八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第八十八話 幹部候補生学校その二
「冬は黒でな」
「季節によって制服が変わるんですか」
「色まで」
「そうなんですね」
「それで幹部の人は帽子の顎止めとか階級を表す冬服の袖の輪っかとかが金色になるんだよ、だからな」
その案内役の人を見つつだ、小林君はさらに話した。
「あの人も幹部だよ」
「そうなんですか、じゃあ偉いさんですね」
「幹部っていいいますと」
「相当偉いんですね」
「ははは、そうでもないですよ」
その自衛官の人が笑って言って来た、ここで。
「私は偉くとも何ともないです」
「けれど幹部ですよね」
「そうですよね」
「呼び方はそうですが」
それでもというのだ。
「偉くとも何ともないです」
「そうなんですか」
「幹部でも」
「それでも」
「階級だけのことなので」
それ故にというのだ。
「何でもありません」
「まあそのことはいいとしてな」
ここでまた先生が言って来た。
「今日はこの人が案内してくれるぞ」
「宜しくお願いします、佐々木恭輔といいます」
自衛官さんは海自さんの敬礼をして僕達にあらためて名乗ってくれた。
「階級は二等海尉、年齢は二十七歳独身です」
「いや、独身はいいですけれどね」
「別にそこまでは」
「俺達も気にしていないですから」
「趣味は映画鑑賞とセブンブリッジ、食べ歩きです」
何か趣味もどうでもいいと思った、僕は聞いていて。
「宜しくお願いします」
「はい、お願いします」
「今日は」
「それではまずはお昼ですね」
わかっている様にだ、二尉さんは僕達に言ってきた。
「食堂にどうぞ」
「わかりました」
「それじゃあ」
皆二尉さんの案内を受けてまずは食堂に向かった、その途中に色々なものが見えた。海に学校の中の建物に木々が。
その木を見てだ、一年の子達はこんなことを言った。
「木多いよな」
「ああ、江田島全体そうだけれどな」
「この学校も木多いな」
「松もあるし」
「花もな」
「景観にも気を使ってまして」
二尉さんは僕に言って来た。
「それでなんです」
「木も多いんですね」
「お花も」
「そうなんです、春は」
その季節を聞いてだ、僕達はすぐにわかったけれど二尉さんはさらに言ってきた。
「桜がいいですよ、ただ」
「ただ?」
「ただっていいますと」
「台風はいつもあります」
笑っての言葉だった。
「これが」
「あれっ、夏だけじゃなくて」
「いつもですか?」
「ここは台風が来るんですか」
「少しでもベッドや机の手入れが悪いと」
そうだったらというのだ。
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