八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第八十八話 幹部候補生学校その三
「もうすぐに」
「あれっ、そうしたらですか」
「台風ですか」
「それが起こるんですか」
「ベッドや机の手入れが悪いと」
「台風が起こるですか」
「どうしてなんですか?」
「はい、この学校には鬼がいます」
佐々木二尉は去年僕達がその時の案内役の人から聞いたことをそのまま一年の子達に話していた。話している人が違っていてもだ。
「赤鬼、青鬼が」
「台風に鬼?」
「ここにはいるんですか」
「そうなんですか」
「何か訳わからないですね」
「変な場所ですね、ここ」
「はい、幹部候補生学校の鬼はです」
佐々木さんはさらに話した。
「幹事付という教官でした」
「幹事付ですか」
「その人達が鬼ですか」
「生徒の生活を指導することがお仕事ですが」
それが、なのだ。
「かなり厳しくて」
「ああ、だから鬼ですか」
「厳しいからですか」
「それで鬼なんですね」
「そういうことですね」
「そうです、二人いますので」
それでなのだ。
「赤鬼、青鬼です」
「そうでしたか」
「だから赤鬼と青鬼ですか」
「あまりにも厳しくて」
「それでなんですね」
「そうです、鬼です」
本当にそこまで厳しいらしい、その幹事付も自覚しているというかそうしたお仕事なのであえて厳しくしているとのことだ。
「雷を落としてきます」
「ガチ鬼なんですね」
「それでその鬼の人達の指導が、ですね」
「台風なんですね」
「ベッドの手入れが悪いと」
まさになのだ。
「そのベッドを解体してでもやりなおさせます」
「うわ、凄いですね」
「そうした意味で台風ですか」
「机もですか」
「解体とかしてですか」
「やりなおしです」
その手入れをなのだ。
「勿論服や靴の手入れもチェックされます」
本当に海上自衛隊幹部候補生学校は厳しい、勉強のこともだけれどまずはそこから厳しいのがこの学校なのだ。
「アイロンがけ、埃の有無も」
「制服にアイロンですか」
「それかけてないと駄目ですか」
「そうなんですね」
「そうです、皺一つあれば」
まさにそれだけでだ。
「再点検です」
「滅茶苦茶厳しいですね」
「そんなの普通の学校しないですよ」
「靴も磨かないですし」
「僕そんなことしたことないです」
「僕もですよ」
実は僕もだ、そうしたことはしたことはあまりない。ただ畑中さんはご自身の靴はいつも丁寧に磨いているしアイロンがけもしているみたいだ。
「そんなこともするんですか」
「この学校では」
「制服にアイロンかけたり」
「靴を磨いたり」
「はい、この時期は時に大変ですよ」
佐々木さんは笑って一年の子達にこうも話した。
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