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コマンドサンボの女

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第一章

                 コマンドサンボの女
 湯川エリカ、ロシア側の姓コストエフスキーは茶色の短めの髪に大きな栗色の目を持っている。背は一六〇位で肌は白くやや太めの体で胸がかなり目立つ。
 その彼女にだ、クラスメイトの新堂幸太郎はある日自分の席に座って小説を読んでいる彼女に聞いた。黒髪の少し野暮ったい外見の大柄な少年だ、身体つきはがっしりとしていて目は小さい。
「御前コマンドサンボやってるんだよな」
「ええ、そうよ」
 小説を読むのを止めてだ、エリカは幸太郎に顔を向けて答えた。
「部活は柔道部だけれどね」
「そうだよな」
「お父さんがロシア人だからね」
「元特殊部隊の将校って本当か?」
「ええ、士官学校出たね」
「凄いな」
「まあロシアじゃ名士だったかも知れないけれど」
 それでもとだ、エリカは幸太郎に自分の父親のことを話した。
「今じゃ普通の警備員よ」
「普通のか?」
「休暇でプラハに旅行に行ってそこでお母さんと知り合って」
「日本人のか」
「いきなり一目惚れしてよ」
「結婚してか」
「日本に来ることになって軍隊も辞めて」
 そしてというのだ。
「今じゃ普通の警備員よ」
「警備員っていってもガードマンとか要人警護じゃないのか?」
 かなり真剣にだ、幸太郎はエリカに彼女の父のことを尋ねた。
「特殊部隊だからな」
「それでコマンドサンボの達人で」
「そんな人だからな」
「お父さん仕事のことお家で話さないから」
 だからと返したエリカだった。
「その辺りは知らないわ」
「そうか」
「そう、あんたに話せる事情はね」
「知らないのか」
「そう、それとコマンドサンボについて知りたいのね」
「そうそう、それが本題だよ」
 まさにとだ、幸太郎はエリカに答えた。
「御前お父さんに教えてもらってるんだよな」
「子供の頃からね、だから今もね」
「やってるんだな」
「そうよ」
 実際にというのだ。
「細かい技とかもやってるわよ」
「それだよ、最近コマンドサンボのことを知ってな」
「それで興味を持って」
「御前に聞いてみたんだけれどな」
「教えて欲しいのね」
「よかったらそうしてくれるか?」
「いいけれど、ただあんたラグビー部でしょ?」
 今度はエリカが幸太郎に尋ねた。
「そっちじゃないの」
「ラグビーやってたらコマンドサンボに興味を持ったら駄目か・」
「その理屈はないけれどね」
「じゃあいいよな」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「間違ってもね」
 こう前置きしてだ、エリカは幸太郎に言った。警告する口調だった。
「真似しないでね」
「コマンドサンボの技はか」
「そしてラグビーにも応用しない」
「危ないからか」
「とんでもなくね」
 このことを言うのだった。
「もっともラグビーには応用出来ないけれどね」
「それはそうか」
「大抵の技はね、ただね」
「それでもか」
「どうしてもっていう時以外にも使わないで」
 こうも注意した。
「いいわね」
「本当にやばい格闘技なんだな」
「今日のお昼暇?」
 エリカは幸太郎に時間のことも尋ねた。 
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