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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第八十九話 歴史の資料その七

「しかも二人ですし」
「二人もいるんでしょ」
「いえ、二人だけですから」
 佐々木さんはその数のことも話してくれた。
「そこまで大変でもないです」
「そうなの?」
「上級生がいないので」
「あっ、兵学校は四年でしたね」
 三年の時もあった、僕はここでこのことに気付いた。
「確か」
「そうです、その分先輩がいてです」
「先輩全員がですね」
「鬼だったのですから」
「しかも体罰があったので」
「大変だったそうです」
「上級生ですね」
 そういえば映画でもあった、兵学校の先輩達が何かあると歯を食いしばれと言って鉄拳制裁を振るっていた。それが海軍の伝統だったという。
「あの人達がいたので」
「とにかく最初の一年は殴られっぱなしで」
「三年や四年ですね」
「ですがこの学校は一年です」
 候補生学校はというのだ。
「ほんの」
「ほんのですか」
「遠洋航海を入れると一年半強になりますが」
 半分も増えていた。
「それでもここでは一年です」
「その一年だけでしかも幹事付の人は二人だけで」
「厳しさもかなり緩くなっています」
 兵学校と比べるとだ。
「まだ監獄まではいかないかと」
「そうですか」
「私はそう思います」
「兵学校はそうした場所だったのね」 
 ダオさんは海と校舎を交互に見ながら言った、青と赤の対比が白い砂浜と緑の松林を挟んで存在していた。
「監獄だったのね」
「そうでした」
「入りたくないわね」 
 ダオさんは一言で言った。
「幾ら格好よくても」
「格好いいですか」
「ええ、ダオ軍服好きだし」
 それでというのだ。
「そう思うけれどそこまで厳しいと」
「監獄とまでなりますと」
「入りたくないわね」
「士官は偉いけれど」
 それでもとだ、ラブポーンさんも言う。
「そこまで厳しいとね」
「今じゃ別に士官にならなくてもね」
「偉くなれるしね」
「あんたの国もね」
「そっちもね」
 タイもベトナムもというのだ、国が平和になって豊かになると軍隊の地位が落ちるのはどの国でもわしい。
「だからね」
「特にね」
「そうですね、まあそうした現実もありますが」
 ダオさんは奇麗にスルーしてさらに言った。
「かつてはそうだったということで」
「今は今」
「そういうことね」
「そうです、では次はです」
 僕達が今いる短艇置き場の次は。
「資料館に行きましょう」
「海軍と海自さんの」
「はい、そちらに案内させてもらいます」
「確かそこには」
 日菜子さんは資料館と言ってこう言った。
「森鴎外の筆もありますよね」
「はい、あります」
「あの人のもですね」
「あの人は陸軍ですが」
 陸軍軍医総監だった、小説家であると共に。
「筆もあります」
「そうでしたね」
「他にも色々な資料があります」
「特攻隊もありますからね」 
 僕はふと言った。 
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