまりあーくんしかいない訳ですよ!」
一方「…………なンで俺がそんな面倒なことを」
美九「折角チケットが取れたんですから来てくださいよぉ。私のライブチケットは中々とれないんですよ?」
そう言われてもな……と久々に一方通行は戸惑ってしまった。
美九は精霊の力を使って暴れてた時よりは大分マシになったものの男性不信は未だに克服出来てないのだ。
美九はアイドルをしている身分なのでファンは当然男性の方が多い。最近では少しずつ男性に対しても握手会をするようになってきたが、それでもやはり嫌悪感が生まれてしまうのも否定できない。
そんな美九が男性に対して心を許しているのは僅か三人。それが。
五河士道。
上条当麻。
一方通行。
この三人だ。
自分の心の闇に対して厳しい言葉を掛けながら、でも確かに心に訴えかけてきた一方通行。
事務所の嫌がらせにより偽のスキャンダルをでっち上げられ、ファン(だと思っていた人)に心無い言葉を掛けられた自分ととても境遇が似ていると思った上条当麻。
そして。
男が大の嫌いで、彼自身にも心無い言葉を浴びせ、彼の大事な仲間を操り敵にして追い詰めようとしてもなお自分のことを命懸けで救ってくれた五河士道。
精霊の一件もあり、誘宵美九はこの三人には一切の嫌悪感を抱くことも無くなった。
これは、以前の自分では考えられないことだった。
美九「ですからー来てくださいね?そもそもこうして人気アイドルと会話できること自体貴重なんですよぉ?」
そう。こうして男の人をライブに誘うことも。
一方「知るか。自分で人気アイドルとか言ってて恥ずかしくねェのか?」
美九「慣れれば余裕ですよぉ」
なんだろう。アイドルの闇を見た気がしたのは気のせいだろうか。
しかし、一方通行はライブはおろか好きな歌手さえいない。
たまにテレビで音楽番組をやっていてその時にチラッと見るくらいだが、その曲は知っているだけで歌手自体も好きにはなれない。
一方通行はどうもその辺が疎いので音楽など全く聴かないのだ。
一方「音楽には興味ねェよ」
美九「え〜!?じゃあこのチケットどうすればいいんですかぁ?」
一方「捨てればいいだろォが」
美九「勿体無くないですかぁ……?」
一方「じゃあオークションにでも出して売れよ。そのチケット欲しがってる奴なんざいくらでもいるだろォが」
美九「むぅ……」
と、一方通行の言葉を聞いて美九は捨てられた子犬のようにショボンとしていた。
少し言いすぎたか?と思ったが、だからといって自分が人が大勢いると分かっている場所に行くのもアホらしい。
また後で何か買ってやるか、と考えた時だった。
ピリリリ……と一方通行の携帯が突然鳴り出した。相手は……神無月だった。
とりあえず通話ボタンを押して携帯を耳の方へ持っていった。
一方「……」
神無月『もしもし一方通行君ですね?神無月です。少し聞きたいことが………ってあれ?聞こえてます?…………おーい』
面倒くさいから切ろうか、と思ったがここで切ればそれはそれで面倒なことになるなと考えた。主に琴里がメインで。
一方「…………なンのようだ?」
神無月『……良かった。通信障害かと思ってコンソールをいじりそうになりました…………あ、いじると言えば司令に最近弄られてなーー』
一方「切るぞ」
神無月『あーっ!!待ってください!待ってください!!用があって電話したんです勝手に切らないでお願いします!!』
と、耳元で鼓膜が破れそうな勢いで謝ってくるので本当に電話を切ってやろうかと思ったが、琴里が学校からフラクシナスを経由して命令してるかもしれない。それを無視するとなると非常に面倒だ。
一方「ったくよォ……さっさと要件を話せ」
神無月『……誘宵美九さんの好感度が下がってるんですが何か心当たりはありますか?』
心当たりしかない。
一方「……さァな」
一方通行には心当たりがあります。
神無月『そうですか……士道くんや上条君にも聞いてるんですが全くないそうで……』
一方「……」
神無月『お時間を取らせてしまい申し訳ありませんでした。では切りますね』
と神無月は少し焦り気味な様子で電話を一方的に切った。
一方「…………チッ」
本当に、厄介なことになった。
そんな事を考えながら一方通行は美九のチケットを手に取った。
ーーーー
ーーー
ーー
ー
ライブ当日、武道館前にて。
一方「…………なンでこんなに人がいるンだよ」
武道館の正面門前には数万人という大勢の誘宵美九ファンがごった返していた。
辺りを見回すと、そこには普通のファッションでいる者もいれば誘宵美九のゴロが入ったハチマキやキャップ帽、パーカーやコートまで着ている人もいた。お前はどこの宗教の人なんだよ……。
しかしこうして見ると男だけでなく女のかなりの数がいるようだ。男女に好かれるアイドルとは珍しいものだ。
だが一方通行にとってこれらはどうでもいいことで。
一方「………マジで人多すぎだろ」
今は何とか人混みの外に避難しているが、いざ武道館の中に入ろうと思えばあの中に否が応でも行かなければならない。
まさか能力を行使してぶっ飛ばすわけにもいかないし、こればかりは流石に困ったものだ。
一方「……あの女、この俺にこんなことさせておいて変なもん見せたらただじゃ済まねーぞ」
終始頭の中で美九に対しての憤りを感じさせていたが、なんとかそれを沈めて一方通行は人混みの中へと入っていった。
ーーーー
ーーー
ーー
ー
美九『今日も張り切って行きますよぉ!!』
『おおぉぉぉ!!!』
ライブが始まり、美九が舞台上に姿を表すとマイク片手に観衆に向かって大声で叫んだ。それに答えるように観客も色とりどりに光るサイリウムを片手に叫んだ。
続いて馬鹿でかい音がこの武道館を響かせた。最初は何事かと思ったが、それは前に美九がテレビで歌っていた曲のイントロだった。
それが流れた瞬間、一気に観客がヒートアップし、まるで武道館が揺れるかのような雄叫びを味方にし美九は歌い始めた。
ちなみに一方通行はというと。
一方「…………!?」
一番後ろの方で壁に背を預けて立っていたが、この迫力の前には流石に驚かざるおえなかった。
こんな人がゴミのように集まる場所に自ら赴くことすら初めてだったが、ここにいるだけで胸が苦しくなるのも初めてだった。
まるで酒を飲んで酔ったかのように、少しずつ気分が悪くなっていくのが分かった。
でも。
美九『まだまだこれからですよぉ!!次の曲、ミュージックスタートッ!!』
彼女は堂々としていた。
以前ほどではないとはいえ男嫌いは完全に治ってないはずだ。
女性ファンもいるとはいえ、男ファンの方が圧倒的に多いはずだ。
それこそ、昔なら確実に気分を害して姿を表さなかっただろう。
それでも、彼女は前に進もうとしている。
起こってしまったことは変えられない。
精霊の力を手にして洗脳していたことも、罵倒が怖くてファンから逃げていたことも。
でも彼女はそれを受け止めて、考えて、そして道を切り開いた。
そして今は……
一方「…………本当、忙しい女だなテメェは」
盛り上がる観客のその後ろで。
少年は静かに、舞台上の少女を見守っていた。
後書き
なんかデートモノというよりはそれぞれのキャラの成長日記になりました(白目)
ここでちょいと裏話。
それぞれの小話にはテーマを決めていたんですよ。美九なら『ライブ』、十香なら『結婚』みたいに。そこで一方通行と狂三をどうするかってなった時に友達(執筆仲間)に相談したんですよ。
僕「一方通行と狂三のデートってどうすればいいと思う?」
友「普通に遊園地とかでいいんじゃね?」
僕「狂三が一方通行を遊園地に誘うところ想像してみ?」
友「無理だな(確信)。でもテーマがデートだろ?」
僕「そうだよ」
友「デートって言ったら……カラオケとか?」
カ ラ オ ケ だ と
結果はご覧の通り無理でした。
次の話からは本編に戻ります(多分)やっと話が進むぜ!!
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