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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第九十二話 ホテルに帰ってその四

「わからない」
「そうですね」
「だからあの人が飲むとだ」
 つまり地が出る時はだ。
「誰も話をしようとしないな」
「わかりませんから」
「言葉がな」
「本当に昔の鹿児島の言葉は」
 僕も言った。
「わからないね」
「義和さんもですわね」
「うん、全くね」
 どうにもとだ、僕は円香さんに答えた。
「実際にね」
「まだああした言葉使える人いますのね」
「若い人でね」
「そんな人は」
 それこそだ。
「もういないと思っていたんだ」
「何故使えるのだ」
 留美さんは首さえ傾げさせている。
「あの人は」
「そのことだね」
「もう減っているというが」
 あの言葉を使える人はだ。
「しかし何故なのだ」
「お祖父さんとお祖母さんに教えてもらったそうなんだ」
「だからか」
「うん、喋られるんだ」
 僕はこう話した。
「ああしてね、ただね」
「普段はだな」
「昔の鹿児島弁はわかりにくいからね」
 聞いていてもだ、もう日本語には聞こえない位だ。
「だからね」
「気を使ってか、周りに」
「標準語使ってるんだ」
 言葉のニュアンスは鹿児島、今のそれでもだ。
「そうしてるんだ」
「そうなのだな」
「けれど飲むとね」
 暴れたり絡んだりすることはなくてもだ。
「ああしてね」
「出るのか」
「うん、どうしてもね」
「そうなのだな」
「まああの言葉を出されると」
 主将が飲みながらぽつりぽつりと出しているその言葉を聞いてもだ。
「僕もね」
「わからないか」
「全くね」
「柔道部の者達は適当に返してるな」
「わかってる人殆どいないよ」
 その柔道部でもだ。
「何しろ独特な言葉だから」
「日本語でもだな」
「うん、あと合気道部の人で」
「辻島さんですわね」 
 その合気道部の円香さんが応えた。
「二年の」
「うん、あの娘ね」
 黒髪を長く伸ばして白い肌の奇麗な人だ、僕達二年生の間でもかなり人気のある娘の一人だ。性格も優しくてしっかりしている。
「あの娘津軽で」
「普通の時は標準語ですが」
「時々出るよね」
「はい、津軽弁が」
「あそこの言葉もね」
 長い間日本の北の端だったここの言葉もだ。 
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