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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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チワワとキツネ

 
前書き
最近携帯の調子が悪い。
たまに画面がチカチカと点滅するんだよね・・・故障かな?
ショップ行ったらなんとかセンターの電話番号もらったけど、普段は何も問題ないから電話しようか迷いどころなんですよね・・・ 

 
カグラside

退場者が集うこの場所に、また一人の少年がやって来た。

「・・・」

悔しさを隠すことなく奥歯を噛み締めているその少年は、鋭くなっている目を上げてこちらを見ると、その光景に固まった。

「・・・何やってるの?」

彼の瞳に映ったのは、椅子に腰掛けている私と、その胸に顔を埋めて沈んでいた気持ちを落ち着けていたシリルだった。

「うわっ!!レオン!!」

友人に見られたくない、甘えている姿を見られた愛くるしさの残る幼子は大慌てで離れると、顔を真っ赤にして椅子に座っている。

「何?姉と妹?」
「そこは弟で!!」

すっかりいつも通りのレオンに戻りシリルをおちょくり始めたのでホッと一安心。したのもつかの間、彼は思い出したかのように私たちに質問をぶつけてきた。

「そういやシリルとカグラさんはどんな着ぐるみだった?」

正直この質問には答えにくい気持ちがある。なぜなら、こいつの着ぐるみは本当に酷かったからだ。
歩くのも手でジェスチャーするのにも適していないあんな着ぐるみを着せられた彼は本当に不幸だと思う。だが、あそこまで不自由な状態で見せたジャンプ力はまさしく天性の才だろう。それがうまく使えなかったのはもったいないが、敵としてはありがたい限りだ。

「私はトラだったぞ」
「俺はウサギ」

隠すと不機嫌になるかもしれないのでここは正直に答えておく。それを聞いたレオンは、大きく目を見開いて硬直していた。

「だ・・・大丈夫?」

動かなくなった少年のそばに近寄り、手を目の前で振って意識があるのかを確認している水竜。だが、氷の神はよほどショックだったらしく、立ったまま呆けていて動く気配がない。

「レオン?」
「ハッ!!」

下から上目遣いをして見上げていた水髪の人物が何度か声をかけると、ようやく少年が意識を取り戻す。

「とりあえず座りなよ」
「そうする」

立ったまま観戦するのは疲れるので、それぞれ椅子に腰を掛ける少年たち。

「納得できない・・・」

ただ、自分の着ぐるみが異常なまでに動きにくかったことに対し、レオンはいつまでも納得できず、なぜあのようなことになったのかを頭を抱えていつまでも考えていた。




















第三者side

レオンとミリアーナ、連続ポイントを上げたことで逆転に成功したユウカは、このままの勢いで勝負を決めてしまいたいと考えていた。

(誰かいないか?)

キョロキョロと周囲に目を配りながら歩を進めていくサル。しばらく歩いていると、その前に一つの着ぐるみが姿を現す。

(オッ?)

胸の前で腕を交差させ、数字を隠しているのは黄色い毛色をしたキツネだった。勝利ポイントまであと2ポイント。ユウカは目の前の獲物を見据え、直ちに作戦を練っていた。



















「ん?」

一方こちらは逆転を許した銀髪の人魚。確実にポイントにできるはずだったレオンを失った彼女は運任せで歩き回っていたのだが、突然その足を止めて後ろを振り返る。

(誰かいる?)

後ろから不意に視線を感じたソフィアはその場で踵を返し元来た道を逆戻りしていく。そして十字路に差し掛かったところで、こちらの様子を伺う真っ白な存在を視界に捉えた。

(チワワ!!)

彼女はその着ぐるみを見て、あまりの可愛らしさに頬を赤くさせる。少女の大きな瞳に映っているのは真っ白な毛で全身が覆われている小型の犬・・・チワワだった。

(か・・・可愛すぎる!!)

チワワの全身をマジマジと見つめている少女は、少しずつ少しずつテンションが上がっていく。

(どうしよう・・・中身はどうでもいいからとりあえずモフモフしたい・・・!!)

普段はセクハラ行為を繰り返しているとはいえどもさすがに女の子、可愛いものには目がない様子。なのでソフィアは、相手に何も伝えることなくいつものように抱き付こうとした。しかし・・・

ヒョイッ

チワワの着ぐるみはまるで予知していたかのように後ろに下がり彼女の魔の手から逃れていた。

(え?)

ずいぶんとあっさりと回避されたことに驚愕の表情を浮かべるソフィア。試しにもう一度抱き付いてみようと足に力を入れると、すでに相手はいつでも避けることのできる体勢になっており、これ以上は無意味だと断念した。
だがそれと同時に、一つの感覚も掴んでいた。

(このチワワ、こっちがソフィアだって知ってた?)

接近していくだけだとそうは警戒をするわけがない。なぜなら、相手がプレイヤーだったら、まず正体を見分けるために行動を起こすのはごく当たり前のことだからだ。
ソフィアは珍しいものを見るように接近していき、何の前触れもなく抱き付こうとした。それなのにあっさりと交わされたと言うことは、相手が事前に自分の中身を知っていたに違いない。

(ソフィアの後をつけてきてた?もしくは・・・)

最初から正体を知っていて、ここで騙して回答不能に追い込もうとしたか。もし後者だとしたら、それができるのはたった一人しか思い付かない。

(もしかしてこのチワワ・・・ユウカさん?)

その可能性は十分に考えられる。先程彼女はレオンを呼ぶために大声で自らの居場所を知らせたわけだし、そこ目指してやって来たユウカと遭遇することも考えられる。

(試してみなきゃ)

相手が敵なのか味方なのかを探るために、ソフィアは探りを入れてみることにした。

「こっちが誰なのかわかってるみたいだけど、あなたは誰?」

彼女がそう言うと、チワワは自分を指差し、ソフィアを指差した後、両手を握り合わせるような行動を見せる。

「??」

その動作が一体何をやっているのか読み取れなかったソフィアは首を傾げしばし思考した後、手をポンッと叩いて両腕を広げる。

「いいよ!!ハグしよ!!」

ブンブンブンブン

“私を”・“あなたが”・“抱き締めて”!!という身勝手な解釈をしたソフィアだったが、チワワは一歩後退りしながら首を横に何度も振る。

「違うの?」

不思議そうな表情で聞いてみると、チワワは肯定するように大きくうなずく。
チワワが表現したかったのは、“私は”・“あなたの”・“味方です”だった。サブはしゃべることができない以上、言葉を動作などで表さなければならず、プレイヤーに伝わりきらないこともあり得る話だ。

「ソフィアのチームの人?」

うなずくチワワ。しかし、ソフィアは当然それを信じるわけがない。彼女は彼をユウカだと考えているわけだから、信じることができないのも当然のこと。

「へぇ、じゃあシリルとウェンディ、どっちなのかな?」

ニヤリッと着ぐるみの中で誰にも見えない笑みを浮かべる銀髪の少女。彼女はチワワがなんと答えるのかを、不敵な笑みを浮かべたまま見つめていた。



















「うまいな」

ゲームの様子を見ていた黒髪の剣士がうなずきながらそう呟く。それを聞いた隣に座る猫耳の女性が、?を浮かべながら顔を見ていた。

「何がうまいの?カグラちゃん」

彼女たちが見ていたのはソフィアとチワワのやり取り。だが、それを見て何がうまいのかさっぱりわからなかったミリアーナは、彼女にその理由を訊ねてみた。

「ソフィアはあえて退場したシリルの名前を出してきた。そして、その様子はユウカも見ていたはずと考えている。もしこれでチワワがウェンディだと名乗れば、より疑いの目を向けてくるはずだぞ」
「なるほど」

カグラの話したソフィアの狙いに納得したミリアーナだったが、カグラの膝の上で抱えられているこちらの少年がある質問をぶつける。

「でも、逆にあの中身がウェンディだったらどうするんですか?あとそろそろ離してください」

子供体温の上に小さくて抱き心地満点のシリルは、カグラの腕の中に収まっている状態で動くに動けない。だが、そんなことなどお構い無しにカグラは彼を抱えたまま自身の考えを述べる。

「あのチワワはウェンディでは間違いなくないだろう」
「え?なんでですか?」

彼女の自信満々の宣言に首をかしげる少年。その考えの裏付けをカグラは語り始めた。

「ウェンディは慎重にことを運んでいくタイプだと私は思う。おまけに、ユウカがソフィアの数字を当てたのはアナウンスで全員が知っている。もしかしたらユウカが見ているかもしれないと考えたら、ウェンディなら数字はできるだけソフィア以外には見せないように注意すると思うんだ」
「そう言われると確かに・・・」

幼い頃から彼女のことを知っている少年も、女性の推測に納得する。ウェンディはそれだけ注意深く、慎重なタイプだと皆考えているようだった。

「ソフィアがクマでユウカさんがサル・・・ミリアーナさんがネコでチワワとキツネ・・・俺の着ぐるみって一体・・・」

三人がゲームの進展を見届けている近くでは、いまだに自身の着ぐるみに納得のいかない少年が頭を抱えてうんうんと唸りながらその原因を探しており、彼女たちはその姿を見て見ぬふりをしていた。



















(さて、なんて答えるかな?)

シリルとウェンディ、どちらを答えるかにより回答の範囲が大きく変わってくる。
シリルと答えればリオン、ウェンディと答えた場合はリオン、ユウカの二拓、ソフィアはそう計算していた。彼女の中ではトビーとミリアーナはこの状況下で抱き付きを回避するようなことはまずできないと考えており、それができるのはこの二人のどちらかだと割り切っていた。
果たしてどちらと回答するのかと見ていると、チワワは意外な行動に打って出た。

右手を引いて、投げ出すようなフォームを見せるチワワを見て、ソフィアは味方であるある少女の姿を思い出した。

(え?)

チワワの行ったそれは、彼女と仲の良い天空の滅神魔法を扱う少女、シェリアの天神の北風(ボレアス)の姿とそっくりだった。

「もしかしてシェリア?」

彼女の問いを肯定するようにうなずくチワワ。それを見たソフィアは驚きを隠せず、混乱していた。

(シェリアが退場してないことを知ってる?それとも本当のシェリア?)

現在ソフィアが退場させたのはシリルとカグラ。対してユウカが退場させたのは恐らくレオンともう一人。

(あんなに早く正解を出せたのは、たぶん味方だったから。つまりリオンさんかトビーさんかミリアーナさんのうちの誰か)

ソフィアのこの推測は正しかった。しかし、それゆえに目の前の人物が誰なのか特定が難しくなってしまった。

「つまりあなたは、シェリアかシェリアのフリをする誰かってことだね?」

カマをかけるつもりでそう聞いてみるが、案の定チワワは動揺を見せない。

(本物のシェリアか見極めたいけど、どんな質問すればなんて答えるのか、イマイチわからないんだよねぇ)

二人は仲がいいことは確かだが、ソフィアがボディタッチで会話をしてきただけに互いのことをそれほど多くは知れていない。わかっていることといえば、周囲の人間も知っているようなことだけ。

(やっぱりソフィアにはこれしかないよね)

しかし、ソフィアには確実に相手が誰なのかを見極めることができる方法が存在する。それさえ出来れば、ソフィアの勝利は確実だ。

「ねぇ?本物のシェリアか簡単に見分ける方法があるんだけど、協力してくれない?」

チワワに詰め寄るように接近していくクマ。チワワはその威圧感に押され、思わず後退りをする。

「お尻触らせてくれない?」
「!?」

ソフィアのまさかのお願いに、大慌てでお尻を隠して首を振るチワワ。

「いいじゃん、ちょっとくらい。いつもやってることだよ?」

一歩、また一歩と詰め寄っていきチワワを壁際へと追い詰めていく。後ろを気にしていなかったチワワはついに、壁に背中をつける格好になってしまった。

「お願い、シェリア」

額と額を合わせて逃げられないようにするソフィア。それで覚悟ができたのか、チワワは振り返り壁に手をつけると、お尻を突き出す。

ニヤッ

その姿を見て笑みを浮かべたソフィアは、ゆっくりと差し出されたお尻へと手を伸ばす。彼女の手がそれに触れた瞬間、チワワの体が小さく震えたのが伝わってきた。

(あれ?この感触・・・)

しばしお尻を撫で回し、感触を確かめていると少女は一つの結論に至った。

(これ、シェリアじゃないや)

何度も何度も触ってきた少女の感触を彼女は確実に覚えている。そのため、今自分が触れているものが天神ではないと見分けるのにそう時間はかからなかった。

「見つけた、81番ユウカ・スズキ」

自分がソフィアだと知っていたこと、シェリアがまだ未回答だと知っていたことからこの人物は敵プレイヤーユウカだと断定しコールを行う。それが誤った回答だとも知らずに。

『ソフィア選手不正解!!これより五分間、またはユウカ選手が回答するまで回答することができません!!』
「!?」

場内に響き渡ったアナウンスに驚愕し、声の聞こえる上空を見上げる。そのすぐ後、少女は目の前のチワワへとすぐに視線を戻した。

「え!?もしかしてリオンさん!?」

彼女の問いに一切答えようとしないチワワだったが、それ以外には考えられないと少女は奥歯を噛み締めた。

(シェリアって答えたのは偶然!?それとも何か意図があったの!?)

自身の読みが外れたことで悔しさを露にしている少女。一方のチワワはしてやったりの表情を浮かべていたりする。

(シェリアと答えたのはギャンブルだったが、うまく成功してよかった)

リオンは役割を果たせたことに一安心すると、すぐさま次の行動へと移行する。

(この五分のうちにユウカと合流する。俺が行くまでにユウカが得点を一点でも奪えば、それでこの勝負は決まりだ!!)

どこにいるのか予測もついていないが、やるしかないと腹を決めた氷の魔導士はとにかく仲間を探して懸命に走る。

(ヤバイ!!ユウカさんに合流されたら負けちゃう!!)

五分間で合流できるのかは怪しいが、万が一ということもある。ソフィアは先を行くチワワの後ろを追い掛け、敵プレイヤーユウカと直接対決をしようと走り出す。

(お願い!!誰かユウカさんを止めて!!)

リオンが合流したら1ポイントは確実。その前にポイントが取られてしまえばゲームが決まってしまう。負けられない戦いであるこの一戦、ソフィアは祈ることしかできない五分間へと突入した。

















(へぇ、ソフィアが間違えたのか)

走るリオンとソフィアが目指す人物であるユウカは、五分間の優位な時間を得て心に余裕を持っていた。

(この五分のうちに二点取って勝負を決めないとな。だが・・・)

微動だにしないキツネを前に、額から汗が流れ落ちるのを感じる。

(こいつ・・・動かないつもりか?)

己の数字を隠しただじっと構えているキツネ。両チームの明暗は、このキツネにかかっていた。







 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
ソフィアの不正解で小さき魔術師(リトルマジシャンズ)は大ピンチです。このキツネは果たして誰なのか、それは次回に。 
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