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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第八十九話 歴史の資料その六

「しかも特にです」
「この季節はね」
「出ますし、とりわけ夜は」
「そうそう、鮫は夜行性なのよ」
 このことは僕も聞いている、だから夜の海は危ないとだ。鮫だけでなく毒針を持っているアカエイもいたりするからだ。
「その鮫に襲われるから」
「脱柵はしない方がいいです」
「逃げるどころかね」
「食べられますから」
 物凄く怖い話になっていた、さっきの幽霊の話よりもそうかも知れない。
「現実問題として」
「何かそう言いますと」 
 日菜子さんはここまで聞いてこう言った。
「刑務所みたいね」
「アルカトラズとカ?」
「そっちあるか?」
 ジューンさんと水蓮さんが日菜子さんに応えた、特にアメリカ人であるジューンさんの声が強かった。
「もうないけれド」
「ああした感じあるか」
「実際昔は監獄とも呼ばれていました」
 佐々木さんはこの言葉にも応えた。
「赤煉瓦の監獄と」
「ああ、赤煉瓦ですか」
「あれですよね」
「はい、あの建物です」
 僕達はここで候補生学校の校舎を見た、兵学校時代からの校舎だ。
「あの建物がまさにそれでした」
「それ何時頃の話ですか?」
「戦前に言われていた言葉です」
 佐々木さんは日菜子さんにすぐに答えた。
「あまりにも厳しいので」
「それで脱出も難しくて」
「そう言われていました、そして今もです」
「厳しいんですね」
「はい、かなり」
 このことは変わらないというのだ、厳しいこと自体は。
「とはいっても兵学校よりは随分と優しいそうですが」
「兵学校はまた別ですね」
「はい、あの頃は」
 佐々木さんは僕の問いにも答えてくれた。
「時代も違いましたし」
「厳しい時代だったってことですね」
「一言で言えばそうなります」
「やっぱりそうですか」
「本当に厳しい時代でした」
 こう僕にも話してくれた。
「戦争と隣り合わせか若しくは実際に戦争をしていた」
 日清日露、二つの世界大戦にだ。確かにこの頃の日本は望む望まないに関わらず戦争と隣り合わせかその中にあった。
「そうした時代だったので」
「どうしても厳しいかったんですね」
「今も戦争の危険はありますが」
 現実としてだ、日本が戦争に巻き込まれる可能性はないかというとゼロじゃない。このことも紛れもない事実だと思う。
「かつてよりは遥かに低いですし、それにそうした厳しい教育は外の世界ではないですね」
「体罰もですね」
「自衛隊も体罰は禁止されていますし」
 それをすれば処罰されるらしい、表に出れば。
「厳しい行いは出来ないです」
「兵学校の時みたいなことは」
「そうです、ですから」
「候補生学校は兵学校よりも穏やかですか」
「遥かにと言われています」
「けれど鬼いるでしょ」 
 ダオさんは佐々木さんにこのことを聞いた。
「赤鬼青鬼が」
「幹事付のことですね」
「そう、滅茶苦茶厳しい」
「確かに厳しいですが体罰は行わないです」
「そうなの」
「雷を落とすだけです」
 幾ら怒ってもというのだ。 
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