FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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・・・はぁ!?
前書き
カグラとトビーのスペルの文字が一文字被っていたことに気付き大急ぎで修正しました。注意してたつもりだったのにまさかミスるとは・・・ショックorz
第三者side
ダダダダダダダッ
シリルたちが戦いを始めようとしていた頃、彼らの元から音速を凌駕するほどの速度で離れていく二つの人影があった。
(すげえ力・・・左手だけでここまで強く掴めるのか?)
心の中で感想を漏らしたのは不意にタックルを受けた青年。彼を押している少年は、右手で口元を抑え、左腕だけで自身を運んでおり、そんな状況でも決して逃げられるようなミスをしないレオンにトビーは少々・・・いや、かなり驚いていた。
(いつもの俺なら間違いなく動けねぇ・・・いつもの俺ならな)
ガッ
「!!」
捕まれていたトビーが腕を伸ばし、少年の左腕を掴むと、自らの自由を奪うそれを無理矢理引き剥がす。
「オオーン!!」
「!!」
動けるようになった彼はそのまま目の前にいる人物に回し蹴りを入れると、レオンは何もできずに近くにそびえ立っていた巨大な柱に打ち付けられる。
(くっ・・・)
立ち込める砂煙が晴れていくと、きれいに形の整っていたはずの柱の一部が大きく凹んでおり、その中心には背中を強打して、顔を歪める氷の神が尻餅をついていた。
(声も出せないからいつもよりダメージを受けたように感じる・・・)
普通なら攻撃を受けた際に、悲痛な叫びをあげるものだが、今の少年にはそれをすることができない。口を開くとリオンの5スペルの効果により、絶叫することしかできず、かえって喉を酷使し苦痛を味わわなければならないのだ。
(一体リオンくんはどんなスペルを使ってるんだ?)
シェリアとウェンディが考えられる五文字をあげてコールしてみたが、どれも外れだったらしく解除することができなかった。つまり、相手が予測困難なスペルにしていることが想像できる。
(リオンくんのことだから、“さけぶアホ”とか俺を罵倒するスペルを使ってそうだな・・・いや、さすがにそれはないか)
レオンは口元を押さえたまま立ち上がり、敵の姿を見据える。
「オオーン!!今のレオンなら余裕で倒してやるぜ!!」
片腕しか使えない上に口が開かないように力を入れていなければならないレオンと、“絶対無敵強”によって身体能力を強化しているトビー。当然優位性を保っている青年は余裕の笑みを浮かべ、厳しい戦いを強いられる少年は眉間にシワが自然と寄っていた。
「メガメガくらげぇ!!」
長く伸びた爪を駆使して攻撃を加えてくるトビーから一定の距離を保つように後ろへと飛んでいくレオン。だが・・・
カスッ
(っ!?)
いつもなら容易く避けることのできるはずの攻撃が、右肩にわずかではあるがかすっていた。
(ソフィアの言う通り、トビーさんは身体能力向上系のスペルか。動きがいつもよりも遥かに早い!!)
自身の速度に限りなく近付いてくる敵を目にして額に汗が滲んでくる。おまけに、彼は口呼吸を行うことができないため、息が切れると整えるのに時間がかかる。
(息を乱さずに片手で今のトビーさんを倒さないといけないのか。ちょっと・・・いや、かなりキツいかな)
条件があまりにも不利すぎることに戸惑いながらも、今ここで自分が負けることがどれだけチームに影響を与えるかを把握している彼は、やるしかないと腹を括る。
ダッ
本来ならプレスで先制攻撃を行い、体勢の崩れたところを攻めたいところだが、前述の通り口を開くことができないため、懐に入り込むべく地面を蹴る。
「やらせるかよ!!」
(なんでキレてんだよ)
よくわからないタイミングでキレるトビーに心の中で突っ込みながら彼の一手を回避しつつ魔力を左手に集める。
ビュッ
冷気を集めた拳を顔面へと突き刺そうとするレオン。しかし、その動きは見切られており、トビーは頭を下げて難なく回避する。
「当たるかよ!!」
「っ!!」
重心を下げた姿勢から上に上半身が被さっている敵に向かってアッパーパンチを繰り出す。それに対し、レオンは反応が遅れかけたが、体を反らして鼻先を掠める程度に留めることができた。
(ヤバッ。声出そうになった)
だが、反射的に体を反らしたために口から手を外しそうになってしまい、絶叫モードに突入してしまうところだった。
(叫び出したら止まんなくなりそう。向こうの攻撃も対処できないだろうし)
叫んでいる間は無防備な状態になってしまう。そうなればいくらレオンとはいえども強化版トビーに打ち勝つことは困難だ。
(最悪負けても時間だけは稼いでやるか)
この5スペルサバイバルは先に敵チームのプレイヤーを倒した方が勝者となる。小さき魔術師はシリル、人魚の鱗はカグラがプレイヤーとなっているため、この二人の戦いは勝敗に影響がないとも言える。
ならば最低限度の仕事さえしてしまえばいいと考えた少年は、一度呼吸を整えもう一度口をガッチリと塞ぐ。
(それじゃ、死んでくるとするか)
負けて当たり前となれば気が楽だ。そう言わんばかりに緊張感のないほどリラックスしているレオンは、トビーの次の動きを眠そうな目で観察していた。
両軍の最強戦力がしのぎを削っているちょうどその時、別の場所では両チームのプレイヤーを撃破するための戦いが繰り広げられようとしていた。
「シリル、後ろに下がってて」
「カグラ、下がってろ」
両チーム自然と同じ隊形へと変化する。この場にいる小さき魔術師の中でシリルがもっとも強い戦力ではあるが、だからといってプレイヤーである彼を前線で戦わせるのは勇気がいる。そもそも、戦う時間が長くなればなるほど、不利になると考えているのだからできるだけ後方で待機させ、いざと言うときに出てくる“とっておき”にしておきたい。
対して人魚の鱗は人数的にカグラを下げるのは非常に痛手だが、それでも万一を避けておくに越したことはない。
(カグラが負けることなどそうそうないと思うが、スペルを当てられたらまずいからな)
カグラの能力はすでに敵にある程度検討をつけられている。そこから彼女のスペルにたどり着くことは難しいことでは決してない。
(あんな単純なスペルにするべきではなかったか)
リオンの隣から一歩下がりつつ後悔の色が伺える人魚。彼女は相手を硬直させることのできるように今回のスペルを作ったが、その上を行く向こうの能力にほとんど効力が発揮できなかったことで、戦いやすくするはずのスペルが逆に足を引っ張っていると感じていた。
「私もリオンやミリアーナみたいなふざけたスペルにするべきだったな」
誰にも聞こえないほどの小さな声でそう呟いたカグラは、5スペルを作成する時間のことを思い出していた。
カグラside
「それじゃ、カグラは“五文字透視”で決まりでいいか?」
「あぁ」
銀髪の青年の問いに一度うなずき、バッジに自身のスペルを入力していく。
「あとはリオンとミリアーナのスペルだな」
「何か考えてはあるのか?」
最初にソフィアたちに使われたくない文字を出していきトビーのスペルを作った。次にそのスペルは発動しないだろうと考え、ほぼ同じ効果を発揮できるようなスペルをユウカに作った。そして今、プレイヤーである私がピンチに陥ってもすぐにひっくり返せるようなスペルを作ってくれた。
「俺たちはシリルとレオンを動けなくスペルにしたいが・・・レオンはともかくシリルをどうするかだな」
「“シリル”は向こうも被せてくるだろうしね」
ここまでは自分たちの能力を上げるスペルを作ってきたが、ここで発想を転換して敵の戦力を低下させるスペルを作ろうと考えたリオン。しかし、それは向こうも考えているだろうし、何か予想外な文字を考えなくては・・・ん?
「“尻流亀甲縛”なんてどうだ?」
「お前、意味わかってるのか?」
なぜかひきつった顔をした彼の言葉に首を傾げる。ソフィアとアラーニャが話をしていた時に聞こえてきたから覚えていたのだが、何かおかしなところでもあったのだろうか?
「まぁいいか。ミリアーナはそれで」
「ミャア!?」
速攻で決定した自分のスペルに納得できないといった表情のミリアーナ。しかし、リオンに説得され渋々といった様子で納得していた。
「さて、これで全員決まったな」
「ミャア?リオンのは?」
まだリオンのスペルが決まっていなかったはずだが、彼は勝手に話を進めて行こうとするのでミリアーナが止める。
「俺のは始めから決めている。ただ、お前らのと被らないように確認していただけだ」
「ほぅ・・・」
得意気な表情を見せている青年をジト目で見ている私たち。果たしてどんなスペルを考えているのだろうか?聞いてみたいものだ。
「どんなスペルなんだ?」
「これだ」
気になったので聞いてみると、彼はすでに入力していたらしくバッジを見せてくる。そこに映し出された文字を見て思わず絶句した。
“金髪うわー”
「「「「・・・はぁ!?」」」」
あまりのスペル名に全員の目が点になった。“金髪うわー”って・・・はぁ!?
「お前ふざけてんのかよぉ!?」
「キレんなよ」
「ミャア!!これはひどすぎるよ!!」
このスペルにはトビーたちも怒り狂っている。しかし、当のリオンは不思議そうな顔をしており、なぜこんなに不評なのかわからないといった顔をしていた。
「何をそんなに怒っているんだ?」
「怒るに決まってんだろ!!」
「そうだよ!!ふざけすぎだよ!!」
一体どういう思考の元この単語にたどり着いたのか、そもそもどういった効果を持っているスペルなのか、全てが謎に包まれている。
「で?どういう能力なんだこれは?」
「簡単に言うとレオンにうわーと叫ばせる能力だな」
金髪=レオンでレオンにうわーと叫ばせることができるスペル・・・なるほど言われてみるとわか・・・いや、認めたくないけどな?
「一応言い訳を聞こうか?」
「言い訳?俺はただ発動しやすくしただけだが?」
「発動しやすく・・・だと?」
悪びれる様子もなく飄々として青年の次なる言葉に全員が耳を傾ける。
「向こうはレオンを動けなくされるのを恐れているはずだ。恐らくレオンという文字は封じられるはず」
それについては私も理解できる。フィオーレで最強と言っても過言ではないレオンの力を最大限に活かせないのは大きな痛手。ゆえに彼を連想させる単語は使ってくるはずだろう。
「だが、金髪なんて普通は使ってこないだろうし、何より叫ばせる方法が“うわー”なんて普通考えないだろ?」
「それはそうだ」
確かに髪が金色なのはレオンしかいないし、奴に叫ばせることができれば動きも封じて敵の居場所も把握できる。一石二鳥とも言えるか。
「何より相手に当てられることなんかありえないからな」
叫ぶなどの単語を使えば敵から当てられてスペルを発動できなくなる。しかし、こちらですら理解できないようなスペルなら、相手が正解を出すことなど不可能か・・・
「納得できたか?」
「仕方ないか・・・」
納得できたかと言われればできてないと言いたいが、彼の考えももっともではあるし、ここは任せてみることにするか。
第三者side
(今思えば、リオンのスペルは大ファインプレーだったんだろうな)
十中八九当てられることのない・・・つまり硬直させられることのないスペルを保有している彼なら最前線で思う存分戦える。援護に集中することができるなら、カグラも自分の弱点を守り切ることは容易いことだと考えていた。
「天神の・・・」
「アイスメイク・・・」
頬を大きく膨らませるシェリアと両手を合わせて冷気を集めていくリオン。二人とも動き出しはほぼ同じタイミングだった。
「怒号!!」
「スノードラゴン!!」
溜め込んだ空気を一気に吐き出し黒い風の渦を生み出す天神。対してリオンは、巨大な竜を模した氷の造形で対抗する。
「甘い甘い!!」
ぶつかり合うかと思われた両者の先制攻撃。しかし、その間に突如一つの小さな人影が入り込む。
「とうっ!!」
仲間の攻撃に背を向け、氷の竜に正面を向けた銀髪の人魚はその造形を魔力を帯びた手で上に弾き飛ばす。
「チッ!!」
ソフィアによって魔法の軌道が反らされたことに、舌打ちをし、向かってくる黒風に、リオンは手を伸ばし氷の盾を作り出してそれを防ぐ。
「天竜の砕牙!!」
「!?」
シェリアの魔法を防ぐことができたリオンだったが、そのすぐあとに攻めてきた少女には気付くことができていなかった。すでに目の前に来ていた天空の巫女は右手を振るうと、氷の魔導士の胴体を切り付ける。
「やぁっ!!」
ウェンディの攻撃で後方へと押されたリオンに向かって飛び蹴りを放つソフィア。しかし、リオンはその少女の足を倒れながらもなんとか掴むと、氷漬けにして動きを封じる。
「これならどうだ!!」
「わっ!!」
ソフィアの弱点バッジが付けられている右腰を狙って手を伸ばすリオン。しかし、彼女は持ち前の体の柔軟さを使ってなんとか交わす。
「天神の舞!!」
「うおっ!!」
捕まえられ、いつ仕留められてもおかしくないソフィアを助けるために魔法を放つシェリア。その結果、少女の足を掴む青年を吹き飛ばすことに成功した。
「うわあああああああ!!」
ただ、助けようとした仲間も同様に飛ばされてしまっていたが。
「大丈夫?ソフィア」
「だ・・・大丈夫じゃないかも」
目の前に落下したソフィアを心配そうに見つめるシリル。それに対しお腹から落ちた少女は、かなりのダメージを受けたようで動けないでいた。
「リオン、大丈夫か?」
「あぁ。なんとかな」
ソフィア同様に飛ばされたリオンは味方であるプレイヤーの前に落下したが、弱みを見せたくないのかすぐさま立ち上がる。うまく受け身を取れていたようで、目立った傷もなくカグラは少し安堵の色を見せている。
「手伝うか?」
「いい・・・と言いたいが、さすがに一人で三人はキツいな」
いつスペルを当てられてもおかしくないためカグラを戦わせるのは気が引けると考えていたリオンだが、自分が退場して1対4になる方がまずいと考え、彼女に視線を向ける。
「いけるか?カグラ」
「あぁ。任せろ」
先にプレイヤーを前線に上げたのは人魚の鱗。この判断が吉と出るか凶と出るか、注目が集まる。
後書き
いかがだったでしょうか?
リオンのスペルが判明した今回。あまりのスペルに突っ込みたい人もいるでしょうがそこは抑えて抑えて。
次からはカグラが参戦しての戦いです。さてさてどうなるのかな?
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