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とある3人のデート・ア・ライブ

作者:火雪
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第十章 仮想世界
  第8-4話 一方通行と四糸乃と琴里





一方「…………」

静かだ、と一方通行はこの現状を見ながらそう思った。

現在時刻は午前9時。そして今日は平日。上条達は普通に学校があるのでそちらに行っている。

つまり、今は誰もいない。

…………と、どこか珍しいような言い方をしているが、これは一方通行の平日の日常だ。

彼は正直なところ学校に通う必要などないほど天才だ。実年齢こそ(ちゃんと数えてないので本当かどうかは分からないが)18歳で未成年だが、東京大学のエリートと呼ばれている人でさえ一方通行の学力には及ばない。

そんな彼は、普段何をしているのか。

そんなもの決まっている。

一方「…………なンか見るか」

と、机の上に置いてあるリモコンの電源ボタンを押す。すると、それとほぼ同時にテレビがついて部屋が少しばかり煩くなった。

だが。

一方「…………」

何か、『違う』。

足りないではなく、『違う』と一方通行は思ったのだ。

ここは仮想世界。今見えてるのは全て″偽り″だ。ボタン一つで全て消えてしまうような、ある意味爆弾にも等しい。

だからだろうか。『違う』と感じたのは。

ずっと、目の前でノイズが走っているような、今にも切れそうな橋を渡っているような…………。

一方「(…………くっだらねェ)」

と、そこまで考えたところでそれを放棄した。

この世界に来てしまった以上後には引けないし、何かのトラブルで世界が真っ暗闇になったとしてもこちらからは何も出来ないのだ。

今は面白いテレビがやっているわけでもないのでただただ暇だ。

一方「………なにやってンだ俺」

最近、何のために生きているのか分からなくなる時がある。

彼とて万能ではないし、不老不死でもない。″力″の使い方を間違えれば世界を滅ぼすことだって簡単だし、夢があるわけでもない。

空間震の調査から始まり、仮想世界まで来て……彼は何を得たのだろうか?

一方「………」

と、その時だった。

四糸乃「…………あっ」

よしのん『やっぱあーくんはダラダラすごしてるねー』

一方「…………何しに来やがった?」

よしのん『みんな学校に行っちゃって四糸乃達も暇なんだよー。だから暇つぶしに』

四糸乃「えっと、その……お邪魔します……」

一方「………勝手にしろ」

よしのん『っていうかいつも通りだけどね』

現れたのは四糸乃とよしのんだった。

現実世界でも四糸乃とよしのんはよく士道の家に遊びに来ていた。現実世界でも仮想世界でも平日は皆学校に行っているのでどうしても暇になってしまう。

四糸乃は主に昼ドラを真剣に見ていて、よしのんは暇なのかよく一方通行をからかうが基本無視している。

よしのん『この時間って何も面白いのやってないよねー』

四糸乃「……ドラマは、面白いよ……!」

よしのん『多分そう思ってるの四糸乃だけだと思うよ?あーくんは……』

一方「興味ねェよ」

よしのん『だよねー。でも四糸乃が浮気やら不倫やらしまくっている夫婦のドロドロの話を好んで見るとはねー。まさか士道君とそういう関係になりたいの?』

四糸乃「よ、よしのん……!そんなんじゃ……!」

よしのん『あーくんはどう思う?」

一方「知るか」

よしのん『……いや、もう少し真面目に答えてよ』

四糸乃はさっきからずっとあたふたし、一方通行は目を瞑って相槌を打っている。よしのんは人形なので表情は分からないが……声色からして混乱しているだろう。

しかし、これは彼らのほぼ日常だ。

よしのんが四糸乃と一方通行に絡み、四糸乃は困惑し、一方通行は適当に返す。

これが、彼らにとっての『普通』の日に起こること。





だが彼らは『普通』の人生を歩んでこなかった。

一方通行も自分の本名を忘れているし、四糸乃はこれが自分の本名かさえわからない。

科学者には脳をイジられなりたくもない学園都市の第一位になったり、過去の記憶を全て失って気づけば精霊になっていたり。

事情は人それぞれだが、それは『普通』の人生とは程遠いものだった。




だから。





こんな日がずっと続けばいいのに、と。









心の奥底で静かに、そう思った。






ーーーー
ーーー
ーー







琴里「あー……」

一方「………何してンだ?」

琴里「疲れたー……」

ある休日のお昼のこと。

五河琴里は夜遅くに帰って来たサラリーマンのように気がたるませてソファに身体を預けていた。

一方通行はテレビを見たがらもう一つのソファを背もたれ代わりにして座っていた。

琴里「朝からフラクシナスで仕事してたのよ……」

一方「………」

琴里「だからお昼作って」

顔だけこちらに向けて捨てられた子犬のような寂しそうな声でそう言った。

恐らく士道か上条なら二つ返事でYESと答えていただろう。

だが相手が悪かった。

一方「俺が作れるとでも思ってンのか?」

一方通行はそれに動じない。感情の起伏が人より少ないせいなのか、ただ単に女の子に興味がないのか。

琴里「作れるでしょ。そんな高度な頭脳があるなら」

一方「面倒せェ」

琴里「んー?一方通行はお昼ご飯食べたの?」

一方「缶コーヒーで十分だ」

琴里「あんたねぇ……」

その言葉に琴里は呆れた。まさか自分たちが学校に行っている間は何も食べていないのだろうか?

そんな生活していたらあんなに細くなるのも理解できる。

琴里「健康に悪いわね……じゃあどこか食べに行きましょ」

一方「……疲れてるンじゃなかったのかよ」

琴里「あら、私の身体を心配してくれるなんて嬉しいわね」

一方「単に行きたくないだけだ。勘違いすンなチビ」

琴里「………何か言ったかしら白もやし」

一方「……テメェこそ喧嘩売ってンのか?」

と、何故か二人の間に亀裂が生じた。これがアニメなら火花がバチバチ散っていることだろう。

少しして琴里が諦めたように息を吐いた。

琴里「喧嘩売ってきたのは自分のくせに……まあいいわ。本気で喧嘩しても勝てる気しないし」

一方「そォだな」

琴里「………じゃあ、食べに行くことに異論はない?」

一方「……チッ、面倒くせェな」

態度は悪いが、何だかんだ言いながらも付いてきてくれるツンデレ一方通行でした。



ーーーー
ーーー
ーー




ファミレスにて。




琴里「久しぶりにファミレス来たけど知らない間に色んなメニューが増えてるわね」

一方「……どれも似たようなもンばっかだな」

琴里「そう言わないの。何にするか決まった?」

一方「一応な」

と、一方通行が答えると琴里は店員呼び出しボタンを押した。

すぐに店員が来て琴里はメニュー表を見ながら口を開いた。

琴里「私エビとピラフのポテトグラタン。あとドリンクバーね」

一方「……イカスミパスタ、あとブラック」

「か、かしこまりましたー!」

冷や汗を垂らし、明らかに作り笑顔をしながら店員は足早に去っていった。二人の雰囲気が険悪だから知らないが、どうも他の客も距離を取っているような気がする。

琴里「……よくそんなにコーヒー飲めるわね」

一方「……まずいジュースよりかはマシだろ」

琴里「そう……ま、好みは人それぞれってことね」

沈黙。

どうも一方通行と会話が続かない。いや、続かないと言うよりは彼が続ける気がない、と言った方が正しいか。

一方通行は言うまでもなく静かな方が好きだ。

なら琴里自身はどうなのだろうか?

今一方通行とこうしてファミレスでランチしている。話が続いているかどうかで言えば殆ど続いていない。

では問題。



琴里はこの状況をどう思っているのか。




琴里「(私は……)」

流石に彼の恋愛対象としては見ていないし、向こうもそのつもりはないだろう。

友達……というのも何か気持ち悪いし、多分仲間という表現がピッタリだろう。

今はその仲間と二人でランチをしている。

琴里「(……ま、変に気を張らなくて済む相手ではあるわね)」

しかし琴里は気づいていない。

普通、異性と二人っきりになれば少なからず気を張ってしまうものだ。変に気遣ったり、無理矢理話題を作ろうとしたり。

中には自然体で入れる人もいるだろうが、冗談を言い合ったり、それを楽しんだりするのは中々難しい。

だから。



















琴里にとって一方通行は、色んな意味で大切な人だということに。




















まだ、気づいていない。





 
 

 
後書き
ずっと悩んでいました。



…………狂三と一方通行回、どうしようかと。




そんなわけで二週間以上投稿し忘れた作者でした。 
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