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魔法少女リリカルなのは 永久-とわ-の約束

作者:ULLR
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無印編
ジュエルシードを求めて
  少女との出会い

 


 空気の味が変わった。
 目を開けるとそこは山の中。ユー坊ことユーノ・スクライアが俺宛にメッセージを送った現地の名称によると海鳴市藤見町という場所だ。

「さて……ユー坊は何処に……?」

 ユーノを探すために広域サーチを開始するが、反応が鈍い。というか、感じ取れない。
 管理局とか言うボンクラ共が勝手に決めた《魔導師ランク》の位階でAランクであるユーノの魔力―――でなくとも現地協力者の子の魔力―――は魔導師が稀少なこの『地球』において誘蛾灯の如く目立つ筈だが……
 ロストロギアから発せられる微弱な魔力波の妨害だろうか?

 それにしてもこんな辺境にユー坊を越える魔力資質保有者が居るとは。次元世界は広い。

「分からん以上、件の物の発動を待つか、ユー坊が迎えに来るのを待つ他あるまい」

 そう結論付け、消費した魔力を回復する為に休もうとする。だが、この姿は些か目立つ。灰を被ったような銀髪に深紅の目。姿も黒色のシャツにボロボロのマントを羽織っているだけだ。多様な格好がいる管理世界ですら怪しまれるこの姿、この世界の警察組織が間違いなく放ってはおかないような格好だろう。
 外見を変えようと、何も考えずにいつもなっている銀色の狼になろうとして、ふと止める。あれは少しサイズが大きい。

「なら……」

 どんな世界にも小動物というものは存在し、おおよそ愛嬌のある姿ならば人々から警戒されることはない。おまけに形態も似通っている。そして小型の子狐に姿を変えるとその場で蹲った。
 魔法文化がないせいか、この世界の魔素の濃度はやや薄い。次元間転移魔法を行使した際の魔力消費は総量から比べたら微々たるものだが、この世界に長期間滞在しながら正体不明のロストロギアを回収するのは一抹の不安が残る。
 動きがあればすぐ探知出来るよう周囲にサーチャーを飛ばすと、俺はまたゆっくりと眠りに落ちて行った。







 また夢だ。これは割とつい最近の記憶……3、4年の間だったが、数千年ぶりの穏やかな時間だった。

 壊れた俺の心を治してくれた人たちとの記憶だ。

 世は戦乱の時代。原初の魔法体系である《レイヴェント式》は廃れ、現在は近接戦に秀でる《ベルカ式》が主流となっている。
 ここはベルカ北方の王国、シュトゥラ。イングヴァルト王家の統治する自然豊かな国だ。中でも国土の広い面積を占める黒森は魔女の森とも言われ、《レイヴェント式》魔法の色を濃く受け継ぐ《魔女》がいる。
 俺はシュトゥラの食客として雇われていて、専ら王子の護衛にあてられていた。
 護衛、とは言ってもこの時代の王族は自らに常人とは異なる肉体改造を施し、一種の人間兵器としての側面を持っていた。並の人物では肉壁どころか足手まといになりかねない。
 ということもあって、俺は食客という立場でありながら真面目に仕事をせず、のんびりと寛いでいた。主人である王子もそれで構わないというのだから、良いのだ。

「こんな所にいたのですか。寒くはありませんか、キーラ」

 そんな俺を咎める訳でもなく、姿を認めるなり人懐っこそうに近寄って来たのはシュトゥラへ留学中の隣国王女、オリヴィエ・ゼーゲブレヒトだ。

「……今は温暖期だろう」
「今日は曇りです。温暖期と言ってもまだまだ寒い時期ですよ」
「構わない、頑丈な身だしな……そんな事より、人質が自由に出歩いて良いのか、オリヴィエ」

 聖王家と呼ばれる一族の特徴である右目が緑で左目が赤の 虹彩異色オッドアイを何やら面白そうに細めると、オリヴィエは後ろを振り返った。

「クラウス、人質はちゃんと見張っていないとダメだそうです」
「ちゃんと見てますよ。それにオリヴィエは人質ではなく、留学生です」
「……はぁ」

 やって来たのはまだ幼さが残る青年。ここシュトゥラ王国の第一王子、クラウス・G・S・イングヴァルト、俺の主人その人だ。碧銀の髪に右目が紫で左目が青の 虹彩異色オッドアイは王族たる証。
 まあ、居候たる俺にはオリヴィエが逃げようが関係の無い話だが。

「散歩だろ。俺に構わず何処へとなり行ってくれ」

 正直この2人の間にいると精神的にゴリゴリ来るものがある。嫌な訳ではないが、人前でいちゃつくのは遠慮して欲しい。
 周囲からはお前らもう結婚しろよ的な視線を向けられてもどこ吹く風。クラウスは自分の恋心にまだ気づいてないし、オリヴィエはそんな彼の心情を見抜きつつ、ノーアクション。
 それでいて仲睦まじいのだから勘弁して欲しい。

「まあそう言うな。せっかく誘いに来たのだから」
「そうですよ。ほら立って下さい。行きますよ、キーラ」

 曇り空の下を散歩して楽しいのだろうか。疑わしげに2人を見上げると、丁度それが聞こえてきた。

『居たか!?』『いや、こちらにもいらっしゃらない!』『くっ……向こうだ、探せ!』

「…………おい」
「まあ、何だ……その……」

 色々突っ込みたい事はあったが、不毛な言い争いをしている場合ではない。3人して仕事を放り出しているのが露見すれば、小煩い宰相辺りからまた鉄槌が落ちる。
 立ち上がって土埃を払うと、盛大にため息を吐く。曇天の空はそんな俺の内心を映しているかのようだった。





 しかし、こんな安らかなひと時もすぐに終わってしまう。





 場面が変わる。何時の時代も終焉が近付くと目にする光景。古い秩序が壊れ、時代が新たな支配者を受け入れる、破壊と創造の光景……
 見慣れた光景を俺は何の感慨も無しに見渡していた。

「……っ……な、ぜ……頼む、キーラ。オリヴィエを……!!」
「甘えるな、クラウス(小僧)。手を出すなと言ったのはお前だ」
「…………っ!!」

 自ら死地へと赴こうとするオリヴィエを止める為、奮闘するも力を使い果たし、地に伏すクラウス。彼を下したオリヴィエは寂しそうだが、強い意志を持った笑みでこちらを見る。

「感謝します、キーラ。貴方まで止めに来たら正直どうなるか分かりませんでした」
「……俺は偶々この時代を通りかかっただけの流浪者。時代の顛末をひっくり返す権利はない……最も、オリヴィエ。我が大恩ある主君の魂の転生体である君が一言命じれば、すぐにこの戦いを終わらせてみせよう」

 君が採る方法より犠牲は増えるがな、と意地悪く付け足す。そんなことを言えば、彼女の選択など、1つしかあり得ないと知りながら。
 オリヴィエは目を伏せて答える。

「それは出来ませんね。クラウスの志を無意味にしてしまいますし」

『天地に覇をもって、和を成せる王になる』
 つまり、王という絶対的力でもって平和を維持するということ。
 それは、安定した平和の作り方として、1つの正解と言える。

「待ってください!オリヴィエ……私はまだ、貴女に……!!」

 俺はただ黙って見送る。本心を明かせば止めたかった。遥か昔に最後の主君と交わした最後の約束。それは今のオリヴィエのような立場の人を助けることもあった筈なのに。俺は、力を以ってでしか、彼女の強い決意を揺らがせることが出来ない。
 余りに無力。俺は未だ、非力だ。

「……オリヴィエ」

 だから俺は、

「?……どうしましたか、キーラ」

 呼び止めた後に暫し目を泳がせると言った。

「……すまない。()()俺の力が至らなかった。俺は、ずっと生きている。遥か未来、君がまた俺の前に現れたなら―――」

 ―――次こそは守る。
 オリヴィエは目を見開き、クスッと微笑して言った。

「……そうですね。貴方の主君の魂が私に宿ったように、『輪廻』がもし繰り返され、別の誰かに宿り、また私も誰かとして貴方に会えることができたなら……」

 ―――貴方や貴方の『主』、クラウス、エレミア、クロ達と……また……











「…………っ」

 かばっ、と起き上がると辺りは日が暮れかけていた。今は首輪となっているデバイスにも連絡は来ていない。

(……それにしても何故だ。昔の夢などもう滅多に見ていなかったと言うのに。最近は)

 そよ風が木々の間を抜け、葉が擦れ合う。その風は、どこか懐かしい匂いを運んできたような気がした。

「はっ、まさかな……」

 夢の影響で感傷的になるなど自分らしくない。寝直すか移動するか悩んでいると、付近で巨大な魔力波が起こった。

「ロストロギア、ジュエルシード、ね……」

 幾千年の記憶を手繰っても特に関わった覚えは無い、初遭遇の遺物だ。俺が旅をしている本来の目的とは違うが……まあ、たまには寄り道も良いだろう。
 その場で伸びをして、人間体にしようかこのままで行こうか迷う。

「ヘタに警戒されても面倒か……」

 広域に張ったままだったサーチャーを魔力反応があった方角に絞り、詳しい位置を特定するとそこに向かって走り出した。





 そして、

「なのは、レジングハートの起動を!」
「ふぇ!?起動って何だっけ!?」
「『我、使命を~』から始まる起動パスワード!」
「えぇっ!?あんな長いの覚えてないよ!!」
「え……!?も、もう一回言うから、繰り返して!」
「わ、わかった!」

(…………何やってんだ)

 俺が駆けつけた時にちょうど現れたユー坊と『なのは』と呼ばれた現地の少女―――高位の魔法資質を持った協力者の子だろう。相対するのは動物を取り込んだジュエルシード、黒い四足歩行の獣だ。

(……やれやれ、不完全だが大きな力を持っているものほど面倒なものは無いな)

 暴走体に内在する魔力は発動後も安定していない。このままでは手がつけられなくなる可能性がある。

「今回だけだぞ、ユー坊」

 まだ一人前とは言い難いお前を助けてやる。










 ジュエルシードの暴走体がノイズのような咆哮を上げる。目から赤い光を迸らせ、迫ってくる。

「っ……レイジングハート、お願いっ!!」
【All right. Barrierjacket Set up】

 間一髪で変身が完了し、自動設定されている防御魔法で襲いかかってきた暴走体を弾いた。

「うそ……パスワード無しで変身した!?」

 なんかよく分からないけどユーノ君が驚いている。きっとレイジングハートが応えてくれたんだ。

「ありがとう、レイジングハート」
【 Don't worry…… Alert!! Enemy is intensified!!】

「「…………っ!?」」

 レイジングハートの警告の直後、目の前の獣に変化があった。バキ、バキ……という音と共に体が膨れ上がり、背に翼が生えてくる。爪も神社の石畳を抉るほど伸び、大きな穴が空いた。

「まずい!!この魔力……AAAクラス!?」
「それって……!?」
「大体なのはと同じぐらい……いや、まだ上がっている!?」

 体高2mほどだった体躯は5m以上になり、爪一本は自分の体ほどの太さとなっている。

「ユーノ君、どうすれば!?」
「くそ、もっと速くキーラに連絡しておけば……取り合えず一旦引かないと、攻撃魔法で弱らせないと封印出来ない」

 キーラ……くん?誰だろう?

「引くって……ジュエルシードは⁉︎」
「このままじゃなのはが危険だよ。厳しい言い方だけど、街が多少被害を被るのも覚悟で引き揚げるしか……」
「そんな……!?」

 こんなものが暴れたらタダじゃ済まない。すぐ後ろは住宅街、人だっている。

「ダメだよ……そんなの!」
「僕だって嫌だ……だけど、ここでなのはがやられたら、もう止められる可能性がある人は居ない……」

 ユーノ君が顔を伏せて首を振る。悔しい。昨日の夜、ようやく見つけた自分にしか出来ない、誰かのために頑張れること……それがもう……

「なのは……」

 魔法の事は何も分からない。だけど、ここは意地を張ってはいけない事だっていうのは分かる。

「あれ……?」

 だけど、

「なのは!?」

 どうして私はレイジングハートを構えているのだろう?攻撃魔法なんて知らない。イメージも出来ないからレイジングハートが自動発動する事も無い。

「諦めなく、無い……」

 それでも、何か出来ること。たった1つだけ覚えた防御魔法で何とかする。

「やらなくちゃ……私が」

 私だけが戦える力を持っている。だから……使わなきゃ。私にしか出来ない事を、私がやるために!!

「力を貸して、レイジングハート!」
【All right‼︎】

 杖を握り直し、獣――最早怪物――を精一杯睨み付ける。怪物は嘲笑うかのように牙を剥くとゆっくりと前足を振り上げ、押し潰そうとしてきた。その時、

「―――良い覚悟だ」

 巨大な何かが怪物を押し潰した。スタッ、と私の足元に着地したの小さなは白い子狐。閉じていた目を開けると宝石のように綺麗な赤い目が私を見つめた。
 振り向いた直後、その目を見開くと驚いたように大声を発した。

「!?……ミリィ様!?」
「ふぇ?」
「っ、……ああ、いや。人違いだ……封印の準備してくれ」

 白い子狐はまた前を向くとスタスタと地面に伏している怪物に歩んでいく。

「あ、危ないよ!離れて…「なのは!!」…ユーノ君?」
「封印の準備を、キーラが暴走体を抑え込んでくれるから」
「う、うん」

 キーラ君……ユーノ君がさっき言ってた人……というか狐だから友達?レイジングハートをシーリングモードにし、キーラ君の小さな後ろ姿を見詰めた。








『キーラ、遊ぼ♪』『キーラ良い子。ご褒美あげる』『え、要らない?……うぅ、何で?』『最初からそう言いなってば、素直じゃないな~♪』

(ミリィ様……)

 予感していたのだろうか。最近の妙な夢はあの子に出会うことを告げていた?予知夢と言うのはまだ研究段階で不確定のものだった筈だが……。

「……今は、いいか」

 頭の中に蘇った今は亡き懐かしき姿を隅にやり、体内で魔力を加圧していく。魔法を使うまでも無い。たかがAAAクラスの暴走体ごときに魔法は高すぎる。十分に加圧した魔力の塊に物理属性を与え、球体にまとめるとそれを射出。怪物の鼻面に当たったそれは頭を丸ごと消し飛ばした。

「―――ッッッ!!」

 別に口から声を出さなくても良かろうに律儀に無言でのたうち回る怪物。もうひとつ魔力塊を作り出すと放つ、作る、放つ、作る、放つ。再生しようとするそばから破壊の塊が暴走体を穿っていく。比例して怪物の魔力も減っていき、体の大きさも俺より少し大きい程度になった。そして、後ろでユー坊が合図、あの子が封印魔法を発動する。ピンク色の魔力光が暴走体に突き刺さり、ジュエルシードを封印した。

(……魔力光まで)

 何から何まで似ているあの子と彼女。複雑な感情が意識を支配する。

「ユー坊」
「キーラ、助かったよ」

 緊張の糸が切れたのか、魔力の消耗か座り込んでいる女の子とユー坊に近づいていく。取り合えず湧き上がる気持ちを抑え込み、声をかけた。

「大丈夫?怪我は?」
「えと……大丈夫、です」
「うん、良かった。さて、取り合えずここから離れよう。騒ぎになるからね」
「う、うん」

 立てないようなら、人間体になって担ごうと思ったが、どうやら大丈夫なようだった。







「……なのは、昨日の今日で流石に……」
「えと……やっぱりダメかな?」
「うーん……」

 まあ、それは無茶だろう。昨日はユー坊を拾い、今日は俺を拾った高町なのは嬢。昨日は味方してくれたらしい姉上さんも難しい顔をしていらっしゃる。

『あー……。別に外で良いよ?念話でも話せるし、魔法で雨風も凌げる』

 と言うか最初からそのつもりだった。むしろ弱ってるとはいえ同じ年頃の少女と同じ屋根の下で暮らしているユー坊の勇者ぶりに驚きだ。

『でも、ユーノ君のお友達だし……助けて貰ったし』
『……別に気にしなくて良いけど』

 現状確認。俺は今、現地協力者の高町なのは嬢の家に居候出来るか否かの瀬戸際だ。
 子狐姿の俺の設定は昨日、ユーノを預けていた動物病院に同じく保護されていた。原因不明の事故により一部崩壊した(ジュエルシードの仕業)動物病院では保護する余裕が無いので暫くの間預かれないかというもの(作:俺)。

(我ながら無茶な理由付けだな……)

 で、姉上だけでは判断できないという事でなのは嬢のご両親及び兄上の審判は……

「かっわい~♪ほら士郎さん、この子の毛すごく柔らかいわよ」
「おぉ~、いいなコレ。ほら、恭也も」
「……父さん、今はそんな話をしてるんじゃなくて」
「良いじゃないの恭ちゃん。一匹増えたくらい。ね、父さん、母さん」
「まあ、確かに。なのはもちゃんと世話するって言ってるしな」
「そうね。……狐って何食べるのかしら?やっぱり油揚げ?」

 何故か絶賛大好評だった。そしてこちらが多勢と見るや、姉上はひらりと鞍替えした。
 俺は今、高町なのは嬢の母上――桃子さんの膝の上に乗せられ、父上――士郎さんに頭をグリグリと撫でられ、姉上――美由希さんに喉をゴロゴロされている。

『……昨日もこうだったのか?』
『まあ、ね』
『にゃはは……ごめんね、キーラ君』

 たった1人、俺を(敵意は無いが)好奇の視線で見ていない兄上――恭也さん、貴方こそが常識です。だからそんな「俺が、おかしいのか……?」みたいな顔で思い詰めないで頂きたい。

(……それにしても)

 似ている。彼女――俺のかつての『主』、俺が何千年と生き永らえ、戦い続ける理由となった少女に高町なのは嬢は本当にそっくりだ。あの頃着ていたドレスを着ればもう大差ない。姿だけでなく、仕草や表情、匂いまで……全てが懐かしい。
 胸が痛い。直接心臓を握られているような―――内側から来る激しい痛みは何なのだろうか。

『キーラ君……?』
『!?……どうした?』
『えと……何となく辛そうという、悲しそう?だったから……そろそろ助けた方が良いかなって』
『いや……気にしなくていい。助けて欲しいのはそうだが』

 なのは嬢が家族に注意して俺を抱き上げる。ユーノを肩に俺を胸に抱きながら階段を昇ってなのは嬢の私室に入れてもらう。

「まずは僕から話すよ。なのは、彼は僕の友人で名前はキーラ。僕が小さい頃から面倒を見てくれてたから……友人より兄弟とか親子みたいな感じかな」
「へー。キーラ君の方がずっと歳上なんだね」
「それは……えと、良いかな?」
「別に隠す事でも無いだろ。……俺は物凄ーく歳上だよ。君の曾お爺さんよりさらに、ね」
「ふぇ!?」

 驚くのも無理もない。特に証拠は無いが事実だ。

「ど、どのくらい……?」

 と恐る恐る訊ねるなのは嬢に肩を竦めて教える。子狐がやると中々シュールだ。

「7600と……半世紀ぐらいか。端数は覚えてない」
「ななせん……」
「まあ、気にしなくて良いよ。普通に話して貰って構わない」

 小さい子は年齢差を気にしないヤツが多いが、ご両親やこの子自身を見る限りそこら辺の教育をキチンとしているようだ。だが、俺自身はそういう事をあまり気にしない為、気にされない方が良い。

「さてユー坊、俺はどうすればいい?本当なら俺がジュエルシード探しと封印をやってしまっても良いんだが」

 ユーノが俺をここに呼んだ本来の理由はそれだ。だが、一時的に力を借りるだけのはずだったこの高町なのは嬢が思いの外協力的だったため後は2人の意思次第だ。即ちユーノ同様補助に回り、なのは嬢の危険を限りなく排除する、またはお役御免と地球を去る。

「僕としてはキーラの都合が良ければ手伝って欲しいんだけど……なのはを危険な目に遭わせたくないし……」
「都合の方は良い。取り急ぎの用事は無いからな。……後は、君はどうだい?」
「私は……ユーノ君に任せるよ。魔法の事とかまだよく分からないし。……でも、今日みたいに、どうにもならない事が有ったときにキーラ君が居てくれると心強い、かな」
「そうだね。……じゃあ、お願いしても良いかな?キーラ」

 本音は違った。俺はこの子の傍を離れたく無かった。かつて守ると誓い、異性として愛し、守れなかった主。その面影を持つ少女と見えた時、涙が溢れそうになった。理性では別人だと分かっている。
 長く生きたせいで記憶が風化し、少しズレた印象とマッチしてしまっただけかもしれない。守れなかった彼女の面影を感じる少女を代わりに守ってやる事で自己満足しようとしているだけかもしれない。それでも―――

「ああ。よろしく」

 ―――制御の利かない感情の奔流が理性を越えてしまった。
 この出会いはいつかきっと安くない代償を払うことになるだろう。あの惨劇を繰り返す事になるかもしれない。どんなに俺が足掻いても手の届かない力の及ばない事があるかもしれない。

 それでも、

「じゃあ、キーラ君も私の事、名前で呼んでね♪」
「……了解。よろしく、なのは」

 ……破滅の出来事が、起こらないことを信じよう。 
 

 
後書き
とりあえずここまで。
ストックはあまりないので亀更新勘弁でオナシャスw

諸事情によりSAO二次が停滞せざるを得ないのでしばらくは新作と、出来ればまどマギ×SAOの方も書いていきたい。
一応これで3作目になりますかね。
お話の背景等はまた近いうちにつぶやきなどで……

投稿始めなのでたくさん反応が欲しいですwモチベ的に!モチベ的に!(大事なことなので2回)

ではでは 
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