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~異世界BETA大戦~ Muv-Luv Alternative Cross Over Aubird Force

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激戦のロドリグ星①

 
前書き
さて、エレミア星系の有人惑星に降着してしまったBETAを一掃する作戦が発動されました。 

 
エレミア歴1033年6月20日

デトロワ領ロドリグ星へも敵性生物が降着して約2週間程経っていたが、ロドリグ駐留デトロワ軍は本星からの兵員・物資輸送をあまり受けられず、戦線の維持はかなり困難なものであった。
その上敵性生物は降着した(ハイヴ)から湧き出して来て、他の場所にも拠点を作り始めたので、今や完全な排除は難しいものになっていた。

駐留デトロワ軍の司令本部は、再三援軍要請を行っていたが、ここへ来てようやくデトロワ本国が援軍を編制・進発した上でオルキスとアマティスへも援軍を要請、両国は即日に受託し、既に準備を終えていた両軍は直ちに進発した。

デトロワ本国の援軍1個艦隊は2日で到着したが、ロドリグ駐留軍、そしてオルキスやアマティスからの警告や情報を全て軽視して、到着するやいなや全軍による突撃を敢行、地上へのガロッグ7集中運用により敵ハイヴのうち2つは潰したが、光線級の激しい反撃に晒されて大打撃を蒙り、実に出撃した航空機型戦闘機種の60%、装甲やシールドの弱い小型艦艇を中心とした損害は30%以上に上った。

そして極めつけは重光線級の集中照射を受けたグーデフ級駆逐艦が慌てて進路変更をして、旗艦であるデーベルン級巡洋戦艦と衝突し爆散するという悲劇が起こり、総司令官が戦死したデトロワ軍は、次席の司令官により、出撃させる戦闘機種を全てスクワイエルへ変更の上、敵の浸透を防御する戦術へ変更して、オルキスとアマティスからの援軍を待つ事にした。


エレミア歴1033年6月26日‐恒星標準時10時32分  デトロワ領ロドリグ衛星軌道上

オルキスからの援軍は、その位置がアマティスより近いため、アマティス軍より2日ほど早く到着した。
亜空間ゲートが使用可能な状態であれば、5~6時間という指呼の距離であったが、問題の小惑星群がすべて亜空間ゲートより出現している状況を鑑み、ゲートは使用中止となっている為6日間という行程がかかった。

オルキスからの援軍は、機動第1艦隊、機動第6艦隊の2個艦隊で総司令官は先日昇進となったカイン・ディー大将となった。
機動第1艦隊の戦力は、6個戦隊、旗艦バーナントR級戦艦“オルフェーリア”以下、改エルガウェイン級戦艦12隻、ソルデューヌⅢ級航宙母艦12隻、ガストーニュR級重巡洋艦24隻、ガートヴァルⅡ級駆逐艦60隻、補給艦12隻、計121隻であった。
艦載機は480機、4個連隊+1個補給警護大隊+旗艦直衛(情報部)1個中隊で構成された1個機動師団である。

機動第六艦隊は司令官アルハド・レックス中将座乗の旗艦バーナント級戦艦“ブールガル”以下、編成・艦艇数は第一艦隊と同じである。
余談だが、ディーの昇進に伴いダイスケも昇進して中佐となった。

オルキス艦隊はアマティス艦隊よりも早くに到着したが参謀本部より単独攻撃許可が出ていないため、ロドリグの衛星軌道上に待機をしていた。

到着後、デトロワからの攻撃要請がオルキス軍司令部へ矢のように届いたらしく、当初予定していたアマティス艦隊と足並みを揃えるのはやめて攻撃を決定、その旨が派遣艦隊へ伝えられた。
「つい先ほど統合軍司令部より作戦実施の許可が下された。」そういってディーは全艦隊へのソリヴィジョン回線を開く。

「諸君、カイン・ディーだ。残念だが、そろそろピクニックの時間は終わりだ!全艦へ通達!恒星標準時12:00を以てロドリグ大気圏内へ突入。作戦第一段階、ロドリグ首都ガザノヴァ付近の敵性生物を一掃、作戦第二段階は、やつらの“巣”を攻略する。大気圏突入後、機動師団各隊はオペレーションタブ(命令コード)6548を開封!所定の作戦行動に移るように。」命令一下、2個艦隊242隻の艦艇は臨戦待機から第一級戦闘配備へと移行する。

エレミア歴1033年8月12日‐恒星標準時12時32分  デトロワ領ロドリグ首都ガザノヴァ近郊

「死ね化け物―――――!!」
倒しても倒しても向かってくる赤色の気持ち悪い体躯の敵性生物(戦車級BETA)に向かって、装甲車の車載機銃を乱射しながら、デトロワ兵の軍曹は叫んでいた。

デトロワ連邦軍ロドリグ駐留第3地上警備師団は既にその40%の兵力を失い、通常であれば壊滅状態に陥っている。

そして彼らが今まで嫌というほど目撃した光景‐敵性生物に弾幕を突破されて装甲車ごと、あるいは直接に捕獲されて貪り食われる友軍兵士‐そしていつ彼らと同じ末路を辿る事になるかも知れないという恐怖を跳ね除けるのは古参の兵士でも容易な事ではなかった。

やがて弾倉が空になり、軍曹がリロードしているその時、ついに赤い姿、腹の真ん中に大きい口がある異形の怪物達(戦車級)が弾幕をかいくぐって、彼の搭乗している装甲車へ接近してきた。
その動きは素早く、あっという間に装甲車へ取りついた。

そして軍曹がいよいよ自決を覚悟の上でグレネードを起動して化け物を道連れにするしかないと思った時―――――――突然に敵性生物が次々と大口径の弾や光学兵器に射抜かれ、砕かれ、ミンチのようになって、崩れ去った。同時に轟音が鳴り響き、その上を人型の機動兵器が次々と飛来する。‐オルキス統合軍機動第1艦隊所属の第14空間機動師団432機のスクワイエル‐である。

彼は幸運にも助かった。そして周囲を見渡すとまばらになってはいるが、まだ生き残っている仲間達を見つけ、ほっと胸をなで下ろすと、今まで信じたことも無かった神に感謝を捧げた。

「ロアーヌ01よりロアーヌ全機へ!オペレーションタブ6548‐03を開封!指示通り中隊単位での連携を基本とします。いい?生体光学兵器が優先的な撃破目標よ!おチビとノッポの2種いるらしいけど、一匹たりとも逃さないようにね!位置は随時マーカーにプロットしてあるから、そこを目指して!奴らにたっぷりとランチを食べさせてあげて!ランディール中隊は私に随伴!それから、各支援砲撃中隊は後衛部隊の掩護の元、速やかに展開するようにね!」
ロアーヌ連隊の連隊長であるエミー・アントワープ中佐が移動中に彼女の部下たちへ指示を飛ばす。
「「「「「「「ラジャ―――!!!」」」」」」」

アントワープが所属する第14空間機動師団はロアーヌ、ビクスン、ファーデッド、ザカリスの4個連隊から成り、師団長は、アントワープと同じくエレミア戦役からの上官であるロドニー・ライズマン准将である。
師団の主力スクワイエル機は最新型のジグレータMk4。他国の多くの戦後改良型スクワイエル同様人型により近く再デザインされ、細身の流線型ラインが美しい機体であるが、他国のスクワイエルと比べるとやや華奢に見える。
しかしながら他国のスクワイエルよりもシールドの強度が特に高く、生存性能はかなり高い。オルキス軍は、エレミア戦役での激戦で多くの男性パイロットが戦死している事もあり、ここ数年は女性パイロットが圧倒的に多く、人型への改良と生存性能の向上はその為でもあると言うまことしやかな噂も一部にはある。
元より生存性能の大幅な向上を目指した結果ではあるので、これもあながち間違ってはいない。
だが、実際は人型への改修はあるひとつのイレギュラーな事象によるものであった事は軍高官はじめ一部の人間しか知らない。

一方、支援砲撃中隊は、重武装のロザイルMk3を使用している。
こちらは重武装ゆえに重厚で武骨にさえ見える逞しい機体である。
装甲もかなり厚いのだが、双発の核融合炉エンジンを搭載しているため、見た目に反して意外に機動性能が高い。

実はエレミア戦役でスクワイエル部隊の損害が大きかったオルキスとデュミナスは戦術や設計思想の転換により徹底した生存性能の向上を図っており、その結晶というべき共同開発による新型高機動制御CPUや重力制御ユニットを積載している為、大気圏内でもかなり機動性能が高く、この方面では他国の追従を許していない。

スクワイエルの武装は携行するライフル型武装と背面にセットされる固定型武装とがある。
オルキス軍のライフル型武装は中口径のグリック(実体弾型)もしくはLG25(光学兵器型)に小口径のズファ(実体弾型)が一体化している。
グリックやズファなどの実体弾は背面にセットされる固定武装ユニットから給弾される。
LG25も固定武装ユニットにエネルギーパックが内蔵をされている。

やがて前線にジグレータが展開、移動中にCPから得た情報と、おとりミサイルで光線級個体の位置を全て把握した彼らは、それらの掃討戦を開始した。
まずは、時速170kmで突っ込んでくる、突撃級をいなしつつすれ違い様に両端の敵に弾を浴びせ、次々と斃し、その死体を積み上げて後続の速度を鈍らせる。

続いて大きな爪をもつ要撃級は正面からグリックかLG-25ライフルで仕留めて、どんどん奥へ突っ込む。
途中で沸くように現れる腹に口のある戦車級や頭の大きい白くてのそのそした兵士級、大きな手のような頭部を持った闘士級はズファで掃射して殲滅、そして更に奥のその先には一際図体のでかい仮面をつけたような頭部と虫のような体型の合わさった要塞級が、光線級と重光線級をかばうようにその周囲に展開していた。

「!ローブ大隊とクルーズ大隊は生体光学兵器を防護している大きいの(要塞級)を撃破して!残りは邪魔になる敵だけを倒して突破!大小の生体光学兵器を殲滅!全機突入!」「「「「「「「ラジャー(了解)」」」」」」」命令一下、全機所定の戦闘機動へ移る。

要塞級を突破するのにトリッキーな制御が必要だったが、その抜けた先には、重光線級が50体ばかりと光線級が200体ほどいた。そして各機は司令制御AIから、それぞれに割り当てられた目標を潰すべくそれぞれの機首を巡らせた。

こちらが要塞級を背にしている為、敵はフレンドリファイアを恐れてか、レーザー照射をしてくるものはわずかであった。
こちらの味方が仲間と重なる射線軸から外れた場合のみ、容赦なく撃ってくる。各機はたくみに機を操り、1体づつ確実に仕留めて行った。

そして光線級種を9割以上あらかた片づけた頃、途中で救援後に同行していたデトロワ軍の旧式スクワイエル部隊バール中隊の中で調子に乗って高度を上げた機体がいた。
「バール08、高度をさげろ、狙撃されるぞ!!」バール中隊長が怒鳴って引き戻そうとした―――――――だが既に遅かった。
瞬く間に5本のレーザーがその機体に集中して浴びせられる。
回避行動を取るが、開けた空間であり回避機動では中々射線を外す事が出来なかった。
10秒はシールドで耐えた・・・・が、とうとうシールドを貫通され、コクピット部にごっそりと穴が開いてしまった。パイロットは即死・・・・灼熱により操縦ユニットと共に消滅していた。

主を失った機体はコントロールをも失い、敵の巣の入口方向へ落下する。
その時警報とともにアントワープ中佐のVR投影に、落下していく機体のステータス情報が表示されていた。
―――――――落下中のダインType:R 核融合炉および制御システム破損。臨界暴発まで3分?!―――
「ロアーヌおよびバール全機!一旦2次防衛ラインまで緊急退避!!バール08が暴発する!」
ロアーヌ連隊とバール中隊各機は急いで反転、次々と後退していく。

そして2分後―――――――轟音とともに黒い球体が現れ、周囲の敵性生物を吹き飛ばす。
退避した機体にも様々な破片が飛び散り、乾いた金属音がいくつも重なる。
強烈な電磁波により、一時的にレーダーが不能になり、周囲の索敵が効かず、しかも砂塵がごうごうと舞い、視界がほとんど無かった為、ロアーヌ隊はひとまず全周囲警戒の陣を張った。

やがて砂塵が切れ、レーダーも回復する。だが、至近距離の敵の真ん中に2機のスクワイエルらしき機体が取り残されているのが発見された。
その先にも何機か発見したが、そちらは他の連隊の担当空域であるため、それらは一旦思考の埒外にする。
ロアーヌ連隊とバール中隊は先ほどの爆発をもたらした被撃墜機以外は全機撤退に成功している。
―――ではいったいどこの機体だろう??

先ほどの爆発で故障したか、IFFを意図的に切っているデトロワ軍の機体なのだろうかと、アントワープはバール中隊の中隊長に確認することにした。
「バール隊にお聞きしますが、デトロワ軍でIFF非搭載もしくはOFFモードにしている機体や部隊はありますか?」
「・・・申し訳ありません、中佐。小官の知る限りではデトロワ軍の全部隊にエレミア規格のIFF起動運用命令が最優先通達されていますので、そのような事は無いと思われます。」
デトロワ軍の大尉が、少々納得しないというような口調で応じる。
「了解しました。あくまでも確認の為であり他意はありませんので、どうかご理解くださいね。」
他軍だし、いちおう気を遣っておきますか・・・。

しかし状況がわからない上に、忌々しくも何にもおいて救援しなくてはならない状況だ。

「ロアーヌ全機!これより敵陣に取り残されている2機のスクワイエル救出を最優先で行います。
救出後はかねての作戦通り、戦線を押し上げて巣の掃除に取り掛かるわよ!」「「「「「「「ラジャ―――!!!」」」」」」」
「バール隊は後退して自軍HQの指揮下へ戻って下さい!」
「了解しました!ここまでの掩護ありがとうございました!」

108機のジグレータが一斉に前進する。やがて、敵中に孤立した2機を発見する。周囲を囲む敵に向かってM-61bホバートⅡやグリックMk.3とはかなり異なった形状の機銃を乱射している。
よく見ると、今まで見たことが無い型だが戦後のスクワイエルの規格に近い人型形状のもので、ジグレータ並みに華奢な機体でもある。

照合をかけてもデータベースに全く記録が無い。
「全く記録に無い機体・・・デトロワの新型機?」
「ですが、隊長、あの機体見るからに動作緩慢で、とても新型機とは思えません。CPUか駆動系システムが故障でもしているのでしょうか?」副官のジーナ・ファリス大尉は訝しげに応える。
「あの爆発の圏内にいたからね、そうであってもおかしくはないわ」
「どちらにしても、あれは化け物ではなく、明らかに私達と同じ人類のものよ。周囲の敵を一掃してからあの所属未確認の2機を保護します。ロアーヌ全機突入!」「「「「「「「ラジャ―――!!!」」」」」」」
 
 

 
後書き
ロドリグはデトロワ連邦を構成する惑星の一つです。
デトロワには、もう一つ連邦を構成するトノスという大きな惑星がありましたが、デュミナス戦役の際にどさくさで独立されてしまい、今はロドリグ星が残るのみとなっています。 
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