八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第九十三話 最後の一日その八
「そうなる様に頑張ってね」
「そうします」
「僕も頑張らないと」
ここでこうも思った、僕自身も。
「そうしないとね」
「先輩はどういった人になりたいんでしょうか」
「ううん、そう言われると」
一年の子の今の問いにはだ、僕は困った顔になって返した。
「ちょっとね」
「まだないですか」
「そうなんだ、尊敬する人はいるけれど」
一族の総帥さんみたいな人だ、具体的には。
「どういった人になりたいか」
「そこまではですか」
「考えてないよ」
本当にだ、困ったことを思いながらまた言った。
「どうなのかな」
「じゃあこれからですね」
「そうだね」
湯舟、ワイン風呂の赤いそれの中で首を捻りながら答えた。
「考えていくよ」
「じゃあそうした人を見たら」
「目指そうかな」
こんなことをだ、僕は皆と一緒に朝の大浴場で話した。お風呂から出た時はもうすっかりお酒が抜けていた。
身体を拭いて服を着て食堂に出た、そして。
ビュッフェの朝御飯を食べた、カリカリに焼いた厚いベーコンのステーキとオムレツ、それにフルーツの盛り合わせに。
パンを貰った、そのパンにだ。
苺ジャムをたっぷりと塗ったがその僕のところにだった。
ラブポーンさんが来て笑ってこう言ってきた。
「朝からすっきりしてる?」
「見ての通りね」
微笑んでだ、僕は答えた。
「ジュースもあるしね」
「ジュースは」
「野菜と果物のジュースだよ」
果汁百パーセントのだ。
「それにしたんだ」
「全体的にジューンの好きな感じね」
「アメリカンっていうんだね」
「ベーコンにオムレツにジュースに」
ラブポーンさんはさらに言った。
「それとパンにジャムをたっぷりだから」
「言われてみればそうかな」
「そう思うわ、それで私はね」
ここでラブポーンさんは僕の前の席に座った、この娘の朝御飯はというと。
巨大な丼の上に豚カツだった、半熟卵もかけてある。それは即ち。
「カツ丼?」
「そうなの、それとね」
「野菜スープだね」
「この組み合わせにしたの」
人参に玉葱、セロリにズッキーニが入ったコンソメスープだった。むしろポトフかなと見てこうも思ったのは内緒だ。
「力つける為に」
「朝からだね」
「この組み合わせにしたの」
「カツ丼とだね」
「野菜スープね、それでね」
ラブポーンさんは箸を手にしながら僕にさらに話した。
「後でデザートも食べるけれど」
「そっちは何食べるの?」
「ヨーグルトよ、ジャムをたっぷりと入れて」
「朝のヨーグルトも気持ちいいよね」
「そう、だから今朝はデザートで食べるの」
「そうするんだね」
「今日は呉に行くのよね」
ラブポーンさんはいたきますをしてから僕にさらに話してくれた。
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