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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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最大の好機

 
前書き
なんかイヤホンの調子が悪い。
スマホといいイヤホンといい、まだ買って半年も経ってないのに不具合が起きるとは・・・運が悪いのかな?

シリル「文章も調子悪いしね」
レオン「それは元々じゃね?」 

 
シリルside

「カグラさんが出てきたか」

ウェンディたちが見事なコンビネーションでリオンさんを押していたため、このままいけるかと思った矢先相手は動いてきた。プレイヤーのカグラさんを前線に上げない理由が何かあると思っていたけど、ここで出てきたということは大した問題ではなかったんだろうな。

「俺も行こうか?」
「大丈夫!!尻・・・シリルは下がってて」

一瞬殺意が湧いてきたような気がしたけど、必死に心を落ち着けようと深呼吸する。

「相手は二人になったけど、大丈夫だよね?」
「もちろんだよ!!シェリア」
「ソフィアたちに任せなよ」

互いに目配りをして意志の確認をし合う三人の少女たち。相手は一人増えたと言ってもまだ人数的にはこちらが優勢。それも、向こうはプレイヤーが前線に上がっているだけに気が抜けないはず。こっちはまだ俺が体力を温存できているし、なんか勝てそうな気がするぞ!!

「流れを変えないとな」
「あぁ」

抜刀していた刀をこちらに向け、目付きを鋭くさせる女性剣士。彼女に並ぶ氷の造形魔導士もさっきまでよりも真剣な表情でこちらを見据えている。

「先手必勝!!」

最初に動き出したのはなんと返し魔法(カウンター)を得意とする銀髪の人魚。まさか彼女が最初に動くとは思っていなかっただけに驚きを隠せない。

「お前が最初に動いてくるのか」

それに対抗して動き出したのは彼女と同じギルドの女性ではなく、我が蛇姫の鱗(ラミアスケイル)のエース。

「リオンさんなんか軽く捻っちゃうもんね!!」
「やれるものならやってみろ」

売り言葉に買い言葉。ソフィアの挑発を受けたリオンさんは彼女を倒すべく、走りながら両手を合わせて魔法の体勢へと入る。

「アイスメイク・・・」

近付けば近づくほどソフィアの方が不利になるはずなのに、なぜか足を緩めることなく、むしろ加速していくかのような少女。

「なんて・・・」

そしてリオンさんの造形が繰り出されようとした瞬間、

「ウッソ~!!」

ソフィアは滑り込むようにして彼の股下をすり抜けていった。

「なっ・・・」

自分に戦いを挑んでいたと思っていた相手にスカされた彼は急ブレーキをかけて立ち止まる。背中から滑ったソフィアはその勢いを利用して立ち上がると、剣を構えるプレイヤーへと突進していく。

「へへ、始めから狙いはカグラさん一拓だよぉ」

振り向くことなどせずにリオンさんをバカにしたようなトーンで言葉を発するソフィアに、振り向いた青年は奥歯を噛み締めている。

「やらせ――――」

プレイヤーに近づけさせるものかと再び魔法の体勢へと移行する氷の魔導士。だが・・・

「天神の・・・」
「天竜の・・・」
「!!」

後ろから二つの魔力を感じ、すぐさま体を反転させる。

北風(ボレアス)!!」
「翼撃!!」

神の風と竜の風が合わさりリオンさんを強襲するが、さすがは蛇姫の鱗(ラミアスケイル)のエースといったところか、二つの交わる風の隙間を縫っていくように軽々交わしていく。

「そっちは任せるぞ!!カグラ!!」
「わかった」

今から追いかけては到底間に合わないところまで行ってしまっているソフィアを見て標的にされているカグラさんに任せて自分はシェリアとウェンディの相手をすることにしたリオンさん。
カグラさんはそれを受け、猪突猛進してくる少女を見据えて剣を構える。

「ふふっ、カグラちゃん隙だらけ」

さん付けからいきなりのちゃん付けに嫌な予感を感じたのか、その場から離れようと横っ飛びするカグラさん。

「ありゃ、逃げないでよぉ」

横に飛んでいった彼女を見ていたソフィアは少し距離をおいて立ち止まると、両手の人差し指と親指でひし形を作り、彼女をその枠の中に捉えようとする。

「ソフィア!!それをやったら本気で殺す!!」
「キャー、カグラちゃん怖い~(笑)」

女の子は誰だって可愛くというふざけたネーミングの魔法を発動しようとしているソフィアの視界に捉えられないように動き回りながら睨み付けるカグラさんだったが、肝心のソフィアは全く怖がっていないようで、完全におふざけモードに入っていた。

「ならば・・・」

いつまでも指で作ったひし形を崩さない少女にイライラしてきた彼女は避けるための行動から彼女へと突っ込む行動へと移行する。

「やられる前に殺る!!」

明らかに殺意を感じさせる目をしている剣士は、自分を辱しめようとする少女を叩き斬ろうとトップスピードで走ってくる。

「うわっ!!キタ!!」

勢いよく迫ってくる彼女の姿に一瞬体をビクつかせたソフィアだたが、一直線に向かってくるなら予測ができるはずとあえて体勢を崩さない。

「イメ――――」

果たしてどんな衣装に変えようとしているのかはわからないが、彼女の趣味である女の子女の子した服に変えようとしているんだろうが、それよりも早く・・・

「遅い!!」

カグラさんが彼女の懐に入っていた。

「もらった!!」

少女の右腰に付けた弱点バッジを切り裂こうと剣を振るう。

「わっと!!」

しかし、寸でのところで腰を引き、ソフィアはギリギリ退場から逃れていた。

「ちょっと!!今本気で殺そうとしてなかった!?」
「安心しろ。痛みを感じないように一瞬で殺ってやる」
「それは安心できないよ!!」

一度距離を開けてカグラさんの殺気を抑えようとするソフィアだが、よほど日頃の恨みが溜まっているのか、彼女の殺気はより一層高まっていた。

「アイスメイク・・・白虎(スノータイガー)!!」
「「きゃあああああああ!!」」

一方こちらでは、リオンさんが二人を相手に次々に魔法を繰り出し攻め立てていた。

「ウェンディ!!シェリア!!」

宙に浮き上がり、思い切り地面に叩きつけられた少女たちに離れた場所から声をかける。

「だ・・・大丈夫」
「シリルは出てきたらダメだよ」

その声に彼女たちは体を起こしながら答える。ウェンディたちの言う通り、迂闊に戦いに参戦するわけには行かないけど、かといってただ見ているだけでいいのだろうか?

「そうだ!!」

この場で何かできることはないかと頭をしばし悩ませると、あることが脳裏をよぎる。このゲーム・・・ただ戦うだけが勝負を決めるわけではないんだ。

「スペル看破」

ソフィアと対峙しているカグラさんを見ながら試しに一つの単語を呟いてみる。しかし、彼女は何も影響は受けた様子はなく、キレのある動きで同ギルドの少女を圧倒していた。

「これじゃないか」

そもそも一発で当てることなんてほぼ不可能に近いから、一喜一憂なんかしてられない。てかよく考えたらこっちが使っている文字は向こうも使えないんだから、それを省いた五文字を候補を絞ればいいのか。

「敵能力可視、能力可視化、能力分析可、五文字可視、敵力分析知、能力名見知、五文字分析、敵能力理解、特殊能力見、特殊能力知」

何かしらの制限やハンデがあるわけではないので、とにかくカグラさんの能力になりそうなものを片っ端から挙げていく。

「怨刀・不倶戴天・斬の型!!」
「うわっ!!」

俺がカグラさんを硬直させようとしている最中、ターゲットの人物は全く動きが遅くなることすらなく、目の前の少女を圧倒していた。ソフィアは返し魔法(カウンター)を使うんだけど、彼女の動きがよすぎてそれを発動させてもらえない。

「はっ!!」
「キャフッ!!」

序盤はなんとか回避していたものの、次第に動きを見破られて攻撃を受け始めているソフィア。しかし、彼女も弱点だけはなんとか守り抜いており、ギリギリのところで粘っていた。

「これで終わりだ」

カグラさんはそう言うと、刀を鞘に納めて身を低く構える。初めて見た形の構えに、思わず視線がそこで止まる。

「えぇ!?それを今やっちゃうの!?」

俺はその構えに見覚えはないが、ソフィアはどうやら知っているらしく表情が強張っていた。

「問答無用!!」

低い姿勢から目線の高さを変えずに銀髪の人魚目掛けて加速していく。そのトップスピードはいつもよりも早く、あっという間にソフィアを射程圏内に捉えた。

「怨刀・不倶戴天!!」

腰の高さほどに身を屈めた彼女は下からターゲットの弱点を見上げる。対するソフィアはそこを守ろうと手を伸ばすが、コンマ数秒遅かった。

「人魚の型!!」

鞘に納めたまま刀を振り上げ、少女の脇腹を強打する。その瞬間、バキッと嫌な音が周囲に響いた。

『ソフィア選手!!弱点部位へのダメージにより退場です!!』
「うぅ・・・そんな・・・」

新技の前になすすべなく弱点を撃ち抜かれた少女は悲しそうな眼差しでこちらを見た後、フィールドの外へと転送されていく。

「次はお前だ、シリル」

ソフィアが完全に消えたのを確認してから顔をこちらに向けるカグラさん。その間も俺はそれらしい五文字をコールしているが、一向に動きを止められる気配がない。

「仕方ない・・・」

ウェンディとシェリアはリオンさんと交戦中で手が離せない。ここはもう大将対決に持ち込んでもいい場面だろう。

「敵能力分析、見える能力、スペル攻略」

ただし、カグラさんをいつでも動けなくできるようにスペルのコールは引き続き行っていく。ちょっと焦ってて時々こっちが使用している文字が入っているスペルをコールしてしまうけど、その辺は多目に見てほしい。

「スペルのコールか・・・確かに一番効果的ではあるが・・・」

鞘ごと腰から抜いていた彼女はそれを元の位置に納めると、ゼロから一気に加速してこちらに迫ってくる。

「コールするのに集中しすぎて、無防備になっているぞ」

向かってくるカグラさんに対抗しようと戦闘の構えに入った。はずだったのに、

「うわっ!!」

電光石火の如き攻撃が腹部を直撃しそうになり、寸前で回避するのがやっとだった。

「水竜の翼撃!!」

刀の頭の部分を打ち込んできたカグラさんに水の翼を作って放つが、さすがの身のこなしであっさりと回避されてしまう。

「水竜の・・・咆哮!」

ひとまずスペルのコールをしている時間はなさそうだ。余計なことを考えながら戦っていたら、あっという間にやられてしまう。

「はぁっ!!」

俺が放った水のブレスを抜刀した刀で真っ二つにする。俺も成長してきてなかなかブレスの力が強くなってきていると思っていたけど、彼女の前ではまだまだ力不足だったわけか。

「怨刀・不倶戴天!!」

ブレスを切り裂いた勢いそのままに地面を強く蹴り、空中に高々と飛び上がる。ここから重力も使って攻撃してくるんだろうと推測し、目を全開にして動きを見る。

「剛の型!!」

予想通りの攻撃を仕掛けてきたので、その場から前に出て交わすと、すぐさま両手首を合わせて振り向く。

「雲竜水!!」

反転させた力も利用しての水圧攻撃。それは俺が元いた場所を強く叩き付けていた彼女に見事に直撃した。

「ぐっ!!」

カグラさんの弱点バッジは左手についている。今の攻撃が直撃したのは背中だったため、決定打にはならなかったが大きなダメージを与えることはできたらしく、彼女は前にのめり込むように倒れた。

「スペル解除、敵能力看破、透視能力w、能力見える、五文字解除」

次の攻撃にすぐさま移れないだろうとここぞとばかりにさっきの続きを始める。動きさえ止めることができれば、勝利することは間違いなくできるはずなんだ。

「くそっ」

俺の声が聞こえたのかどうかはわからないが、慌てたように起き上がりこちらに突っ込んでくる人魚の最強剣士。俺のスペルが発動している限りは攻撃が当たることはないから大丈夫だと思うけど、なんかこの人はスペルの効果を無視して当ててきそうで怖いんだよね。

「知るスペル、見能力既知、特殊能力破、相手指定視、五文字透視、完全能力滅、敵能力透視」

ギリギリのところまで粘ってコールをしてみることにした俺。徐々に近づいてくるカグラさんに心拍数が上がってくるのを感じたが、後ほんの数メートルというところで・・・

カチッ

カグラさんの動きが停止した。

「おぉっ!?やった!!」

一体どれが正解だったのかはわからないが、とにかく彼女の5スペルを封印した上に10秒間の硬直タイムへと突入させることができた。

「今だ!!」

この勝負最大のチャンスを逃すわけにはいかない!!カグラさんが動けないうちに、弱点へ攻撃をしてこの戦いを終わらせてみせる!!

「もらったぁ!!水竜の・・・」

彼女の方から近付いてきていたので、もう目と鼻の先にまで来ている。攻撃を放つまでに10秒なんてかからない。最初の一歩から強く踏み込み、弱点バッジに最高の一撃を叩き込んでやる。

「鉄拳!!」

魔力を纏わせた拳を硬直しているカグラさんの、鞘を押さえる左手甲を打ち抜こうとした。しかし・・・

「カグラ!!」

いつの間にか戻って来ていたリオンさんが彼女の衣服の首元を掴み、自らの方へと引っ張り倒した。

「り・・・リオン」

それと同時にうんともすんとも動かなかったカグラさんの硬直が解けてしまい、助けてくれた青年の顔を見上げている。

「全く・・・無事でよかった」

ふぅっと一息ついて安堵の表情を浮かべるリオンさん。でも彼と戦っていたウェンディとシェリアは?まさかと思い視線を一度切り二人の探す。

「ご・・・ごめんシリル・・・」
「せっかくのチャンスだったのに・・・」

やられてしまったのかと思っていた彼女たちは俺の後ろにやって来ており、申し訳なさそうな顔をしていた。ただ、やられてしまったのかと思っていただけに、二人が無事だったことに安心してホッとする。

「すまん、助かった」
「いい。お前がやられたらそこでおしまいだからな」

倒れているカグラさんに手を貸し、ゆっくりと立たせるリオンさん。これで向こうもスペルを使えなくはなったけど、代わりにこちらもカグラさんを硬直させることができるというアドバンテージを失ってしまった。最大の好機を逃してしまっただけに、ここからどう戦っていくか・・・難しいな・・・







 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
ソフィアが退場させられ、シリルはリオンのせいでせっかくのチャンスを逃す展開。ちなみにカグラの新技はブレサガであった水着verの技をイメージした感じです。 
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