FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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想定外
前書き
久々にビリヤードをしたらなぜかすごい上達してた(笑)最初なんか空振りとかよくやってたのに今回は狙ってスピンかけられた。
グレイみたいなマッセはかけられませんけどね、てかあんなのしたら台破壊しちゃうよ。
カグラside
ソフィアがレオンを呼び寄せる少し前、私は彼女から中身を当てられたため、退場者が転送させる場所へと転送されていた。
「あ・・・」
ソフィアから信じられないような当てられ方をした私は悔しさと恥ずかしさに苛まれていると、私よりも先に椅子に腰掛けゲームの行方を見守っている人物がいた。
「カグラさん・・・大変でしたね」
虚ろな目で項垂れたままこちらに顔を向ける少女・・・ではなく、少年シリル。その目は赤くなっていることから、彼も私と同じ境遇なのだとすぐに理解できた。
「お前も大変だったんだな」
私はシリルの隣に腰を下ろすと、泣き出しそうになっているかn・・・彼の頭を撫でる。
今は敵とはいえ、私たちはすでにゲームから脱落してしまった者同士。これくらいのことは、大目に見てもらえるのではないのだろうか?
「うぅ・・・」
私が慰めようとしたからか、堪えていた涙がシリルの目からボロボロとこぼれ落ちていく。
(相当ショックを受けていたんだな)
考えてみれば、こいつは男なのにソフィアのセクハラのターゲットにされているんだ。扱いやらに不満を感じるのは仕方ないことなのかもしれない。
「来い、シリル」
両腕を広げて彼に胸に飛び込んでくるようにと視線を送ると、シリルは私の胸に顔を埋めるように飛び付いてくる。
(なんか妹をあやしてるみたいだな)
抱きついている少年の頭を撫でながら、背中を擦って落ち着かせる。私もかなりダメージを受けていたはずだったんだが、こいつの姿を見ていたら逆に落ち着いてしまったな。やれやれ・・・
レオンside
シリルとカグラさんが姉妹ゴッコしている頃、俺はタヌキの着ぐるみの動きにくさに悪戦苦闘していた。
(一歩が小さい・・・)
俺の着ぐるみはどういうわけなのか、ものすごく足が短い。タヌキって実際はこんなに足短くないと思うんだけど、なぜこんな風な構造になっているのだろうか?遠回しにお前の足は短いぞと言われているのだろうか?なんか傷つくな・・・
『ソフィア選手正解です!!小さき魔術師に1ポイント追加です!!39番トラ!!退場です!!』
一人愚痴を溢していると、またしてもソフィアが正解をあげたらしくアナウンスが鳴り響く。これで勝利ポイントまであと3ポイントか。このままいけちゃうんじゃないかな?
『ユウカ選手正解です!!』
その直後、ユウカさんが正解を上げたことを知らせるアナウンスがコールされる。ずいぶん間髪置かずに回答したな・・・まるで狙っていたかのようなタイミングだ。
「これでよし」
「??」
一人で色々と考えていると、目指している先にある曲がり角から、微かに声が聞こえてきた。
(まさか・・・)
短い足を懸命に動かし声の主の姿を確認しようと走る。速度的には早歩き程度だが、今の状態ではこれが限界の速度なんだ。仕方ない仕方ない・・・そう心に言い聞かせていると・・・
コケッ
日常との体格の違いに対応しきれず、その場に転倒してしまう。
ゴロゴロゴロ
おまけに、この着ぐるみはほとんど丸で構成されているため転んだ衝撃でどんどん転がって行ってしまう。
ゴツッ
そして、角を曲がり切ることができずに白い壁へと激突してしまった。
「!?」
背後から大きな音が聞こえたために驚きながらこちらを振り向くサルの着ぐるみ。俺は短い手足を駆使してなんとか立ち上がると、彼に向かい合うように立つ。
(くっ・・・隠れてどっちか判断してから前に立とうと思ってたのに・・・)
転んで何の準備もすることができずにプレイヤーと思われる人物の前に出てきてしまった。こいつがソフィアならいいけど、もしユウカさんだとまずいよな・・・
(今からでも逃げるべきだろうか?)
数字は手が短いので隠すことができずに晒している状態だが、向こうは中身が俺だと気付いていないはず。だったら今から逃げれば何とか態勢を整えることができるんじゃないだろうか?
「俺はユウカだけど、お前は誰?」
「!?」
そう思い足を後ろに引こうとしたその時、向こうから自らの名を名乗ってきたためその動作を停止する。
(やられた・・・逃げる前に名前を名乗られてしまった・・・)
ここで逃げると俺が敵チームの四人のうちの誰かだとバレてしまう。それに、ソフィアが二人正解を出しているということは、もしかしたらこちらのチームのサブは残り二人だけなのかも・・・
さっきのアナウンスからしてユウカさんが正解を出したのはソフィアなんだし、下手したら彼女の回答の瞬間を見ていた可能性もある。だとすると一気に俺がレオンだとたどり着いてしまう可能性がある・・・ここは・・・逃げるわけには行かない・・・
(さっきと同じ展開だけど・・・リオンくんになりきって・・・)
リオンくんになりユウカさんを騙してこの場から逃れようとした。しかし、運悪くこのタイミングで少女からの声が聞こえてくる。
「レオ~ン!!レオンならこの壁飛び越えて来れるんじゃないの!?」
「「!!」」
盲点だった。迷路の中を進まなければならないなんてルールは事前の説明にはなかった。そもそも壁を乗り越えるなんて発想を持った人間はいなかっただろう。しかし、ソフィアはそれを思い付き、さらには実行可能な人選まで済ませていた。
(普通なら誉めて讃えられるところなんだけど・・・)
間が悪すぎた。今俺の目の前にはユウカさんがいる。この声は間違いなく彼の耳にも届いているはずだから、ここでジャンプして逃げていこうとすると彼に即座に回答されて犬死にだ。
(シリル辺りが代わりに飛んでくれないかな?)
チラッと視線を上に向けてみるが、案の定誰も壁を飛び越えていく者の姿はないし、そもそもチャレンジしようとする音すら聞こえない。このままじゃまずい・・・
(このまま誰も跳ばないと、ユウカさんが俺に疑いをかけてくる)
誰なのかわからない状態からなら騙すのは容易いことだろうが、正解が限りなくわかっている場面から、確認していくのでは難易度は遥かに変わってくる。
(ソフィアの奴・・・何もこのタイミングで言わなくても・・・)
もう少し早く・・・それこそゲーム開始際にでも呼んでくれたら何も問題なくポイントになることができたのに。この状況じゃとてもじゃないが動こうなどという選択肢は得られないな。
(このまま固まってユウカさんが俺に気付くのを待つしかないのか?)
今すぐ動けばすぐコールされる。だけど、固まって動かない分にはそれなりに時間が稼げる。その間にソフィアが3ポイント取って・・・
(無理だろ、それ)
あまりにも浅はかな願いだったと頭の中からその考えを抹消する。いくらなんでもそんなに簡単に迷路内で遭遇できるならとっくにゲームが終わっている。誰と会うか、そもそも出会えるかすら運勝負なのに、たかが数秒で三人に出会えるなんてあり得るはずがない。
(何か・・・何か作戦はないのか?)
ユウカさんが俺だと気付くまでのわずかな時間。その隙に何かここから逃げる手はないかと必死に頭を回転させた。
第三者side
(なんだ?なんで誰も動かないんだ?)
目の前のタヌキから視線を反らさないようにしつつ、壁の上を駆けていくであろうレオンが入った着ぐるみを発見しようとチラチラと見上げてみるが・・・一向にレオンが姿を現さない。
(ソフィアのそばにでもいたのか?)
レオンがソフィアのそばにいて、壁の乗り越える必要がなく合流できた可能性もある。しかし、いまだにアナウンスがならないことから、それはありえないとユウカは感じた。
(レオンが飛び越えられないのか?この壁を?)
続いてユウカはレオンがこの壁を飛び越えられず、ソフィアの元まで辿り着けない場合を想定してみる。
(いや、それもないだろ)
だが、彼はレオンの能力の高さならこのくらいの壁なら、例え着ぐるみ状態であろうとも飛び越えられるはずと考えてみる。
ソフィアの近くにいたわけでもなく、目の前の壁を飛び越えられないわけでもない。それなのにいつまでも少年が姿を現さないということ・・・考えられることは一つだけだった。
(何らかの理由で動けない。そしてその可能性が一番高いのは・・・)
ユウカは視線を反らすことをやめ、自分の目の前にいるタヌキを一直線に見つめる。タヌキもそれに答えるように、ただ自分の方を見ていた。
(こいつがレオンの可能性は高い)
もし他の場所で固まっているのなら、互いに言葉を発しないことでサブ同士だと見切ってレオンならすぐに行動に出るはず。しかし、今回はユウカが自分で名乗ったため、レオンは下手に動けずにここで立ち往生しているのではないかと彼は考えた。
(こいつがレオンだとして・・・どうやってそれを確かめるか)
そこから、ユウカはどうやって彼の正体をレオンと断定するかを考え始めた。タヌキの数字は見えている。ここでその数字とレオンの名をコールするのも一つの手だが、万一別の人物だった場合を考えると正体を突き止めてから行動するのが妥当だろう。
「もしかしてお前、レオンか?」
(直球!!)
ドストレートな質問をしてきたユウカに動揺してしまうレオンだったが、すぐさま頭を切り換える。ここで自分が取れる選択肢は二つ。
一つは首を振り、別の人物になりきる。もう一つは――――
(あえてうなずくということ)
ここで彼の質問にうなずいてみると、おそらくユウカは迷うはず。なぜなら敵である本人がそれにうなずくなんて、絶対にあり得ないことだから。
(一か八かやってみるか)
ユウカがそのうなずきを信じて回答する可能性だってあるけど、ここは迷って時間を稼げることを信じてうなずいてみる、そう少年は決めた。
コクッ
作戦が決まったのですぐさま実行に移す。うなずいたレオンを見たユウカには、確実に迷いが生じていた。
(うなずいた?どういうことだ?)
味方が自分を騙すことなんてありえないから、これで相手が敵であることは確定・・・とも言いにくい。
もしかしたら、あのレオンを呼ぶ声がユウカで、目の前の自称ユウカをソフィアと深読みして騙しに来ている可能性もあるからだ。
(タイミングがよすぎる気もするが、これは“騙す”ことがもっとも有効に働くゲームだから、ありえないことではない)
レオンの機転により戸惑いを見せるユウカ。その隙に、タヌキの中の少年はこれからのことを考える。
(ユウカさんが誤答してくれたら楽々移動できるんだけど、答えない限りは動くわけにはいかない)
ユウカが自分を深読みして誤った人物だと答えた場合、5分間の回答不能時間が与えられる。それだけあれば壁を飛び越えてソフィアと合流することもできる。だが、彼が答えない限りはここから逃げることはできない。それだけで正体を自分でバラしたことと同義だからだ。
膠着状態のタヌキとサル。二人の緊張感が高まる中、一つの声がそれをうち壊してしまう。
「レオ~ン!!聞こえないの~!?」
ビクッ
突然聞こえてきた少女からの声に思わず体がビクついた二人。同じ行動をした二人だったが、その後の思考は全く別々の方向へと向かっていく。
(ヤバッ。今ので俺がレオンってバレた?)
レオンは自分の名前が呼ばれたことに反応し、体が動いてしまった。そのため、ユウカからそれを指摘され回答されるのではないかと恐怖を抱いていた。対してユウカはというと・・・
(ソフィアめ。急に声が聞こえたからビビッちまったぜ)
ソフィアの突然の声に驚き、体をビクッとさせてしまったため、目の前の人物が体が揺れたのも同じ理由だと思っていた。
しかし、度重なる不運に見回れているレオンはそれに気付くほど心に余裕はなく、冷静さを取り戻すような間を置くこともできずにいた。
(バレたならここは、ソフィアに全て賭ける!!)
自分の正体がバレたと勘違いしているレオンはある考えに達した。それは、ここから壁を飛び越えて、ソフィアがユウカよりも早く“見つけた”コールを行い10秒間の回答権を得ること。
その時間のうちに自分がソフィアの元に辿り着ければなんとかなる。今のレオンにはそれしか手段が思い付かなかった。
思い立ったらすぐに実行。膝を軽く曲げ地面を強く蹴り白い壁に向かって飛び上がるタヌキ。サルは突然目の前から消えたそれの姿を捉えようと視線を上げる。
(やっぱりあいつレオンだったのか!!)
迷路とするために作られた巨大な壁を飛び越えるほどの跳躍を見せるタヌキを見て中身が誰かわかったユウカ。
(ソフィア、コールしてくれ!!)
祈りながら飛び上がるレオンは、自分の姿が見える位置にソフィアがいることを信じることしかできない。ユウカとソフィア、どちらが先にコールをするか、そこに焦点が集まっていた会場。そんな中、信じられない出来事が起こった。
ガッ
短すぎる足、明らかに出っ張りすぎているお腹、言い訳ならいくらでも見つかるだろう。圧倒的な身体能力を持っている少年の入ったタヌキの足が壁へと引っ掛り、
(あ・・・)
そのまま壁の向こうへと転落していった。
ポヨンッポヨンッ
情けないお腹のバウンド音が周囲に響き渡る。次第にバウンドが弱まり、お腹を下にして止まるタヌキだったが、手足が短く一切動くことができない。完全に動くことができなくなってしまった少年は、諦めたかのようにもがくのをやめた。
「・・・29番、レオン・バスティア」
壁の向こうから申し訳ないような声でコールがされる。その時のユウカとレオンは、互いにいたたまれない気持ちになっていた。
『ユウカ選手正解です!!29番タヌキ!!退場です!!』
回答されたことでフィールドから退場者の待機場所へと転送されるレオン。これにより人魚の鱗は2ポイントを獲得。同点に追い付くことができた。が、それだけでは終わらない。
ヒョコッ
回答したことで場所を移動しようとしたユウカの目の前に、一匹の猫の着ぐるみが現れる。
「誰だ?」
このタイミングで現れたということは自分の正体はバレていると察したユウカは直球に質問をぶつける。すると、猫は全身を彼の前に見せると、猫のようなポーズを取る。
(これは・・・)
それを見たユウカは小さく笑みを浮かべた。
「67番、ミリアーナ」
ユウカは即座に回答する。それは、目の前の人物が誰かを判断するには十分すぎる材料だった。
『ユウカ選手正解です!!67番ネコ!!退場です!!』
やって来たばかりのネコを退場させるサル。その瞬間ユウカは小さくガッツポーズを決めていた。
「もしかして29番がレオンかな?」
その頃、仲間の到着を信じてその場から動かずに待ち続けていたソフィアはそんなことを考えていた。
「ユウカさんといたから動けなかったのか」
悪いことをしてしまったと頭をポリポリと掻きながら、頭を切り替えて次のターゲットを探しに行く。
「誰か会えるかなぁ?」
テクテクと歩きながら周囲に誰かいないかと見回すソフィア。その様子を、影から二つの目がじっと見つめていた。
後書き
いかがだったでしょうか?
ソフィア優勢からのユウカの逆転です。いまだに決着の着かないこの戦いはけっこう長くなる予感がする。
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