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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第八十八話 幹部候補生学校その四

「夏の靴は白いですから」
「今二尉さんが履いておられる」
「その靴ですか」
「白だからすぐ汚れそうですね」
「確かに手入れ大変ですよね」
「そうです、少しでも汚れたら目立ちます」 
 考えてみれば黒もそうだ、あの色の靴も土埃がやけに目立つ。白の制服もそうだし黒の制服も埃が付いたら目立って仕方ない。
「毎日手入れが大変ですよ」
「ううん、凄いところですね」
「制服や靴の手入れにですよね」
「ベッドや机もあって」
「厳しいんですね」
「そこに勉強とテストがあります」
 まだある場所なのだ、学校であるが故に。
「本当に一年間大変でした」
「それでその一年で、ですね」
「幹部になられたんですね」
「そうなんですね」
「そうでした、そしてその一年の後」
 卒業してすぐにだ。
「七ヶ月遠洋航海に出ます」
「世界一周ですね」
「それに出られるんですね」
「そこで幹部としてのあり方を完全に身に着けます」
 この学校の一年と合わせてだ。
「そうします」
「僕そこまで無理ですね」
 一年の子の一人がここまで聞いて言った、食堂への道を進みながら。白いグラウンドと赤煉瓦の建物、青い海に緑の松林と景色はとてもいい。
「そんな生活は」
「そう言われますか」
「とても」
 心から言っている顔での言葉だった。
「だって自分のお部屋でも」
「こいつ部屋汚いんですよ」
 別の一年の子が彼を指差して佐々木さんに話した。
「同じ寮なんですけれど」
「お部屋がですか」
「はい、かなり」
 こう佐々木さんに話す。
「汚くて」
「ですから」
 彼はまた佐々木さんに話した。
「僕なんかじゃ」
「この学校にはですか」
「というか自衛隊自体がそうですよね」
「はい、そうです」
 にこりと笑ってだ、佐々木さんはこう答えた。
「程度の違いはありますが」
「ベッドも机もお部屋も」
「制服も靴もです。あと作業服も」
 とにかく全部だった。
「手入れは絶対です」
「そんなのだったら」
 それこそというのだ。
「僕無理です」
「そうですか」
「はい、自衛隊は無理ですね」
「やっぱり御前あれになれよ」
 同じ寮生の彼がまた言った。
「漫画家にな」
「そっちだね」
「御前漫画研究会にも入ってて上手だしな」
「そうしようかな」 
「ああ、そうしろよ」
「そうだね、自衛隊はね」
 彼はまた言った。 
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