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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第九十二話 ホテルに帰ってその三

「立派な人だよ」
「うむ、確かにな」
 留美さんが僕に自分が見た主将について語った。
「あの人は出来た人だ」
「柔道部でもね」
「人望があるな」
「ちょっと押し付けがましいところもあるけれど」
 強引というかだ。
「硬派なんだよ」
「古い言葉だな」
「うん、もうね」
 硬派といっても今は死語になっているだろうか、既に。
「けれどね」
「それでもだな」
「うん、あの人はお酒を飲んでもね」
 浴びる様に飲んでもだ。
「ああして乱れないんだ」
「今日もかなりのものだがな」
 場全体がだ、もう飲んで騒いで壮絶なことになっている。その乱れ方は飲み屋のそれだ。それも飲み放題食べ放題のだ。
「しかしな」
「主将はね」
「あの通りだな」
「うん、乱れないんだ」
 幾ら飲んでもだ。
「ただ、朝起きたらね」
「二日酔いか」
「そうなるらしいけれど」
「そうは見えないが」
「外見に出ないらしいんだ」
 顔にはだ。
「それでも頭はね」
「痛むのか」
「二日酔いになるとね」
 二日酔い独特の痛みだ、あの痛みは経験者でないとわからない。鈍くてしかも重い、主将もその痛みがあるという。
「そうなるらしいよ、けれどね」
「お風呂でか」
「一気に解消するんだ」
 二日酔い自体をだ。
「汗をかいてね」
「痛みを見せずにか」
「そうなんだ」
「成程な」
「お酒はね」
 まさになのだ、このことは。
「顔に出すなっていう人だから」
「格好いいな」
「硬派的な」
「武士の様だ」
 留美さんはこうも言った。
「あの人はな」
「そうですわね、ただ」
 円香さんは僕のその言葉を聞いてこうも言った。
「あの人の言葉は」
「うむ、飲むとな」
「出ますわね」
「ああ、方言だね」
 僕は二人が言いたいことが何かわかった、主将はそのことでも有名な人だからだ。
「あの人鹿児島だからね」
「実は、ですの」
 円香さんは戸惑う声で僕に話した。
「わたくし鹿児島弁はわからなくて」
「私もだ」
 留美さんも言う。
「昔の鹿児島弁はだ」
「どうにも」
「鹿児島弁はわかりにくい」
「特に昔のそれは」
「あえてそうしたというが」
 他国の人間、間者に話を聞かれてもわからない様にしたとのことだ、昔の鹿児島弁は今のそれよりも遥かにわかりいくい。 
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