コマンドサンボの女
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第二章
「よかったら道場で見せてあげるわ」
「柔道のか」
「ちなみに相手はあんたよ」
他ならぬ幸太郎自身とだ、エリカは彼をその大きな目をいささか鋭くさせて言った。
「怪我はさせないし痛くもしないけれど」
「それでもか」
「変な動きはしないでね」
「何でだ?」
「そうしたらこっちが力入れなくても怪我させるから」
だからだというのだ。
「そうした技が多いからよ」
「そうなんだな」
「とにかく下手に動かないで」
技を仕掛けるその時はというのだ。
「危ないことは事実だから」
「本当に危ないんだな」
「そうよ、じゃあいいわね」
「ああ、わかったよ」
幸太郎も頷いた、そしてだった。昼にコマンドサンボの技を見せてもらうことにした。そして昼休みに実際にだった。
エリカと幸太郎はまずは一緒に食事を摂った、ラグビー部の幸太郎も相当に食べたらエリカもだった。
「牛丼五杯か」
「多いっていうのね」
「流石柔道部だな」
「食べないともたないのよ」
平然として言った。
「柔道はね」
「そっちも強いのか」
「これでも二段よ」
「強いな」
「まあメインはあっちだけれど」
「コマンドサンボか」
「部活はそっちだから」
学校の食堂を出て柔道部の道場に向かいながら隣にいる幸太郎に話す、昼休みの学校は生徒達が授業が終わり食事も摂ってほっとした顔で行き来している。
曇っている天気は心地よくはない、しかしエリカはその校舎の中を歩きつつ幸太郎に話した。
「流石にサンボ部とかないから」
「だから柔道部か」
「知ってるかも知れないけれどサンボは柔道の影響が強いの」
「コマンドサンボもか」
「そう、サンボの創始の人が柔道家に負けたらしくて」
「それでか」
「柔道を凄く勉強したらしいのよ」
負けた相手をというのだ。
「より強くなる為にね」
「そうだったんだな」
「そう、だから関節技とか投げ技メインよ」
「柔道と一緒だな」
「ただしね」
ここでだ、エリカの言葉は剣呑なものになってそして言った。
「スポーツサンボや柔道と違うから」
「コマンドサンボはか」
「軍隊での実戦の格闘技だから」
「マーシャルアーツと一緒か」
「大体ね、骨法も実戦想定してるけれど」
「もっと凄いんだな」
「戦場で相手を殺す為のものよ」
目をギラリと光らせてだ、エリカは横にいる幸太郎を斜め上に見て話した。
「わかるわね」
「ああ、よくわかったさ」
幸太郎も視線だけを横にやってエリカを見つつ応えた。ただ彼の表情はいささか引いたものになっている。
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