八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第九十三話 最後の一日その九
「そうよね」
「そうだよ、今日はね」
「成程ね、ただ」
「ただ?」
「呉ってヤクザ屋さん多いのよね」
僕にこのことを聞いてきた。
「神戸や大阪よりもずっと」
「いや、神戸はね」
僕は実際に僕達が住んでいるその街のことから話した。
「はっきり言ってね」
「日本のヤクザ屋さんのメッカよね」
「山口組の本拠地があるからね」
事実だから否定出来ない、今も神戸だの何だので揉めている。何でも昔は一和会とかいう組織に分裂もしたらしい。
「だからね」
「神戸もっていうのね」
「ずっと多いかっていうと」
「そうでもないのね」
「実際はそうだと思うよ、ただ」
神戸のことを話しながらだ、僕はラブポーンさんにあらためて話した。朝食のベーコンのステーキをフォークとナイフで切りながら。
「呉は有名だね」
「ヤクザ屋さんもよね」
「映画にもなってるし」
あの有名な仁義のシリーズだ。
「有名な役者さんが一杯出た」
「小夜子もこっちの人でね」
「呼びましたか?」
その小夜子さんも来た、最高のタイミングでの登場だった。
「呉のことで」
「そうそう、ヤクザ屋さんの話をしてるけれど」
「広島名物ですね」
小夜子さんも否定せずに言う。
「映画にもなっていますし」
「小夜子もそう言うのね」
「港があり人足斡旋のお仕事からです」
神戸と同じ事情だ、幡随院長兵衛さんもそうだったが人足斡旋はヤクザの仕事だった。テキ屋、賭博と同じく。
「ヤクザ屋さんが出ました」
「そうなのね」
「そして定着しまして」
「名物になったの」
「はい」
その通りという返事だった。
「そうなりました」
「やっぱりそうなのね」
「おそらく神戸や大阪よりも多いです」
小夜子さんの見たところだ、見れば小夜子さんの朝食はベーコンエッグとペンネアラビアータ、そしてサラダと牛乳にチーズだった。洋風だ。
「広島のヤクザ屋さんは」
「それで呉はなのね」
「広島市と並んでです」
「ヤクザ屋さん多いのね」
「はい、北の方には少ないですが」
広島県といっても広い、広島市や呉市といった太平洋岸は人口が多くて産業もあるけれど島根県等との境はそうでもないとのことだ。
「南はです」
「名物なのね」
「牡蠣と柑橘類と海自さんとです」
「ヤクザ屋さんなのね」
「それとお酒です」
広島名物はというのだ。
「そしてカープです」
「正直ヤクザ屋さんだけ余計ね」
「私もそう思いますが」
「沢山いるのね」
「まさに名物というまでに」
「そうなのね」
「はい、ただ」
ここでこうも言った小夜子さんだった。
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